アリババとテンセントによる中国O2O覇権争いが激化 | 大塚家具の将来も関係?
5月21日にアリババが中国家具最大手の紅星美凱龍を事実上買収したことが報じられましたが、その背景にはヒタヒタと忍び寄るテンセントとの中国O2O覇権争いが存在します。日本ではあまり見られない両陣営の勢力図を参考にしつつ、中国O2Oの最新動向から学んでいきましょう。
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日本では考えられないスピードで進化する中国のO2O
中国では日本よりも早い段階でO2O(日本で最近言われるところの”OMO”, すなわちオンラインとオフラインの融合)の概念が登場し、進化しています。
その理由として、中国には対生活者向けでの独占的なサービスが国有企業のサービスであったため、QCDのどの面においてもレベルが低く、民間企業が覇権を取ることが十分に可能であったことが挙げられます。結果として、阿里巴巴(Alibaba:アリババ)がECプラットフォームで先んじ、腾讯(Tencent:テンセント)がコミュニケーションプラットフォームで先んじ、お互いが生活者のライフタイムバリューを取り合う形で覇権争いを行ってきたため、日本では考えられないほどのスピードで進化してきたのです。
アリババとテンセントは生活者のお財布になりました。前者はECである淘宝網(Taobao:タオバオ)や天猫(T-Mall)から、後者はメッセンジャーベースのSNSであるQQと微信(Wechat:ウィーチャット)から決済機能を握り、中国でのキャッシュレス決済の双璧をなす存在となりました。
中国の生活者の財布を握った後に、両者は生活者のタイムシェアを奪うべく、バリューチェーン、すなわち価値提供が可能なサービスの幅を互いに広げていきます。アリババが従来得意としているのはECプラットフォーム上で提供する商品分野の充実ですが、すでにその争いはオンライン上だけではなくオフラインにも広がってきており、ITは家電を販売する量販店、生鮮食品を扱うスーパー、出前サービス、更には生活の足となる配車サービスやシェアバイク(自転車)といったありとあらゆる領域に広がってきています。
5月21日にアリババが中国最大の家具製造・販売大手である紅星美凱龍家居集団の株式と社債を取得し2番目の株主になったことが報じられましたが、家具の世界にまでこの覇権争いが広がってきていることを意味しています。
これがアリババの馬雲(Jack Ma:ジャック・マー)言うところの”ニューリテール”であり、テンセントが標榜する”スマートリテール”です。
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アリババとテンセントの覇権争い
上記はアリババグループ(左側)とテンセントグループ(右側)のニューリテール分野における勢力図を出資関係とその多寡で表現したものです。分野については、上から下記の通りです。
- イノベーション型クロスボーダースーパーマーケット
- 生鮮ソーシャル店舗
- B2B型雑貨店
- 体験型専門店
- 無人スーパー
生鮮領域ではアリババは日本でも話題となっている最先端型スーパーである”盒馬(Hema:フーマ)”を展開していますが、テンセントも”毎日優鮮”を保有しています。小売系ではアリババが家電量販であり日本のラオックスを買収したことでも有名な蘇寧電器を持ち、テンセントは中国全土に根を張る小売チェーンの永輝やスマートフォンの製造・販売企業の歩歩高を、さらに出前サービスではアリババの餓了么(Eleme:ウーラマ)に対してテンセントは美団(Meituan:メイトゥアン)を持ち、各分野で熾烈な争いを繰り広げているのです。
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最大の理由はオンラインでのCPAの上昇。オフラインを取り込むことによりLTV増大へ
覇権争いが足下でさらに加速している一番の大きな理由は、中国のオンライン上での顧客獲得コストは上昇し続けていることです。オンライン上での競争が激化する中で、CPAは数百元(数千円)レベルまで上昇しており、オフラインチャネルの顧客基盤の取り込みと、O2Oでの顧客体験の提供による離脱率の低減によって顧客1人あたりのLTVを下げていくことが競争を勝ち抜く上でのポイントとなっているのです。
アリババが紅星美凱龍の社債買い取りに680億円を投資することも中国の洗剤市場規模を考えればペイするということです。日本の大塚家具は中国資本によって買収されましたが、大陸での大きな流れには合っていると言っても過言ではないのかもしれません。
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