かつて中国に駐在していた当時、2008, 9年頃のことだと思いますが、リーマンショックの影響下、世界経済が停滞する中で中国は4兆元の投資を政府主導で行ないました。結果、中国国内の金回りは良くなり、世界中からの投資を集めることに成功し、言わばゴールドラッシュ状態となりました。覚えている方も多いかと思います。

投資の効果は消費を刺激するまで循環し、高速道路を中心とした社会資本が整備されたこともあり、モータリゼーションが加速しました。一台目需要が爆発し、乗用車が売れに売れたのです。リーマンショックが起こったのが2008年の夏から秋にかけて、その後、半年から一年で乗用車需要は急拡大しました。そして、このタイミングでシェアを急拡大したのが米国ゼネラルモータース(GM)陣営とドイツのフォルクスワーゲン(VW)陣営でした。この2つの海外ブランドとの合弁ブランドは一気に伸びたのです。

そして、その煽りを受けたというか、波に乗れなかったというか、いずれにせよシェアを伸ばすことが出来なかったのが日系ブランド、特にトヨタ系合弁ブランドでした。トヨタはグローバルでリーンな生産方式をとっており、もちろん需要の拡大にもしなやかに応えられる能力を持ってはいたものの、GM, VW陣営のように「中間流通在庫を抱えることを前提とした生産・供給」を行うことは前提としておらず、シェア拡大の機会損失をしていました。

その頃、中国のトヨタの方に話を聞いたことがあります。そして、彼が言ったことが今になって強烈に思い出されます。

10年後を見ていてください。トヨタは結局勝ちますから

そして、10年経った今。中国の乗用車市場は沿岸部一級都市における一台目需要が一巡し、販売台数が初めて前年割れを記録しました。この記事を書いている足下でも、GMは20%もの前年比マイナス成長を記録しています。ところが、トヨタは20%以上の前年比を記録しており、海外ブランドの中でも際立って伸びているのです。

10年前に聞いた話の本質がどこにあったのかは今となっては正確に思い出すことはできません。トヨタはリーンであるが故に、好況時に弱く、不況時に強いのかもしれません。しかし、ことの本質は、トヨタの社員が10年後という長期的な目線で、最終的に自社ブランドが勝つということを自信を持って話したということにあるのではないでしょうか。

トヨタのものづくりは堅牢です。綿密な計画と、サプライヤーを巻き込んだ形での猛烈な品質の作り込み。デザインレビューを繰り返す作り込みプロセスの徹底。Lexusを含め、そうした品質へのこだわり、ものづくりプロセスの徹底をやり通していることがいずれブランドとなって、成熟化していく中国人消費者のニーズをしっかりと捉えるであろうということを確信していたのではないでしょうか。

日本のものづくりについて蔑むことは簡単。一方で、日本人にはものづくりしかないのです。途中で諦めて安売りに走るか、徹底し続けてブランドを積み重ねるか。身近なところに素晴らしい事例があるのではないでしょうか。