アリババグループが中国全土で牽引するニューリテールブランド”フーマ”ですが以前も触れたように海南島の店舗が純損失を計上しています。理由は明らかにされていませんが、テンセントグループとの壮絶なエコシステム覇権争いの中で局地的に劣勢になった結果ではないかと見られています。

_

アリババグループ関係会社間での資本再編の背景に中国ニューリテールの現状を垣間見る

2019年5月9日時点で中国の阿里巴巴(Alibaba:アリババ)グループのニューリテールブランドである”盒馬(Hema:フーマ)”は売上が140億元(約2,240億円)、149店舗となっており、中国連鎖経営(チェーン経営)協会が発表した「2018年中国チェーン店100強」の中では18位です。フーマのCEOである候毅によれば今後10年で1兆円規模になるとのことです。

2019年5月31日に、大潤発(RT-Mart)や歐尚(Auchan:オーシャン)等のスーパーマーケットブランドを中国大陸で展開する高鑫零售(Sun Art:サンアート・リテイル、香港上場)が500万ドルで上海潤盒网络科技有限公司(上海フーマ)から海南盒馬网络科技有限公司(海南フーマ)の全株式を買い取りました。やや複雑になりますが、サンアート・リテイルはアリババグループに所属しています。

全株式がサンアート・リテイルに譲渡された海南フーマですが、2018年5月28日に登記された会社で、主な事業は海南島におけるフーマ店舗の経営とされています。法定代表人は大潤発中国营運附属公司(RT-Martグループ)の主席であり董事でもある黄明端で、上海フーマとアリババが51%と49%の株式を保有していました。

_

約1.6億円の純損失を計上した海南フーマ

海南フーマが経営する店舗は現時点で海南島海口市にある国貿店1店舗のみで、開業は2018年9月です。株式譲渡を受けたサンアート・リテイルによれば2018年12月31日時点で総資産が6,417万元(約10億2,672万円)で、税引後当期利益はマイナス972万元(約1.6億円)と純損失を計上していました。サンアート・リテイルはこの損失の理由については公表をしていません。

今回の上海フーマからサンアート・リテイルに対する株式譲渡は、ある意味アリババグループの中で行われたことであり、資本関係の見直しを伴うグループ会社の再構成でした。但し、その中で公開された海南フーマの経営が純損失状態であったことにメディアが注目しているのです。

遡ること2017年11月にアリババグループはサンアート・リテイルに対して224億香港ドル(約3,109億円)の出資を行い、持ち分36.2%をもって2番目の大株主となりました。アリババグループはニューリテールを司るフーマによりサンアート・リテイルの主力スーパーマーケットブランドであるRT-Martのニューリテールへの転換業務を遂行しました。海南フーマが立ち上がる以前に、アリババとサンアートリテイルは”淘鮮達”や”盒小馬(スモールフーマ)”などの新サービスをローンチしてきました。”淘鮮達”は店舗の半径3km以内で1時間以内に海鮮を届けるサービスです。

しかし、業界関係者によれば双方ともに成功とは言えなかったようです。淘鮮達においては届いた海鮮商品が新鮮ではなかったという情報がSNS上で炎上。更に同様なサービスは腾讯(Tencent:テンセント)陣営に属する永輝(Yonghui:ヨンフイ)が”毎日優鮮”というサービスブランドで行っており30%ほど安い価格帯で提供されており、競争劣位にあったとのことです。

もう一方のスモールフーマは淘鮮達によるオンライン・オフライン一体型のストックヤードサービスです。アリババグループはスモールフーマを4, 5級都市で展開するサービスブランドとして定義しており、専用アプリをダウンロードする必要なく淘宝網から注文をすることができます。淘鮮達と同様に店舗・倉庫から3kmの範囲に1時間以内に海鮮を配達することができます。2018年末時点で、スモールフーマは全国に9店舗のみ、その内6店舗が直営で残り3店舗はフランチャイズ的で独立店舗が運営する形となっています。特筆すべきは2018年6月に開店したばかりのスモールフーマ蘇州市にある店舗が今年の4月に一年を待たずして閉店していることです。

日本でも注目されている中国のニューリテールですが、本場でも一筋縄ではいかないようです。一方で、最先端の市場を切り拓いているからこその産みの苦しみであるとも言えるかもしれません。