フランスをベースとするカルフールの中国事業の80%が蘇寧グループによって取得されようとしています。蘇寧グループはアリババの出資を受けています。そのアリババはニューリテールのエコシステム覇権争いでテンセントとしのぎを削っています。

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カルフール中国についた破格の買収金額

2019年6月23日の午後、蘇寧易購(Suning.com:蘇寧電気によるEC)は100%子会社である蘇寧国際から48億元(約768億円)を出資することにより家福楽(Carrefour:カルフール)中国の株式について80%を買い取る計画であることを発表しました。

Suning.comグループの副総裁である田睿はカルフールがグループの一員になることを歓迎し、

我々はカルフール中国が蘇寧(Suning:スーニン)という家族の一員になってくれることをとても歓迎します。スーニンは一筋にスマートリテールエコシステムの構築に力を入れてきました。オンラインからオフライン、都市部から地方の鎮に至るまで、いつでもどこでも満足のいくショッピングができる環境を実現し、生活者の多様な要求を満たすことが目的です。

と表明しています。また、今回のM&Aについて、フランスに本部を置くリテール界の巨人であるカルフールは、

Suning.comは中国のスマートリテール業界におけるトップリーダーです。カルフール中国とSuning.comは強い補完関係にあり、協力することによってカルフール中国の発展を加速することができるでしょう。

と評価しており、友好的なM&Aであることが分かります。

スーニンの発表によれば、本M&Aはすでにスーニンとカルフールグループお互いの董事会(もしくは取締役会)で承認されており、現在は国家市場監督管理総局による市場の独占に関する審査が行われているとのことです。また、本M&Aは現金を振り出すことによる株式譲渡のかたちをとるとのことです。

M&Aがクロージングした後に、カルフール中国の監督董事会7名の内5人の董事は蘇寧国際から覇権され、2名はカルフールグループから覇権されることになり、名実ともにスーニングループが経営権を握ることになります。

更に、クロージング後もカルフール中国の現時点における体制は維持され、一定の期間内における人員や組織、固定資産などの重大な変更は行われないとされています。

一方でSuning.comはカルフールのすべての実体店舗に対するデジタルトランジションを全面的に推進していく目論見です。スーニングループはその傘下に家電、子供用商品、高級品、金融、生鮮などあらゆる業態を兼ね備えており、カルフールの実体店舗との融合を進めていくことになります。

スーニンのリテールチェーンには4億人の会員がいます。そしてカルフールは3,000万人のローヤルティカードを持っています。互いに補完関係が組めるとの見込みです。また、カルフールの店舗や物流拠点は中国の一級、二級都市の一等地にあることもスーニングループとしては魅力的な資産として映ったようです。

以前、上記の記事において2018年度のカルフールはグローバルで好業績を上げ、中国地区も好調であったと表明していることを書きましたが、実際の昨年度における親会社に帰属する当期純利益は-5.8億元(約92億円の赤字)となっており、最終赤字は2017年度からの二期連続という苦しい状況でした。

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苛烈なニューリテールエコシステムにおけるアリババとテンセントの覇権争いが背景に

記事の冒頭からカルフール中国の買収金額の低さに驚かれた方も少なくないと思われますが、根底にはここ数年の厳しい経営状況がありました。腾讯(Tencent:テンセント)グループに所属するスーパーマーケット業態である永輝超市の市場価値は1,015億元で、カルフール中国の17倍に達します。スーニングループは非常に良い買い物をしたと言えるでしょう。

中国のニューリテールにおける覇権争いは熾烈を極めます。2015年8月10日に阿里巴巴(Alibaba:アリババ)グループは283億元(約4,528億円)をスーニングループに出資し約20%の持ち分を獲得、二番目の株主となっています。ライバルのテンセントグループが黙々とニューリテールエコシステムを確立していく中、アリババとしては非常に強力な武器を手にしたということではないでしょうか。