ドイツのスーパー大手METROが中国事業を売却へ | 業績不振でも買い手が現れる理由とは?

ドイツ籍のスーパーマーケットMETRO(麦徳龍:メトロ)の中国事業が売りに出されています。メディアによれば売却価格は15〜20億ドル。2018年の中国における売上は30億ドル。さて、この買い物は合理的でしょうか?どのようにすれば合理的になるのでしょうか?

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単体事業が苦しいメトロ中国の買い取りに有力企業が名乗りを上げる理由とは?

現時点で売却先候補として名乗りを上げているのは8社で、万科(Vanke:バンカ)、永輝(Yonghui:ヨンフイ)、腾讯(Tencent:テンセント)、大潤発(RT-Mart)、蘇寧(Suning:スーニン)、阿里巴巴(Alibaba:アリババ)が含まれていることが報じられています。

要約すると、万科グループ、テンセントグループ(永輝)、アリババグループ(蘇寧、RT-Mart)と大きく分けることができそうです。

メトロは現在ロングリストの絞り込みによるショートリスト化をほぼ終えたところであり、今後はそれぞれとの接触をする準備に入っているとのこと。感触が良かった相手に対してNDAを締結し、具体的なストラクチャーやスキームについての協議に進む、通常のM&Aの手続きを想定しているようです。

メトロが中国に進出した1996年から既に23年、堅調時は1年に12店舗を出店する勢いでしたが、2010年移行は業績が下降トレンドとなっていました。現在の総スタッフ数は1.1万人。中国全土に95店舗を運営しています。

さて、小売業界の対売上EBIDA比率を1%程度と考えると7年程度での投資回収となりますが、IRR=0の投資となり投資者にとって経済的なメリットはありません。

また、日本では考えられないほどのスピードで進んでいく中国のO2O化を背景としたニューリテールの進展を考えると、現状のメトロが将来に渡って安定的に利益率を確保することができない可能性は非常に高く、現在価値がマイナスである可能性も高いのです。それでも買収候補が現れる理由はどこにあるのでしょうか?

一つはまさに前述したニューリテール化の流れにおけるエコシステムへの取り込みです。先ほど名前を上げた企業は皆ニューリテール化を積極的に推進しています。オフライン店舗単体で収益を上げるのではなく、オンラインと融合することで生活者への利便性を上げ、エコシステム全体として利益成長の機会を取り込む戦略です。エコシステム拡大でしのぎを削るアリババとテンセントが共に名乗りを上げていることは当然の結果と言えるでしょう。

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二つ目の理由は不動産資産(の使用権)です。メトロは、現在中国で運営運営する95店舗についてすべて土地の使用権を獲得しています。進出以来20年以上が経過するメトロの店舗立地は現在では各都市のホットエリアに属しています。この土地を活用したい事業家、投資家を探すことに困ることはないでしょう。

上述した買い手企業、投資家は仮に単体での運営や、ニューリテールでのバリューアップに苦労した場合、土地の使用権ごと切り売りするだけで損失を取り戻すどころか、キャピタルゲインを得られる可能性が高いのです。土地使用権の含み益が非常に高いのです。ここにこのM&Aの妙味があります。

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土地資本主義の中で政府とのパイプを持てば事業計画の蓋然性が変わる中国

このように中国では都心化が進行するので中心部の時価は上がり続けます。そしてこのような土地を手に入れるのは、”最初に井戸を掘った人”、すなわちある特定の分野で先駆けて中国に参入した人であるか、中国政府と強いパイプラインを持っている人です。

新しい領域を中国政府に提案することで事業リスクを下げることができるのです。良くも悪くも国家が土地を保有するということが背景にあります。このレッスンが頭にあるかどうかで、事業計画の蓋然性は大きく変わってきます。皆さんも参考にしてみてください。

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