中国は四川省の著名な弁護士による中国を代表する白酒ブランド”茅台(Moutai:マオタイ)の告訴の背景には、中国の白酒愛好家にとっては常識であったことが、他の一般生活者にとってはそうではなかったことに起因しています。この弁護士は3倍の賠償金額を勝ち取ることはできるのでしょうか。

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30年、50年ものの白酒はそのまま30歳、50歳の年齢であることを意味してはいない

2019年2月に四川省の名のしれた弁護士が中国の国酒と呼ばれる白酒の王様”貴州茅台(Moutai:マオタイ、以下:茅台)”を告訴しました。ことの経緯は下記のようなものです。

彼は2019年2月の春節(旧正月)に向けて数10本の茅台を買うために酒屋さんを訪れました。その店では、30年ものの500mlを2本分、50年ものの500mlを同じく2本分、合計で4本分しか売ることができないとのことでした。価格は1本あたりそれぞれ11,999元(約20万円)と18,999元(約30万円)です。

結局それぞれを購入した彼は、白酒を専門で鑑定する人間に鑑定を依頼しました。鑑定士によれば、

50年ものの芽台と言っても50年の歴史があることを意味している訳ではありません。50年前の芽台生産工場の品質はそれほど高くありませんし、50年間も質の良い状態で保存・保管ができているとは思えません。あくまでも蔵の中で寝かせた結果として熟成されたお酒の風味を出しているということなのです。

ということでした。

納得の行かない当弁護士は虚偽・誇大広告を理由に茅台を製造・販売している貴州茅台酒股份有限公司と四川国酒茅台销售有限公司を告訴しました。要求は1本あたり3倍の値段の賠償請求です。

彼によれば、50年ものの茅台のボトルには”Aged 50 Years”という英語表記があり”50年の熟成がされている”と受け取れるということと、外箱にも”50年貴州茅台酒”と明記されているにも関わらず、実際には15年ほどの熟成に留まっていたことに対して、虚偽、かつ誇大な広告であるとしています。

さて、この告訴に対して茅台側の弁護士がここに来て反論を出しました。

50年ものの貴州芽台酒は15年以上の時間をかけて熟成させており、弊社の技術によって古酒の風味を醸成しています。30年ものも同じです。虚偽や誇大な広告表示には当りません。

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ワインとは異なる白酒の年齢表記は中国生活者にとって一般常識であるのか

平行線に見える議論ですが、30年、50年ものの茅台は実際にはそれと同じ時間をかけて熟成されたものではないということです。数十年前の貴州茅台にはそこまでの技術力はなく、かつ生産量も非常に少なかったため、例えそれが現在出回っているとしても、この弁護士が買った価格では到底買うことはできません。

中国の生活者もその事実についてはすでに広く知れ渡っており、熟成年度は風味の違いを表す指標として受け入れられているようです。実際の熟成年度が示されているワインとは異なる概念であるということです。

日本人の常識では、箱やボトル上に表記された内容についてはそのまま受け取るのが普通であると考えるのではないでしょうか。中国の白酒愛好家にとっては当たり前とされてきたことが彼のような一般人にはそうでなかったということであれば、その責任はブランドオーナー側に向かうと考える方が多いのではないでしょうか。また、中国の世論的にこの弁護士が”白酒の常識を知らなかった”とされることに対して彼はメンツを潰されたと感じるでしょう。

双方の見解が分かれる中、2019年6月27日に四川省成都市高新区人民法院にて審議が行われることになっています。

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