中国アリババグループが家具大手である紅星美凱龍を買収しましたが、それに先立ちグループ会社化しているイージーホームを特殊なスキームで深セン市場に上場させました。日本では禁止されているリバーステイクオーバー(裏口上場)スキームとともに解説します。

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中国家具大手イージーホームが採った裏口上場スキームとは

阿里巴巴(Alibaba:アリババ)傘下の家具製造・販売大手の”居然之家(Easyhome:イージーホーム)”がいわゆる”リーバス・テイクオーバー”スキームで深セン市場で上場しました。このスキームは”逆さ合併”や”裏口上場”と呼ばれる特殊なもので日本の証券取引市場では禁止されています。詳しくは、香港証券取引市場における事例を下記の記事で紹介していますので、ご覧ください。香港市場では”シェル上場”とも呼ばれています。

2019年6月3日に武漢中商集团股份有限公司(以下:武漢中商)は、北京居然之家投资控股集团有限公司(以下:イージーホーム・ホールディングス)とアリババ等23名が保有する居然新零售(以下:イージーホーム・ニューリテール)の株式について株式交換を行い、イージーホーム・ニューリテールが武漢中商の完全子会社になったことを発表しました。

アリババとイージーホーム・ニューリテール側の株主に渡された武漢中商の新株時価総額は357億元(約6,000億円)。武漢中商の董事長もイージーホーム・ホールディングスの董事長である汪林朋に変更されたとのことです。

汪林朋を含めたイージーホーム・ホールディングス側で武漢中商の61.9%を保有し、残るアリババグループとして14.4%, 合計で約76.3%の保有比率となりました。武漢中商は深セン市場に上場しており、イージーホーム・ニューリテールは事実上深セン市場に上場を果たしたことになります。

イージーホームは2018年初に130億円の増資を引き受けて以降、市場関係者の間からはIPO間近ではないかと噂されていました。今回のプレスリリースにより、その道はIPOではなくリバース・テイクオーバー、いわゆる”シェル上場”というルートに変更されたということです。

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急激に拡大する中国ニューリテールの中で注目される家具分野

IPOにせよシェル上場にせよ、イージーホームが直接資本を調達する必要に迫られていたことは間違いありません。負債比率が直線的に増加しているためです。背景は単純で、家具分野におけるニューリテール市場が急拡大しているのです。

2018年の上半期、中国における家具メーカーは6,217社で増加傾向にありますが、一方でそのうち958社が赤字で赤字総額は20.6億元(約330億円)となっています。そんな中、イージーホーム・ニューリテールは80の新店舗を開き、合計で303店舗となりました。売上高は705億元(約1兆1,280億円)で対前年比23%と急拡大しています。2017年末の財務報告によれば負債総額は95億元(約1,520億円)で前年比で86%も増加しているのです。

急激な店舗拡大に負債を用いていることが分かります。2018年2月にアリババグループの資本を受け入れ関係会社化(持分比率15%)された後、ニューリテール型の事業体制への変革、具体的にはオンラインとオフラインの融合の推進や、そのための大規模な社内組織変更を行うことを企図しています。イージーホーム・ニューリテールは深センA株上場することにより、資本市場からの調達をスムーズに行うことを狙っているのです。

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共産党背景が公然化されたアリババと武漢の国有企業による”上場シェル”取引

武漢中商は30年以上の歴史を持つ国有企業です。前進は1984年に設立された”武漢市中南商業ビル”です。1997年に深セン市場に上場すると同時に現在の企業名に変更され、その後約20年で売上高は2倍とそれほど伸びてはいませんが、資産総額は10倍、営業利益額は18倍としっかりバリューアップしてきています。

今回のディール、市場価値は27億元(約432億円)の武漢中商が360億元(約5,760億円)のイージーホーム・ニューリテールを株式交換によって買収したことになります。中国では”蚊が増を呑み込む”と表現されるリバース・テイクオーバースキーム。日本では”裏口上場”とされ不適当な合併とみなされ上場廃止基準に抵触しますが、香港を含めた中国では常識的に使われるスキームです。

武漢中商はイージーホーム・ニューリテールが上場するための”殻”、”シェル”であり、このシェルにプレミアム価値が乗った上で取引されます。武漢中商の従来のオーナーはこのシェルプレミアム分を儲けているはずです。もともとは国有企業、何らかの思惑が働いていることは間違いありません。詳しくは下記の記事をご覧ください。

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