D&G事件の裏側に学ぶ中国人消費者の風評リスク

D&Gが引き起こしたことの顛末

失策に次ぐ失策

Dolce & Gabbana D&G

箸でピザを突き回すプロモーション動画が中国人を刺激したことに端を発し、Stephano Gabbanaが「無知で汚く、臭いどうしようもない奴ら」と中国人を罵ったことが決定打となりました。

更に、Stefano GabbanaのインスタグラムにおけるDMのやり取りで中国、中国人を挑発するやり取りが流出したことが火に油を注ぐかたちになりました。詳しくは多くのWebでまとめられているので、そちらをご覧ください。

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D&Gの上海での大規模ショーはキャンセルに

これを挑発と受け止めた中国人たちは、D&Gの不買運動を始め、アリババ(Taobao, 天猫)や京東(JD)に代表されるネットショップのプラットフォームも出品自体を取り下げ、D&G商品は検索できない状態になっています。

そして、このプロモーション動画の本来の目的である、上海でのショーに出演するはずであったスーパーモデルが出演を取りやめ、D&Gのプロモーションで契約していた芸能人も契約を取り下げ、最終的にはショー自体がキャンセルとなりました。

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ショーがキャンセルされた裏側で起こっていたこと

過酷だが高いモラルで進められていた準備

2018年11月15日にイタリアチームが上海に合流し、ショーの準備のための会議が行われてからは、チームはほぼ不眠不休の状態で作業に当たっていたようです。中国人だけでなく、合流したイタリア人スタッフも、上層部の人間も含めて同じ状態で現場で一緒に仕事をしていたそうです。

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錚々たる規模でかつ複雑な演出

モデルが320人、パフォーマンスを行う役者が100人、KOLが40人以上、スター級の芸能人が10人以上と錚々たる規模のショーが計画されていました。

更に、その320人のモデルひとりひとりについて、舞台上で異なる演出を行うため、全てのモデルから示される質問や課題について、準備チームはひとつひとつ真摯に応えていく必要があったそうです。

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突然のキャンセル通知時に起こっていたこと

D&G本部側の一連の失策により突然キャンセルになったショーの裏側では、必死に準備に当たっていたチームにはまさに青天の霹靂で、その瞬間には何が起こっているのか理解ができなかったということです。

イタリアから派遣されたチームスタッフや、現場で準備に当たっていたモデルたちも含めて、現場では号泣する人が続出。現場で作業にあたっていたスタッフの話によると、ある黒人のモデルは”I'm so sad, I want cry”と言って現場を後にしたそうです。

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失敗のポイントと中国人消費者リスク

D&Gが根本的に間違ったこと

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上記の公式発表の内容を”中国人の立場に立って”要約すると、

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1.上海のショーでは皆さんへの敬意を表すために行う予定でした

2. ショーのキャンセルは私たちのせいではありません

3. 謝罪はしません

4. そして、中国人消費者のお金はとても大事です

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と読み取られてしまいます。これは中国人が最も嫌う悪手中の悪手であり、D&Gは根本的に中国市場に対する風評リスクを理解していなかったと言えます。

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中国人消費者が嫌うことに派生するリスク

どの国の人々でも、その国を国民を尊重されたいと普遍的に思っています。中国においても同様です。しかし、中国は大国であり、人口も多く、とてつもない経済力・消費力を持っています。

すなわち、中国市場でお金だけ稼ぎ、その裏側では国や国民をバカにしている態度が最も嫌われるのです。

例えば、中国人は中国と世界で販売されている同一商品の価格差に対して非常に敏感です。ユニクロも、その商品が中国やアジアで生産されているにも関わらず、日本よりも中国国内での販売価格が高いことがやり玉にあげられたことがあります。

しかも、ユニクロの中国工場における生産環境が劣悪で子どもまで働かせていたことが記事としてあがったり、日本と中国で出荷されている商品の質自体に差があるのではないか、という疑いの声があがったりと、ネガティブイメージが付きまとったこともありました。

この根底にあるのは、中国、中国人がお金のためだけに存在していて、基本的には見下されているという感覚です。

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中国人消費者リスクを下げるために

最も基本的かつ当たり前のことですが、中国人の目線に立って相手を尊重したコミュニケーションをし続けることに尽きます。

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そして、意外と見過ごされがちなこととして、内外価格差についてはできるだけ解消し(高すぎても、安すぎてもダメです)、それでも残る場合には、正当で納得できる理由をブランドストーリー全体に位置づけるかたちで中国人消費者に向けて説明し続けることが重要です。

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