中国ECエコシステムの最大手である阿里巴巴(Alibaba:アリババ)が最速で2019年の下半期に香港証券取引所に”二次”上場する可能性があることが報じられました。すでにニューヨーク証券取引所に上場しているアリババが中国に帰ってくる理由と、香港市場の上場メリットについてまとめてみました。

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ニューヨーク上場以前に香港上場を検討していたができなかった経緯を持つアリババ

2014年9月19日、アリババがニューヨーク市場(NYSE)に一株68ドルで上場し200億ドルを調達したことは皆さんの記憶にも新しいかと思いますが、実はアリババがこれに先立つ2013年に香港証券取引所(以下:香港市場)に上場する意向があったことはあまり知られていません。

実は当時の香港市場では上場審査基準として”同一株同一権利の原則”を掲げていて、アリババの状況がそれに値しないとのことで規制対象となったため上場できませんでした。結果としてアリババは米国に上場することを決定しています。

なお、香港市場は2014年に”同一株が異なる権利を持つこと”についての意見書を提出し議論を重ねた結果、2018年4月30日にようやく上場における条件からこの規制を緩和することとなりました。その恩恵を受けたのが、当時のアリババと同様の条件を内部に抱える小米(Xiaomi:シャオミ)の7月上場と美団点評の9月上場でした。

アリババの上場という歴史上最大級のイベントを取り逃した香港市場は、この「失策」のために複数市場の大合併に歩みだして以来25年ぶりの大改革を行ったと言っても過言ではないでしょう。

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香港証券取引所の李小加総裁も今回の動きについて以前言及

さて、香港証券取引所集団の総裁である李小加は2019年4月にメディアのインタビューにこたえるかたちで下記のような内容の談話を発表しています。

アリババは100%戻ってきます。これは時間の問題です。

アリババがアジアで彼らの株式に価値があると考えられているのであれば、返ってくることになるでしょう。当然ながら上場先がひとつ増えればマネジメントコストも増加します。しかし、彼らとしてそのコストを上回るだけのメリットがあるとすれば戻ってきます。”北の水”はアリババの株を呑み込むことになるでしょう。アリババが戻ってくるその日に。

”北の水”は”北水南下”という中国金融界で使われている言葉ですが、中国大陸の巨大な資金流が、南に所在する上海や香港市場に自然の摂理で流れていくことを意味しています。取引所総裁も、アリババが香港で上場することに対する高いポテンシャルを感じていることを示唆しています。

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3.2兆円を下らないとみられる調達額

大陸以外で上場した過去の事例から判断すると、市場価値は2,000億元(約3.2兆円)は下らないと見られています。先週末のニューヨーク市場でのアリババの株式は一株155ドル、この4年ほどで2.3倍となり時価総額は4,010億ドルとなっています。但し、足下では米中貿易戦争の影響もあり急落していることも付け加えておきます。

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中国インターネット大手も香港市場の規制緩和に「回帰」の意向

この2018年の香港市場の大幅な規制緩和を受けて、「回帰」する米国上場企業が増えることが予想されています。網易(Net Ease:ネットイーズ)の丁磊もA株市場へ戻ることを検討していることをほのめかしており、百度(Baidu:バイドゥ)の李彦宏(Robin Lee:ロビン・リー)も、

バイドゥの回帰を歓迎してもらえるのであれば、できるだけ早く国内(香港も含む)市場で上場したい。

としており、更に腾讯(Tencent:テンセント)の馬化腾(Ponny Ma:ポニー・マー)も、

条件が整えば考えたい。

と答えています。

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日本企業がほとんど選択しない香港上場のメリット

アリババの上場をみすみす逃すという失態により25年ぶりの規制緩和を行った香港市場ですが、大陸の資金を幅広く集めるという意味で非常に魅力的な市場であることに間違いはありません。日本企業で香港市場に上場した会社は実は多くなく、そのほとんどがもともと日本企業であったところに中国資本が入った結果、そのイグジットとして使われるパターンです。

香港市場で上場することにより資金調達ができるだけでなく、大陸での知名度を一気に上げることができ、その後のバリューアップの大きな推進力となり得るのです。消費者に認知されることはもちろん、投資者の中にはストラテジックなパートナーになる可能性も高いためです。

日本人にとって香港は近くて遠いエリアかもしれませんが、上記のようなスキームでの日本由来企業の香港上場は今後増えていくことになると予想しています。

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