日本の若者たちは中国の猛烈な教育競争社会が生み出す”学覇”と戦えるのか?

 

今年の南京外国語学校の三年生470人弱の内、現時点で既にアメリカ、イギリス、フランス、オーストラリア、日本などの大学に進学する予定の学生は295人で、その中にはハーバード、イエール、プリンストン、スタンフォード、コロンビア大学などの名門校も含まれており、更に北京大学や清華大学などに推薦入学の資格を獲得した生徒を加えると、大学入試に参加する生徒はたったの21人しかいないそうです。高校の記録を確認すると2012年時点でも475人の卒業予定者の内、大学入試に臨んだのはたったの23人だったそうです。

 

清華大学で2つの学位で卒業した「学覇」の女の子
清華大学で2つの学位で卒業した「学覇」の女の子

 

こういう人たちを称する中国の流行語で「学覇」という呼び方があります。なぜこれほどまでに良い成績を収めようとするのかというと、彼・彼女たちにとっての学校は学問や外国語を学んで基礎知識をつけるだけの場所ではなく、多様化する好奇心と勇敢な開拓精神を満たしたいという思いを叶えることが重要で、それが外国の名門校を目指すことになっている訳です。

 

南京外国語学校の三年生である谷麗菲はニューヨーク大学のアブダビ分校へ赴き面接試験を受け、合格率が1%と言われる名門校に2015年の新入生となることが叶いました。彼女曰く、名門校の門をくぐることができた理由として、積極的に海外の学生と交流し、彼・彼女たちの発言を真剣に聞いて、分からないことは質問し続けてきたからだと言います。これが中国大陸の「学覇」の姿です。

 

復旦大学の双子の「学覇」
復旦大学の双子の「学覇」

 

さて、少し切り替えて、中国大陸の大学卒業生たちの初任給の変遷を見てみましょう。”60後(1960年代生まれ)”の初任給は試用期間で45元(900円)、正式配属時点で59元(1,180円)、”70後”で400〜2,000元(8,000〜40,000円)でした。”80後”となると3,000元(6万円)前後でした。”90後”について15の大学生登用の多い業種から263の大企業について調べた結果、5,000元(10万円)を越えた企業が219社存在したそうです。その他の企業については初任給は低いものの、売上にコミッションがかかっており、それを加味すれば安くない金額であったそうです。

 

業界別に見ても差がついてきています。ホットなのはEC業界などで、学部生で最低でも3,500元(7万円)、最高額では16,000元(32万円)という初任給をもらった新入社員もいたそうです。”お金の匂い”と言えば金融業界、2015年の学部生・院生が貰った初任給の最高額は1万元(20万円)を超え、博士課程となると17,000元(34万円)、その殆どが製品開発や業界研究などの職種であったとのこと。更に3〜5年後には年収は百万元(2,000万円)を超えることが確実であるとのことです。

 

公安大学の「学覇」
公安大学の「学覇」

 

外国語系の名門高校に入り積極的に外国人と交流し外国の名門校を受験し、学部生、院生、博士課程と分かりやすい差がついた実力主義の企業に入社した後での初任給は20万円程度の初任給を獲得し、社内で実力を発揮した人間は業界・職種によっては3〜5年後に2,000万円の年収を得ることになるという。学歴競争社会である中国大陸における「中国夢(チャイニーズドリーム)」を体現する典型的な事例です。

 

「学覇」はトップオブトップですが、「学覇」を生み出すシステムは中国大陸の誰しもが経験していています。寺村の幼少期は学歴主義社会で、名門校に入ることが一つの分かりやすい指標でしたので、この環境については理解できますし、期末試験の結果で友人と勝ち負けを競ったことを懐かしく思い出します。もちろん学力で勝てても、スポーツや美術では勝てないというのも、学力という軸がはっきりしていたからこそ分かりあえていたと個人的には思います。ゆとり教育の是非がどうなのかを今問うつもりはありませんが、グローバル化が避けられない日本の子どもたちも、このように「学覇」を生み出すシステムをくぐり抜けてきた大陸の学生たちと、時には交流し、時には勝ち負けを競わなければなりません。親の世代こそがこの現実を直視し向かい合う必要があると強く思います。

 

更に、人件費が高騰したと言われ敬遠される中国ですが、労働力・賃金という形でしか大陸を見ていないのであれば、正に木を見て森を見ずです。巨大な人口を裾野に持つ大国の競争を勝ち抜いてきた人材たちが大量に輩出され続けるのがこのアジアの世界です。面白いと思うか、大変だと思うかによって今後の展開がかなり変わっていくはずです。

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