中国宝飾品トップに立った女性起業家が半年で転落に事業家よりも投資家を目指す中国人の特性を見る
4,800億円の資産を保有し中国での富豪ランキング入りを果たした努力の女性起業家は半年で会社の負債を急増させ、最終的な債務総額は3,600億円にまで達するというジェットコースターのような物語。裏には中国人特有の事業家よりも投資家へという”常識”が見え隠れします。
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一代で中国宝飾品トップ企業となった新光飾品と周暁光
1962年に浙江省の小さな山村で生まれた周暁光は貧しい家庭への経済的負担を考慮し17歳で自ら退学し仕事をして家計を助けることを決意します。その後7年間をかけて周暁光は中国のあらゆる土地を仕事をしながら回りました。変遷の中で彼女は中国における宝飾品市場についての知識を深めることになります。
1985年に彼女と同じように刺繍工場で働いていた現在の夫と結婚、二人はなけなしの貯蓄を拠出し、現在では中国最大の卸売マーケットとなっている義烏に場所を借り、装飾品の販売を始めました。
その後数年で彼女は義烏に住宅を購入するだけでなく、市の中心部に路面店を開いた彼女、当初の夢はここで叶ったと言えます。しかし彼女の目標は更に大きなものとなり、1995年には700万元(約1.1億円)を投資し自前の工場をつくり、”新光飾品有限公司”を設立します。そこから3年を経たずして彼女の会社は宝飾品業界における国内随一の企業のひとつとなるのです。
そして、2016年に周暁光夫妻の総資産は300億元(約4,800億円)に達し、富豪ランキングの仲間入りを果たします。しかし、その栄華から奈落の底へ落ちるまでにはわずか半年の時間しか要しませんでした。
宝飾業界のトップに立った彼女の野望はとどまるところを知らず、新光飾品は多角化に走ります。ハイエンドブランド展開、不動産、インターネットなど盲目な拡張と多角化によって新光飾品の債務は膨れ上がり、結果として225億元(約3,600億円)に達します。
中国の農村出身の経営者が陥りやすい典型的な栄枯盛衰の物語です。農村出身の経営者は若い頃は自らの境遇を改善するためにガムシャラに働き、家族を養い、住宅を購入します。しかし、当初立ち上げた事業でトップに立った後で、他業界への多角化を行い、失敗するケースが少なくありません。
中国人は事業家でもありますが、投資家でもあります。孫正義が中国で非常に尊敬されていることも、事業家である馬雲(Jack Ma:ジャック・マー)を見出し、彼に投資をしたことに依るとされています。良い事業家が良い投資家とは限らないことは世界共通ですが、それでも投資家を目指したいのは中国人の特性なのかもしれません。