2019年2月12日、蘇寧電器グループのEC子会社である蘇寧易購の董事長である張近東が会社内部における新年発表会の席で、万達百貨有限公司を正式に買収し、傘下の37店舗を手に入れたことを発表し、中国のメディアを賑わせています。買収金額は公表されておりませんが、90億元を超えることはないと言われています。これはそれほど大きな金額ではありません。中国の不動産王である王健林が率いる万達集団に一体何が起こっているのでしょうか?

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この出来事と呼応するように、万達集団のトップである王健林は2019年1月12日に行われた2018年度を締めくくる納会の中で、2019年内にすべての不動産業務を手放すこと、1平米の不動産事業も展開しないこと、今後は商業の管理・運営企業となることを徹底すると表明しています。

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万達百貨は元の名を万千百貨として、2007年5月に設立されました。万達集団全体の特徴でもありますが、万達百貨も商業不動産開発がビジネスのベースにあり、その上で百貨店を運営するというビジネスモデルでした。

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現存する37店舗は基本的には一級、二級都市のCBD地区(中心エリア)に位置しており、会員数は400万人を超えるものと見られています。ここ数年における万達百貨の売上と利益は穏やかな成長トレンドでした。

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一方で、それを少し遡る2015年頃から万達集団の売上には陰りは見え始めており、同年に一度売りに出されたという経緯があります。成立はしませんでしたが、同年初頭に10店舗、更に7月には全国90店舗の半数にあたる46店舗の閉鎖を行いました。この閉店ラッシュに伴う大規模なリストラに対して、従業員が横断幕により抗議がなされました。

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2017年、商業不動産モデルをベースとする万達集団は巨額の有利子負債を抱えており、その負担を減らすべく、集団全体として「軽資産モデル」へ舵を取ります。いわゆる万達の売却セールが始まったのです。

同年7月10日には、融創中国が632億元で万達集団傘下のホテル76店舗を買収しました。このM&Aは、最初に万達が296億円のローンを借り入れ、それを融創中国に貸し付けた上で、融創中国が万達のホテル76店舗を買収した後に、借入金を万達集団に返済するというスキームで実施されたことが話題となりました。

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「軽資産モデル」戦略は中国国内だけでなく、海外の資産にも及びます。2017年11月17日、万達集団は海外にある5ヶ所の資産を総額50億ドルで売却したことを発表します。次いで2018年1月16日には万達集団の香港資産管理会社である倫敦物業の60%の株式を売りに出すことを発表。

更に、同年2月14日、スペインのマドリードのサッカークラブ「アトレティコ・マドリード」の持ち分18%を既に売却したことを発表するなど、その他の売却案件も含めた結果として、現有する海外資産はカナダのバンクーバーのビルと、海外スタッフ10人足らずという状況となりました。

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結果として、上記の15ヶ月の間に2,158億元の有利子負債を削減しました。これは2017年6月末時点での有利子負債額の三分の一に相当し、負債比率は60%を下回るレベルを達成しました。

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一方で、万達集団は腾讯(Tencent, テンセント)や阿里巴巴(Alibaba, アリババ)グループによるグループ内事業への投資を進めています。商業管理・運営会社や映画館運営会社などへの投資です。

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一時は中国の不動産王として君臨した万達集団と王健林ですが、ECによって集客力が落ち、不動産開発で資産を保有しながら利益を稼いでいくモデルが限界となり資産売却を行わざるを得ませんでした。

蘇寧易購はオンライン企業でありオフラインを持つことによる相乗効果を狙い、やアリババ、テンセントなどは体験型の事業に対して万達と共同で事業を行う戦略と見て良いでしょう。

非常に変化の速度が速い中国を特徴的に示した新年早々の話題と言えるでしょう。

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