テンセントのポニー・マーが”ファーウェイ事件”について語りました。そして同日にファーウェイ・ジャパンが公式声明を発表しました。ポニー・マーが魯迅を引用して語った内容には非常に深いものがあります。また、テンセントとファーウェイとのスタンスの違いも明確に表れています。

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中国のフォーラムのスピーチにて”ファーウェイ”事件に触れたポニー・マー

2019年5月22日に腾讯(Tencent:テンセント)のグローバルデジタルパートナー大会が開かれ、総裁である劉炽平の開演スピーチを皮切りに、B2BとB2Cに関わる事業部の全ての上級幹部が壇上に続きました。董事長兼CEOである馬化腾(Ponny Ma:ポニー・マー)はこの大会では発言を控えましたが、午後に行われたスマートトラベルフォーラムにおいて講演を行い、そこで華為(Huawei:ファーウェイ)に関する一連の動きに触れました。

今日の中国はすでに発展段階の最前線にいます。”拿来主義(魯迅が残した表現で「外国のいいところを持ってきて自国に役立てること」)”を実現できる空間はますます小さくなってきています。

私たちが今注目している貿易戦争は科学技術戦争と言い換えても良いのではないでしょうか。私たちが基礎研究と技術開発を続けないことには、私たちのデジタル経済は砂上の楼閣でしかありません。

不断の努力によってのみ産業・技術革新、質の高い発展は生まれないのです。

彼は直接ファーウェイについては言及してはいませんが、文脈から類推するにこの事件に関する内容であることは間違いありません。

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ポニー・マーが魯迅から引用した”拿来主義”とは?

自国で基礎研究を行い自主開発を続けた先に道が拓けける、というのが大きな意味の流れであることは間違いありませんが、ここで魯迅の”拿来主義(詳しくは人民網より)”を引用していることには非常に深いものを感じます。

人民網を引用すると、”拿来主義”とは、

魯迅はかつて「孔子が今も生きていたら、親日派だろうか、反日派だろうか」と内山完造に聞いた。

魯迅はこれについて即答しなかったが、「拿来主義」の中で示した観点によれば、いかなる民族(中国や日本、そして中国に対して深い影響を持つ米国やソ連)の思想文化にせよ、それぞれの長所があるはずで、それをすべて肯定もしくは否定するのは、科学的なやり方ではない。

後世の知識分子は「胡適か魯迅か」という論証に夢中になりがちだが、五四運動中に彼らが共に戦ったことを見落としがちだ。

例えば、魯迅は内山完造に対して、中国人が学ぶべき日本人の長所は、その真面目さだと語った。胡適も「差不多先生伝」の中で、中国人のいい加減さを強く否定している。この点はまさに、魯迅の医者としての冷静・理性をよく示している。

というものです。

ポニー・マーは「”拿来主義”が実現される空間はますます少小さくなってきている」と語っています。最終的な解釈はこれを読む皆さん次第ですが、ここであえて2つの解釈について仮説を論じます。

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米トランプ政権に対して非常に過激な主張をするポニー・マー

ひとつ目は、海外の技術をベースにそれを模倣するだけではダメだ、というものです。中国は巨大な発展途上国として2002年のWTO加盟以降、段階的に外資に市場を開放し、いわば12億人の市場と海外の先端技術の交換を行ってきたわけですが、それはもう通用しなくなるという解釈です。

そしてふたつ目ですが、対立する相手方にも良いところがあるはずだから歩み寄りながらやっていこうという態度です。こういった態度が実現される余地が減っているということなので、ある意味、ここからは対極する価値観として(米トランプ政権と)真っ向から戦うしかない、という解釈になります。

この2つの解釈は相反するものでしょうか?

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故事成語の中に含めて語る中国人の教養

中国人は複雑な状況に対する意見を表明する際に、上記のような故事成語を持ち出すことが好きであり、周りからは教養のある行為だとみなされます。そして、その意味は深く、往々にしてふたつ以上の意味を含ませていることが多いのです。含ませることによって同胞である中国人にはしっかり伝わりますが、外国人にとっては表面的な意味にしか捉えられないのです。

そう考えると、今回のポニー・マーの発言の意味も見えてきます。上記のふたつの解釈は対立するものではなく、一連の流れから成り立っており、ファーウェイ事件は、テンセントも含めた中国の先端企業にとっての次の段階への脱皮のきっかっけであり、その仮想敵はアメリカ、すなわちトランプとそれを取り巻くGAFA+アルファ(ARMなど)である。そして、その戦争に打ち勝つためには自前での基礎研究と技術開発を続けていくしかない、と言っているのです。

なかなか過激です。

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対極をなすファーウェイと任正非

さて当事者であるファーウェイですが、同じく5月22日にファーウェイ・ジャパンのTwitter公式アカウントにて、

というメッセージを発表しました。

このメッセージの中で最もダイレクトに消費者に訴えたいことは、販売済み、販売しているスマートフォンについてのセキュリテイやアフターサービスについて心配をしなくても良いという主旨ですが、AndroidすなわちGoogleとは末永いパートナーであったし、これからもそうであり続けるという戦略的に重要な内容も含まれています。

創設者でありCEOである任正非の人柄とファーウェイの堅実で謙虚(中国語では”低調”)な企業風土と、中国の他のインターネットユニコーンと比較して、最もグローバル化が進んでいる企業としての特質がよく現れています。

温厚な人柄に見えて強い意志と態度で引っ張るポニー・マーと、元軍人にして温厚で謙虚な態度を示す任正非、同じ中国人経営者として全く異なる側面がトランプ政権からの圧力により際立ったかたちです。

皆さんはどのような解釈をされるでしょうか。

こちらも合わせてご覧ください。「中国テンセントのポニーマー(馬化腾)が語る微信(wechat)誕生時の葛藤と本質(前編)」

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