中国テンセントのポニーマー(馬化腾)が語る微信(wechat)誕生時の葛藤と本質(前編)

腾讯(テンセント)の創業者であり董事局主席である馬化腾(Pony Ma:ポニー・マー)が2013年11月8日に中国企業家クラブにて講演した内容です。実は、アリババのジャック・マー(馬雲)の講演内容を探すのは簡単ですが、このポニー・マーの講演内容を探すのは至難の技です。外にあまり話が出てきていないのです。ですから、内部の講演内容などが本になって出版されていたりします。

名前も「ジャック」ではなく、「ポニー」と可愛らしく感じます。しかし、話す内容は冷静沈着、極めて分析・実証的な正確が伺えます。更にところどころにナイフのような鋭さが入ります。講演が長いため前後半に分けて編集していますが、前半の中でも、京東や58同城など同業のビッグネームを「全く新しくないビジネスモデル」とズバッと切り捨てています。また、当初の主力事業であったQQから微信(wechat)への切り替えをする際の社内における葛藤や、業界からの脅しともとれるプレッシャーなどを乗り越えてきた経緯が示されています。このような経験があるからこそ、内面は熱くとも、表面的には冷静沈着であることを学んだのかもしれません。

ともかく、語り口、内容、論旨など、ジャック・マーとは本当に対照的で非常に面白い。比べて読んでいただければ、2倍いやそれ以上に味わい深いものとなるはずです。

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ここに来て話をさせて頂く機会を頂いたことを大変光栄に思います。こうして企業家の皆さんとお話をお話ができれば、実際のところ講演することも何もなくて、本当に皆さんと交流ができて、自分が抱える色々な課題について教えて頂くことができれば本望です。

さて、当然のことながら、最近の一連の話題はかなりホットですね。「三馬同槽(三国志の逸話、曹操が死に瀕した際に三頭の馬が同じ桶で餌を食べるという内容で、司馬懿などに王位を出し抜かれることへの暗示とされている)」も含まれています。現場ではかなり話題が沸騰しています。特に郭広昌(中国有力財閥の復星集団のCEO)は当初敏感な話題を避けて、その後に語りだしましたが、とても素晴らしい内容でした。平安保険のように伝統的な保険会社とインターネットとの間では激しい衝突が起こっています。そこで、本日はこの場をお借りして、テンセントと私の考え方と経験を皆さんにシェアしたいと思います。

微信(wechat)がなかったら、我々は存在していない

多くの人はテンセントは最も初期にインターネット業界の入場券を手に入れた会社だと言います。微信のことを指して、友人も皆使っていると。微信は間違いなくモバイルから始りました。スマホがメインでした。このような形態は今までありませんでした。それまでは一般的に、いわゆる伝統的なインターネット上で設定を行い、背景を変更して、スマホに転送をしていましたが、そのようなやり方とは一線を画したのです。では、なぜ特別な魅力を持つようになったのでしょう?それは、微信によって私たちは多くの独特な体験をすることができたからです。微信はスマホとPCとの明確な区別を充分に意識していました。人々はコンピューター端末を「使って」いましたが、身体の一部のようになったのです。以前PCを使用していた頃は、身体の一部とは言えませんでした。コンピューターは、離れることができました。立ち上がれば、コンピューターから離れられたのです。最初に人体の一部となったのはスマホです。内蔵カメラや、センサー、マイクなどは、人の眼、鼻、口、耳となり、皆さんの触覚や色などをインターネット経由で友達と共有することができるようになりました。当時、我々にはモバイルQQがありましたが、PC上での利用とスマホ上での利用を半分くらいで想定したものでした。しかし、微信は完全にスマホをベースとして開発されたものです。

马化腾

微信には「オンライン」、「離席」といった概念が無いですね。以前、私たちが作っていた商品には必ず「オンライン」、「離席」といった画像がありました。なぜでしょうか?簡単です。ずっとオンラインだからです。オフラインはありえないからです。しかし、より細かく配慮して考える要素もあります。プライベートについてです。以前は、情報を発進した後で、相手の既読ステータスを確認することができました。いわゆる既読確認機能です。しかし、ユーザーは便利であることと同時にプライバシーを守りたいものです。多くの人は、メッセージを出した後に、相手がそれを読んだかどうかを知りたがるものです。発送した側は気持ちが良い、しかし受け取った側が気持ちが良いかと言うとそうでもありません。受信者はこの点についてプライバシーを守りたい、そこまで透明性はいらないと考えるでしょう、複雑な問題です。技術とアプリのレベルだけではないのです。一番大事なのは、人間性を充分に考慮するということです。

QQは6億のMAU(Monthly Active User)を獲得していました。既に2, 3年前にはこの水準に達していました。しかし、この領域ではイノベーションや差別化戦略によりひっくり返される可能性が常につきまとっていました。微信がもし仮に私たちテンセントの商品ではなく他社のブランドだったとしたら、私たちは基本的に生き延びることはできなかったでしょう。振り返ると、生死を分けたのは1, 2ヶ月だったと思います。その頃、毎日エグゼクティブで集まって、ああでもない、こうでもないと商品について議論をしていました。もう一度説明しましょう。インターネット時代、モバイルインターネット時代において、ある企業が堅牢無敵に見える時、実際には最大の危機が訪れているのです。敏感にこの動静を把握できなければ、本当に危機的な状況に陥ります。過去に蓄積したものは雲散霧消します。一度この状態になってしまうと、もう二度と復活することはできないということです。本当に強く思います。

モバイルインターネットは、「連続」ではなく「非連続」

再びモバイルインターネットの世界に戻りましょう。モバイルインターネットとは「モバイル」の字が加わったもので、インターネットの時代が10数年とすれば、その連続であると言う人がいます。私の感覚では連続性だけではとても説明できません。実際は非連続です。過去のPCをベースとしたインターネット網は純粋な意味での「インターネット」とは言えず、モバイルインターネットになって初めてインターネットの概念が実現したのです。全ての設備がネットワーク機能を携えた後に、人と設備、設備同士の通信が全て連結されている状態です。想像できる世界は計り知れません。現在はまだその状態には至っていませんが、徐々に近づいていくでしょう。

時間消費について見て見ましょう。統計によると、PCでインターネットを利用する時間は1人あたり1日に2.8時間です。現在のモバイルインターネット時代、どうなっているでしょうか?睡眠時間の8時間以外、16時間起きているわけです。スマホがあったとしても、毎分、毎秒見ている訳ではありません。しかし、情報が届けば見に行く、そういった16時間になっているのです。設備自体、スマホはPCよりも遥かに長い時間使うことが可能です。ここには非常に大きなチャンスがあります。2012年の7月、PCサーバーがスマホの価格よりも安くなった瞬間から、QQ, Webサイト、weibo、360を含む検索ポータルなどに関わらず、爆速成長の時代が始まったのです。この一年のスピードは更に加速しています。現在、70%のトラフィックはモバイルから流れてきます。しかし、モバイル端末から得られる収入は全体の10-20%です。ビジネスモデルが明確ではないためです。

半年前の私たちは悲観的だったと言っていいと思います。多くの場面で言えたことですが、量の増加が収入の増加に繋がっていなかったのです。リスティング広告をアプリ上に出そうとしても、広告を出す位置がスペース的に無いのです。ゲームにしても当時「微信ゲーム」が無かった時代、伝統的なモバイルゲームに時間を使うユーザーも少なく、課金の結果も大したことはありませんでした。「体験(UX)」が不十分だったのです。大画面のアーケードゲームをやった方が爽快ですよね。広告についても、モバイルについては広告ひとつ、大画面で、動画を入れようものなら高くつきました。PC上での成熟したビジネスであればこのようなことは想像できませんが、モバイル上ではそうなっていました。PCからのトラフィックがモバイルに到達した瞬間に、収入は一気に下がる、恐ろしい状態でした。

Google, Facebookも同じような問題に向き合っていました。この半年間で両社の株価は最高値を記録しました。Facebookはここ1, 2ヶ月でまたも更新しましたね。私が言いたいのは、彼らがモバイルインターネット上で利益を稼ぎだしたということが目に見えるようになったということです。Googleはモバイルからの収入が加速的に成長、Facebookの40%はモバイル系の収入と言われています。Facebookは元来、収益化しないと言っていました。彼らはなぜ広告モデルを選んだのでしょうか。本来、やりたくなかったモバイル上での収益化、現在非常に上手くいっているように見えます。彼らは、どのように広告を加えればユーザーの反感を買わないのか、研究に研究を重ねたのです。この結果が数値として見え始めた直後から、株価は上昇を始めました。

私も同じ業界にいます。Facebookが最初に上場をした頃、プライベートバンクを通じて株を購入しました。しばらく上がった後に下がり始め、購入価格を下回りました。その後ようやく値上がりした際に、我慢できず売却、25元の頃でした。当時の私にとって、どうやって収益化するのか?全く分かりませんでした。Facebookは本当に凄い。米国のインターネットトップ企業は収益化に成功し、アフィリエイトやSNS広告などのレベルは世界一級品です。本当に彼らはそのレベルを達成したのです。もちろん各種のアプリの大量の広告費用を吸収しているということです。時には私たち自身にも、当然ながら外側にいる投資者たちにとっても分からないことはあります。しかし、このような大きなトレンドを目の当たりにすると、自信も強まりますし、悲観的であったなとも思えます。面白いですね。

テンセントの株価はなぜこれほどに高いのか?

私たちにかかるプレッシャーは非常に大きい。これほどまでに株価が高くなっているからです。社会は私たちにこのような巨大な圧力をかけるのをやめていただけませんか。長期的な視点で見ていただけるか、この点について投資家の皆さんが理解していただけるのであれば幸いです。理解できていないのであれば損を出すことになります。株価の高い低いについては私たちの関心事ではありません。

马化腾

テンセントの株価はなぜこれほどまでに高くなっているのでしょうか?資本市場の私たちに対する期待が高いことは、特に微信が発表されたということで、皆さん入場チケットを購入されたんだと理解しています。微信の開始後、今からちょうど2ヶ月前にゲームも発表しました。あまりゲームを遊ばなかった人々が入ってきました。2つ目の理由として、「1,000億ドルの反動(テンセント総裁刘炽平による)」とう論文が世間に出回ったことです。多くの人を震撼させましたが、私は不思議でした。多くの人が期待を寄せるのは未来です。モバイルインターネットには確実に前途があります。現時点で稼げていないからと言って焦る必要はないのです。大事なのは戦略です。その後にお金がついてきます。多くの投資家の考え方はこうです。結果、プレッシャーは極大化しましたが、私たちも長期的に投資をしていきます。収益化はそれほど早くできないと思いますが、トレンドから見れば、これだけ多くのモバイルユーザーがいて、インターネットに接続している状態で、私たちの投資した商品が誤った方向に行くとは考えにくい。ですから、長期的な事業発展を考え、現在投資をするべきところに投資をし、短中期的な利益を追い求めず、ステップ論として捉えていきます。現在、全ての業界でモバイルインターネットへの対応を強化しています。例の文章が流出して以降、アリババさんのみならず、多くのインターネット企業がモバイルを優先することを進めたのです。

なぜ、モバイルインターネットの魅力は止まらないのでしょうか。モバイルインターネットがあることで、多く業界をまたがった統合環境が実現します。身につけるものでもあるので、ユーザーと常に共にあることができます。多くの物事が、業界を超えて統合され、かつ肌身離さずという状態になるのです。インターネットは多くの業界をひっくり返してきました。数えてみて下さい。音楽、ゲーム業界もひっくり返されました。ソニーのPlayStationもです。マイクロソフトのXBoxくらいじゃないでしょうか、今利用されているのは・・・。メディアは伝えませんね、電子書籍や、インターネット上での資料閲覧、他にも微信、weiboなどにユーザーが多くの時間を割いているということを。ECプラットフォームは小売店業態に衝撃を与えました。最近ではP2P金融ですね。数ヶ月前から突然ブームになっています。皆さんは、インターネットをそれほど変なものとは思いませんね。以前は、新経済、バーチャル経済などメインストリーム扱いされてきませんでした。現在は主流であると認められました。私は性格的に検証思考です。私は、これからは、あなたはこの業界、私はこの業界というのではなく、中間に多くの連関性が見いだせるということに何も不思議を感じることはありません。

改善・改良ではなく、突破

数日前にパネルディスカッションに参加しました。そこで私は第3次産業革命についての考えを話しました。以前は蒸気機関、それが電力に変わって色々な業界に変化が現れました。影響は同じでした。インターネットが出現し、全ての業界がそれをツールとして使うようになりサービスレベルが上がりました。銀行業界では、インターネット化する前は口座番号があり、通帳を持って行きました。株式についても、叫んで、呼んで初めて売買ができました。それが電子化されたことによって、一定のサービス改善に繋がりました。しかし、インターネット時代では、全業界でサービスの改良、改善などの変化はあると思いますが、私は改善や改良くらいではダメだと思っていて、必ず突破するくらいのことをやらなければいけないと思っています。ECについて、現在多くの垂直統合モデルが見られます。「京東」は3C商品、「唯品」はアパレル、粗利益が非常に高いのはダイヤモンド専売店、どれもインターネット企業に見えますが、実際には伝統的産業と変わりません。インターネットを利用しているというだけです。サプライチェーンへの理解、資源のありか、やり方、サービスの形態などを深く考える必要があります。同じように、以前には見られなかったようなサービスも現れました。「搜房網」がそうです。彼らの市場価値は、ビッグ3にも引けを取りません、「新浪」とほぼ同じです。搜房網は、以前、本当に小さかった。しかし、異なる都市で生活する部屋探しをするユーザーを細かくセグメントしていました。最近上場した「58同城」など幾つかの会社、また「美団」など上場していない会社などは、インターネットの真価を発揮しているとは言えません。インターネットを利用しているに過ぎず、本質的なインターネットの優れている点を見落として、伝統的産業を行っているに過ぎないと思います。これらは「突破しようとして、改良になっている」典型的な例です。

马化腾

製造業を見てみましょう。国内では小米が彗星のように現れました。スマホを作るということですが、彼らはインターネットのモデルでスマホを作っています。雷軍はインターネットについては本当に詳しいのです。だから、多くのアプリ、ハードに加えてサービスを加えて、ファン型の経営を進め、更に高度な生産プロセスを備え、weiboの中で宣伝活動をし、多くの消費者に今までの伝統的なスマホメーカーはweiboで少しも発言が無かったな?フリッカーってこれだね?と思わせることに成功しました。簡単なことです。実際にはインターネットの世界における定石があります。ハードは儲からない。サービスを充実させ、ファンをつくること。ネットワークに関するハードウェアはユーザーと一体です。売ったら後にユーザーを見失ってしまう、簡単なサービスだけやる、そんなことではダメです。ビジネスは売った後からこそ始まるのです。だからこそ、多くの商品とサービスはインターネットビジネスの考え方を用いるべきです。最近は多くのケースで、インターネットモデルを見ることができるようになりました。ファンに、良し悪しをテストさせ、ブランドを作ります。もちろんハイエンドユーザーのみがテストに参加します。徐々にインターネット上で評判を築いていきます。米国で大人気となっているテスラモータースも含め、EVも同じく、バイラルビジネスです。ごく少数のハイエンドなエリートユーザーのみがユーザーとなれます。また、非常に格好いい。テスラとBYD(深センの自動車メーカー、EVもラインナップ)、殆ど同じですね。しかし、考え方は全く違います。先にスポーツカーを作り、インターネット化し、IT化していく。全てはネットワーク上にあります。どのような事情があれ、車に修理が必要な状況になれば、スマホを通じて全て把握されます。各地の充電ステーションも同じ形式でサービスを提供します。そしてネット上での評判を作っていきます。これらのケースはどれも、インターネットビジネスの哲学が貫かれている好例です。

全ての企業はしっかりと準備をしておく必要がある

次に、私が最近観察した様々な業態とインターネットの結合点について、非常に重要と思った部分について共有したいと思います。多くの人がトレンドが来たのは分かったが、どうすればいいのか私に聞くでしょう。皆さんどう変わればいいのか知っていますが、できるようには見えません。時には自らの既得権益が影響するでしょう、もしくは企業の遺伝子、DNAが合わないということもあるでしょう。正直に言えば、確実に違うのは、10年後に過去を振り返り一体何ができて何ができなかったかを振り返るか、もしくは今現在何を改変するべきか、両者には大きな違いがあります。人は自分のお腹を切った痛みを感じたくないということです。自らの利益を捨てて、何かを変えるということは本当に難しいことです。私自身の考えは、より良き準備をするためには、別部門を作ることです。別の機構を作ることです。そして新チームを編成し、既存業務と確実に矛盾を起こすことをあえてやってみるのです。そのトライを妨げないことです。皆さんがそれをやらなければ既存のライバルが、もしくはこの市場を狙って外からやってくるライバルがやるだけです。それでも自ら先んじてやりませんか?

ノキアには一時期2,000億ユーロもの市場価値がつきました。そして、47億ドルで売却されました。ノキアは頑としてアンドロイドOSを使いませんでした。コントロールできないから、コントロールをされるから、絶対に使わないと決め、そして落ちぶれました。マイクロソフトもWindowsとOfficeに固執しました。金のなる樹ですから、実際この2つのソフトウェアは最大の利益をもたらしていたので、手放すことなどできません。しかし、どうでしょう、今では完全な受け身の事業です。Appleが新しいOSを発表しましたが、その中ではOffice系ソフトは全て無料になりました、以前はお金をとっていましたが。これもまた若干受動的であったと言えましょう。ソフトとハードは一体である必要があるのです。

微信をプッシュしていた頃、モバイルQQ部門が反対しました。しかし、彼らも方向性には気づいていました。彼らも一つのチームを作り微信に似た製品を作っていたのです。結果、2つのチームは努力をし、最終的に抜きん出たものが受け入れられたという訳です。誰がこのアプリを使うのか、最終的にQQ部門は敗北しました。彼らの製品は使い勝手が良くなかったため微信が勝ちました。我々が微信をプッシュをしていた頃、無線業務部が制作したものは、(前述した)広州R&DセンターのQQチームが作り上げたものと比べるまでもありませんでした。そのため、(この新たな動きに気づいた)キャリアは、正に広西チワン族自治区、雲南省で会議をしている最中、データ部門を通して我々QQチームに対して、「こういった商品をプッシュすることは良いことだが、テンセントがやってはダメだ。なぜなら、我々とキャリアはパートナーシップである以上、どこかで罰則を与えなければならなくなるだろう。結論を出さなければ、何をするにも咎めることはないが」、と言ってきたのです。この(キャリアからの)プレッシャーは物凄いものがありました。だから、微信の最初のリリースには電話帳とのマッチング機能はありませんでした。当時のチャイナユニコムは「お前たちが電話帳との統合を実施したら、それは一線を越えたことを意味する」と言ってきて私たちに電話帳機能の実行許可を与えませんでした。OK, であればやりません、そういうことでした。結果、簡易版QQのような商品が出来上がりました。使ってみても面白くない・・。違いがないのです。簡易版QQ、廉価版QQ、全く面白くなかった。その後、競争が始りました。国内でも数社が出てきました。私はとやかくいう立場にありません。懲罰を与える・・・、そんなことに構っていられません。電話帳との統合機能を入れました。元来QQフレンズから引き込んだ私たちのユーザーベースに、電話帳のユーザーが加わりました。これはとても良い経験になりました。電話帳を統合した瞬間に、友達がポンポンと現れるのです、これが成果でした。次に、音声対話機能(メッセージの代わり声を吹き込む機能)を入れました。従来、この機能はありませんでした。私たちの成長曲線は極めて見苦しいものでした。そう、横一直線です。使われないな、簡易版QQと思われたんだろうか?と、本当につまらないよな・・・と。しかし、音声対話機能を入れた瞬間から成長曲線が急激に上がりました。ハイテクですか?全然ハイテクじゃない。10年前にPC上で試しましたが、誰も使いませんでした。早期で印象が残っていた話としては、10数年前に米国のキャリアが、彼らは主に通信回路を作っていましたが、ホテルのドアマンに通知をするためにネットワークを使った音声対話を使っていたくらいで、日常的に使ってはいませんでした。モバイルインターネットネットワークが充実することによってネットワーク効果が現れた結果として、音声対話をするセグメントが突然現れたのです。

马化腾

以前、私たちはかなり古めかしい技術をモバイルインターネット領域に応用していました。何故か?以前、PC上で私たちはシミュレーションを終えていたのです。QQのユーザー、動画については既に風行に移っていました。今更それを加えて意味がありますか?また、仮にあなたが私にメッセージを残したとして、私がオンラインではなかった場合、オンラインになってメッセージを確認する必要があります。その間、とても申し訳ない気持ちになります。まるで、留守番電話を残しているような感じです。一方で、微信はモバイルインターネットを利用します。スマホと統合した後では、みなさん比較的時間通りに感じることが多いと思います。受け取るのも、返すのも割りと早く体感できます。第三に、電話がならないというプレッシャーからの解放です。皆さん、現在は本当に忙しい。トイレでも寝ている時でも、会議中でも両親と一緒の時でも、米国留学中でも、電話から解放されるのです。

ここに発見がありました。機能の魅力というものはその内側にあります。同じ技術であったとしても異なる環境下でその魅力が光るのです。そして、伝統的キャリアはこういうトライをすることができないのです。電話でもそうです。SMSでは、多くの人に対してSMSを送ることができましたが、返信する相手は1人というものでした。今、皆さんがグループチャットの中で多くの人と同時に会話をすることができる感覚とは全く異なります。以前であれば、メールでその機能を実現することができました。皆で討論することが、ビジネス中にPCから離れることができない行動でした。この辺りが微信の根本的な発想にありました。広州のQQメールチームもひとつの源流になっている微信ですが、メール機能をよく知っている彼らだからこそ出てきた発想なのです。

さて、もう一度振り返りましょう。当時、メールチームは、スマホ上でメールを処理することの難しさに気づいていました。最も使いやすいのはブラックベリー。私も数年前までブラックベリーで香港の番号を使っていました。もちろん、今現在のブラックベリーは悲惨です。しかし、ホットだった時、オバマ大統領も使っており、世界中のビジネスエリートのツールというハイエンドのイメージがありました。当時の私は、このようなツールが、いつになったら大衆が使えるものになるだろうかと考えていました。メールを自らいちいち取りに行かなくても、いつも手の中にあるような感じです。ですから、我々はメールソフトを改造してひとつのアプリに変えることができないかを検討しました。メールソフトの普及版と言ったところでしょうか。今では全くミステリアスなものではありませんね。だからこそ、ブラックベリーの惨状があるのです。以前は1,000億ドルの会社でしたが、今では売るに売れない状態です・・・。

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