スマート行政に始まり、教育、医療、交通など幅広い産業にインターネット関連企業根ざしており、烏鎮(浙江省の水郷)に住む人々の生活を根底から変えつつあります。今回はその烏鎮に住む老人たちの生活がどう変わったのかについて紹介します。

_

技術とともに生きる中国の老人たち

2014年に”第一回世界インターネット大会”が開催された当時、烏鎮(浙江省の水郷)にはインターネットに関する企業は12社しかありませんでした。しかしその数は現在、烏鎮には900社を超えています。

烏鎮に住む81歳の胡暉さんは「KOL(Key Opinion Leader:インフルエンサー のこと)おばあちゃん」としてちょっとした有名人です。明るく開放的な彼女は一般的な若者よりもスマートフォンを使いこなしています。”全民K歌”というスマホアプリで楽曲を歌い、抖音(中国本家版TikTok)でライブ配信するなどお手の物です。

胡おばあちゃんは、見たところ70歳以上の40名を超える踊り手の中から何人かを選び、彼女のライブ配信の演目にしてしまいます。

淘宝網(Taobao:タオバオ)の商品は良いわよね。でも、価格を考えると拼多多(PDD:ピンドゥオドゥオ)の使い勝手も良いのよ。

烏鎮の高齢者サービスセンターの活動質の中で胡おばあちゃんはスマホアプリを器用に使い分けながら話してくれました。

ここまでの話を聞いて胡おばあちゃんは若者と同じくらいにエネルギッシュでアクティブであると思われるかもしれません。しかし、彼女も外出する際には”SOS機能のついた指輪”を欠かさずに携帯する一人の老人であることに変わりはありません。

”SOS指輪”で緊急を知らせることで、前述した高齢者サービスセンターから人が出動することになります。このセンターをサービスとともに2015年から統括しているのは馮韶軍です。

SOS指輪は特に高齢となるご老人や、独居老人などのために開発されました。1日あたり1元で貸し出していて、すでに200名を超えるご老人たちがこの指輪を活用しています。

馮韶軍によれば、すでに80件以上の緊急出動による救助活動に成功しているとのことです。

2018年10月には88歳になる老人が夜間にトイレで転倒し、臀部を骨折。彼女は激痛の中、這って机の上にあるSOS指輪を機能させ、センターのスタッフに機器を知らせると同時に、家族に連絡を入れることができました。

このようにセンターへの能動的なコールがなくても救助活動は行われます。ある老人が自宅で転倒し、その後動くことができなくなってしまいました。センターはその老人の指輪が長時間同じ場所から微動だにしないことを不審に思い、現場に急行、倒れている老人を発見し救助活動に移りました。

指輪は室内のセンサー類とも連動しています。門に設置された赤外線センサーが長時間ドアの開閉を検知しない場合、24時間の内にトイレ等への移動がない場合などの結果によりセンターは緊急出動を行うことができるのです。

昔は私たちはみんな一緒に生活していた。まさに晴耕雨読。それが今ではセンターからの連絡が来ない日は逆に不安に感じるようにすらなりました。

近々70歳を迎える一人の老人の言葉です。

烏鎮の高齢者サービスセンターは烏鎮を含めた3つの鎮と1つの村の4,000人以上の老人をカバーしています。一方で毎日センターにやってきてランチを愉しむご老人たちも200人程度です。

馮韶軍は上記の事実から、オフライン施設や設備に大きな投資を行う必要は無いことを感じ取りました。中国が伝統的ということではなく、現実的な問題として中国の大多数の老人たちは自宅にて老後の生活を送っています。烏鎮でも90%以上の老人たちは自宅養老のかたちです。

こうした現実的な前提の中で、オフラインの施設に対する高額の投資を行わず、むしろオンラインのサービスを拡充することによって、在宅でありながらサービスのカバレッジに入るというまさに中国の老人向けサービスにおける”O2O”が成り立っているのです。

今後、世界空前の高齢化を迎える中国社会における一つの智慧と言えるのかもしれません。日本としても学ぶことができる要素なのではないでしょうか。