中国アリババのジャック・マーとテンセントのポニー・マーはなぜ手を組めるのか?

DoubleMa

香港市場に上場している中国100強に入る民営企業”复星国際”が新株の額面発行で10億ドルの資金調達を予定していることが報じられています。また、これとは別に無額面株式で2億ドル程度の新株を発行することも報じられており、前述した額面発行分を加えると最大で12億ドルの資金調達となります。复星国際は、復旦大学出身の郭広昌が董事長で、医薬品製造、不動産開発、製鉄、鉱業、小売、アパレルを手掛ける正に巨大コングロマリット企業です。

これだけでも非常に大きな市場の動静ですが、更に輪をかけた報道が市場を駆け巡っています。それは、复星集団が、アリババグループの董事長である馬雲(ジャック・マー)と、腾讯(テンセント)董事局主席である馬化腾(ポニー・マー)を引受先として計画している、というものです。2015年5月12日、复星集団のスポークスマンは、「個別に評論はしない」とした上で、会社の正式発表のみが正しい情報であることを説明しました。

Fosun

复星集団は、調達した資金は一般的な用途として使用すること、そしてその中には保険企業のM&Aも含まれるということを発表しています。香港市場の当該株は今週月曜日に取引停止となりましたが、昨日に取引が再開されています。

”2人の馬(マー)”が出資したという報道は何も根拠が無い訳ではありません。彼らは保険業に対して非常に関心を持っていたからです。この”2人のマー”は先週、中国太平洋保険ホールディングカンパニーが行った17億ドルの新株額面発行に参加したことが報じられています。

次に同じく2015年5月12日、インターネット動画大手”楽視(LeTV)”グループ傘下の”楽視体育(LeSports)”が1回目の資金調達を行い、合計で1億ドル前後を調達したことが報じられました。その投資者は、ジャック・マーが保有する投資ファンドである”雲峰ファンド”と、アジア富豪ナンバーワンである王健林が率いる”万達(ワンダー)集団”、そして更に”国民老公(中国国民の旦那様)”と呼ばれる王思聡(王健林の息子)が保有する”普斯ファンド”である可能性がかなり高いと言われています。”楽視”グループの株価はここ2日間ストップ高となっています。

LeTV

先週、”楽視体育”のCCO(チーフ・コンテンツ・オフィサー)で元々CCTV(中央電視台)からジョブホップしてきた劉建宏が”華泰証券”の投資交流会の席上にて、「楽視体育は現在全世界のスポーツ関係の版権やスポーツイベントの権利を保有しています。将来的にはペイ・パー・ビューによる付加価値サービスを展開し、スポーツ産業への展開も考えています。グローバルで最もスポーツを理解する科学技術企業となることを目指しています」と発表していました。

ジャック・マーは2013年にエンタメ・レジャー産業への進出を開始して以来、アリババグループは様々な角度からの投資を行ってきました。アリババのデジタルレジャー事業部を設立し、63億香港ドルのファンドをレイジング後”文化中国”を買収、”光線伝媒”、”華数伝媒”へ出資、更に12.2億ドルで”土豆網”に投資、”魅族(Meizu:スマホメーカー)”に出資、11億ドルで小米に出資するなど、その分野でのカバレッジを拡大してきました。”楽視体育(LeSports)”はブラジルワールドカップのインターネット上での放送も担当するなど着実に実績をつけてきており、今後アリババグループとしてサッカーコンテンツによるトラフィック流入を狙いつつ、関連商品の販売などへ繋げていく形が想定されます。

アリババとテンセントを率いる”2人の馬(マー)”。ジャック・マーが提唱する”ITからDT(Data Tech)への進化”、ポニー・マーが謳う”インターネット+”の世界、着実なるMAU(Monthly Active User)の確保からARPU(Average Revenue Per User)の最大化への流れが、この異なる2つの業界を代表する企業の買収に見て取れます。巨大なMAUに対する保険サービスの提供、スポーツコンテンツをテコにしたトラフィック増大とMAUの確保と関連商品の販売、非常に分かりやすい構図です。そして、中国インターネット企業のARPU主義が強く伺えるのが、真っ向勝負しているライバルであっても付加価値サービスを取り込む際には(結果的に)手を組むことも厭わないことです。互いのユーザーベースの1人あたり収益を拡大することができれば、それでベストとは言えませんが、ベターです。このダイナミックさがたまりませんね。

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