香港市場が裏口上場スキームについて厳しい態度を表明、上場シェルの価値が75%暴落
2019 年10月1日に香港証券取引所(以下:HKEX)は、上場企業の”シェル”を売買することによる裏口上場スキームを厳しく取り締まるための活動を始めることを発表しました。
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リバーステイクオーバースキームの終焉
”シェル”を買い取るスキームを使った”リバーステイクオーバー”すなわち”裏口上場”については、かつて下記にまとめています。香港市場に上場する際のひとつのポイントでもあったので、非常に注目を集めた記事です。
専門家はこの活動はHKEXが”シェル売買”による裏口上場に対する強い意思を込めたものであり、結果としてシェル価格の暴落をもたらすことになることは間違いないとの見方を示しており、既に通達が公表された後に、HKEXに上場する企業のシェル価格は7〜8億香港から2億ドルまで下落したとのことです。
さて、HKEXが公表した通達の主な内容は上図の通りです。シェルを買い取った後に買い手側がシェルに対して実態資産を投入する、もしくは旧来業務の資産を売却する期間は2年から3年までに増やされたことはポジティブですが、新株を発行して手元現預金を増やし新業務を始めることについては大幅な制限が加わりました。
例えば、中国大陸のある企業A社がHKEXに上場を目論んでいるとして、通常の新規上場を行わずに、HKEX上場企業B社のシェルを買い取ることを選択したとします。A社が単に香港に資産を移して以前と変わらない業務を行うことや、B社が行っている業務をそのまま継続して行う場合には問題はありませんが、上場後にHKEXで新株を発行して資金調達を狙い、新たな事業へ投資することが難しくなりました。
一般的に”シェル”が売買されるのは、HKEXに上場することにより投資資金を集めつつ、創業者がイグジットして利益を確定することなどを目的として行われ、香港上場企業にはこの”シェル”についてのプレミアムが20%乗っているとされていますが、目的の達成が難しくなりつつある以上、価値が暴落するのは当然の成り行きと言えるでしょう。