中国インターネットTV”暴風集団”が英国企業への投資で投資家を怒らせ、公安が踏み込む事態に
インターネット総合企業の”爆風集団”が試練を迎えています。2019年7月28日の夜、爆風集団股份有限公司は、会社の代表者である実験を持つ冯鑫が犯罪を犯した疑惑で公安当局に強制事情聴取を受けたという公式声明を発表しました。
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企業の実質的支配者の冯鑫が公安行政当局から強制事情聴取へ
現在47歳となる冯鑫は暴風集団の魂と言っても過言ではない人物です。暴風集団の2018年の財務報告によると、暴風集団の株式について直接21.3%, 間接的に4.5%を保有しており、董事長兼総経理(日本で言えば代表取締役社長)の立場にあります。
メディアによると、冯鑫の今回の事情聴取は2016年における光大資本と共同で実施した海外M&A案件が関係していると言われています。暴風集団は2016年に光大資本投資有限公司とともに、イギリスのスポーツに関する権利関係を手掛けるMP&Silva Holdings(以下:MPS)を買収しましたが、冯鑫がその際に賄賂を受け取っていたという容疑です。
取り調べは冯鑫以外に8名に対して実施されており、その中には暴風集団の現職、前職スタッフ、当該案件に当時関わったとされる外部人員が含まれています。また、暴風集団の董事長秘書に以前あたっていた毕士釣も含まれているとのことです。
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2016年に実施した英国のスポーツ権利企業に対するM&Aが発端か
2018年の光大証券の財務報告によると、2019年3月13日に子会社である光大浸辉と浸鑫基金(ファンド)との共同名義で暴風集団の実質的支配者である冯鑫を被告として、株式買戻契約についての紛糾内容について民事訴訟を起こしています。暴風集団が7.5億元分の買戻につちえ応じていないことが契約違反であるとの内容です。
2016年に上場後1年が経過した暴風集団は、暴風投资、光大浸辉投资管理(上海)有限公司、上海群畅金融服务有限公司、その他をLPとするファンドを組成しました。これが前述した訴訟の共同原告となっている浸鑫基金です。募集総額は52億元で、暴風投資はGPとして100万元(約1,600万円)を出資しました。
スポーツ関連のコンテンツを探していた暴風集団は、このファンドを通じて英MPSの65%の株式を取得したのです。今回公安行政当局が疑惑の目を向けているのがこのM&Aです。
MPSは3人のイタリア人によって設立された会社で、スポーツに関する権利のバイイング、マネジメント、販売を主要業務とし、世界20ヶ所で展開、2015年6月における収入は6億ドルを超えていました。
このM&Aディールについては、中国国際金融有限公司(CICC)と中国企业海外并购服務的易界集团(DealGlobe)グループ傘下の易界资本が買い手側(浸鑫基金)のFA(フィナンシャル・アドバイザリー)についていました。売り手であるMPSのFAについていたのはUBSでした。
中国は世界最大のスポーツファン人口を抱えており、このディールも上手くいくと思われていましたが、M&A後に創業者のイタリア人たちが会社の経営権を主張して割って入ってきたことや、その後、MPS自体がグローバル競争に負け、シェアは減少し続けることになることを関係者は予測できませんでした。
2018年8月にはアーセナルがMPSとの契約を打ち切ることを宣言、その後10月17日にMPSは破産、精算手続きに入ることがイギリス最高法院から告げられました。
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投資した全額が回収不能となった光大グループが公安当局を動かした?
MPSの65%の株式を譲渡された浸鑫基金はこの案件についての投資回収は不可能となり、GPである暴風資本の支配者である冯鑫は、光大資本、そしてそのトップである光大証券に対して大損をさせたということになります。巨大証券企業を怒らせたことが今回の公安行政当局と繋がっているという見方もできます。
さて、暴風集団はインターネット総合企業でしたが、2018年から戦略的に業務の縮小を行ってきており、既に”暴風TV”というインターネットTVのみとなっています。今回の事件報道の影響もあって、暴風集団の株価は2019年7月26日には6.3元(約101円)となり、時価総額は最高400億元(約6,400億円)あったのが現在は20.8億元(約333億円)にまで縮小しています。
”楽視”型失敗の再現とも呼ばれている今回の案件。中国の機関投資家を怒らせるとただでは済まないということの一つの事例になるのではないでしょうか。