中国検索プラットフォーム最大手の百度(Baidu:バイドゥ)が上場来初となる営業赤字を計上し、上級執行役員が引責辞任することとになりました。李彦宏(Robbin Lee:ロビン・リー)自らが声明を発表した背景を探ります。

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上場来初の赤字で株価も10%下落

2019年5月17日に百度は同年3月31日付けとなる第1四半期の財務報告を行いました。その内訳を見ると

  • 売上高:241億元(前年比+15%)
  • 営業利益:−3.3億元(前年は67億元)

となっており、2005年の上場以来初めてとなる営業損失を計上することとなり、株価が10%近くも下落するという自体に陥っています。これに対し、百度は10億ドルに上る自社株買いの計画があることも発表しました。

財務報告と時を同じくして百度は、高級副総裁で検索カンパニーの総裁である向海龍の離職を発表。モバイルエコシステム事業を担当していた沈抖の高級副総裁昇格と同事業部の組織再編を発表しました。

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ナンバー2の事実上の解任

向海龍は百度における勤続年数14年のベテラン。2000年に上海華東師範大学のコンピューター系学部を卒業し、上海企浪網絡科技有限公司を創業、総経理として経歴をしていたところ2005年2月に百度に買収され、百度としての経歴をスタート。その後順調に出世し高級副総裁となり、百度エコシステムのコアとなるキャッシュインフローの中心に立った彼は、百度のナンバー2として知られていました。

5月10日には百度のエコシステム連盟としての大会で壇上に立ち、技術革新とインターネット革新は切っても来れない関係にあること、そのためにはエコシステムを構成する連盟企業とは協力して切磋琢磨をしていかねばならないことを熱弁していたばかりでした。

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「優秀なベテランは自ら退路を決めよ」という中国的なリーダーシップ思想

百度トップの李彦宏は百度が置かれている環境が非常に厳しいものであることを前提に、堅い意思で経営幹部の若返りの必要性を表明しており、経歴の長い幹部で優秀な人であるほど自らの進退と次の道の探索について考えてほしいとしています。これが、今回の上級経営陣の退陣の大きな背景にあると考えられます。

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百度のエコシステム化を推進する事業責任者が新たなナンバー2に

さて、この度新たにモバイルエコシステム事業の責任者に指名された沈抖は、2012年に百度に加入、検索、金融などの事業部を歴任し、2017年に高級副総裁に昇格、アプリやショートムービー、ニュース、ブラウザや知る人ぞ知るhao123なども含めたユーザーエコシステムについての責任者を任されていました。

李彦宏は百度のユーザーエコシステム化を戦略的に強く推進しており、その中核を担うモバイルエコシステム事業部の再編に伴うトップへの就任は、沈抖が百度における事実上のナンバー2となったことを意味しています。今後、彼がAI化の推進も含めて百度の戦略的事業転換を行っていくことになります。

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テンセントやアリババとのモバイルエコシステム覇権の争奪戦

百度はいわば中国のGoogle。ユーザーの検索時のキーワードや位置情報から情報や予約・購買等の利便をトータルで提供しています。中国に閉じてこのエコシステムを強化してきた結果として、ローカルで閉じて考えればGoogleよりも便利であると言っても過言ではないでしょう。

一方で、微信(Wechat:ウィーチャット)を要する腾讯(Tencent:テンセント)や支付宝(Alipay:アリペイ)を要する阿里巴巴(Alibaba:アリババ)などがアプリに閉じることでブラウザを用いた”検索いらず”のエコシステムを提供し、ショートムービーやショッピングなどのキラーコンテンツで囲い込みを強化していく中、百度を取り巻く競争環境は厳しいものとなってきています。

こういった事情が今回の人事と事業再編にあらわれているのではないかと考えることができます。いずれにせよ、「優秀なベテランこそ自ら退路を考えるべき」という教訓が実行されるということは非常に教訓的であり、日本企業が中国で戦う上でも抑えておくべきポイントではないかと思われます。

アリババも同じような人事をかつて行っています。”老兵は去るべし!中国アリババ経営層が大幅若返り、驚きの平均年齢”も合わせてご覧ください。

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