2019年3月20日の夜に味千拉麺(中国)の2018年における業績が発表されました。売上は23.8億元で前年比1.9%増、粗利が17.9億元(粗利率75%)で同じく2.2%増と、増収増益となりました。中国経験のある日本人には「不○い」と評判の味千ラーメン、一見好調に見えますが、実は”豚骨ゲート事件”というどん底からの回復途上です。詳しく見ていきましょう。

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前期の純損失から大きくリカバリーした中国味千ラーメン

公式発表によると親会社株主に帰属する当期純利益は5.5億元で、2017年の4.9億元の損失から大きくリカバリーしました。また、売上高に関しては2015年以来下がり続けていましたが2018年に反転をしたということになります。

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徹底した合理化施策が奏功

粗利率が改善した理由としては、全ての原料について本部での集中購買としたこと、購買先についても厳選したことなどが挙げられています。また販管費の側面についても、全店舗でのシステム化を推進し、店舗数が8.8%増加したにもかかわらず、人件費は3%減少しています。最近、中国に仕事やプライベートで訪問された方であれば気づいた方も少なくないと思いますが、昨今の中国の小売店舗は飲食店も含めて以前よりも格段に人が少なくなっています。IT化が進んでいる証拠です。

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最初の失敗となった濃縮スープ事件

味千ラーメンは1968年に熊本で生まれ、1996年に味千(中国)控股有限公司の創業者である潘慰が香港での事業を開始、その後、香港、マカオ、そして大陸における永久的な営業権を熊本の味千から取得しました。2007年には香港市場に上場、大陸に拠点を構える飲食店系業態の初めての香港上場でした。創業者の潘慰は2008年から4年連続で飲食業界におけるナンバーワンの富豪の称号を手にし、名実ともに「ラーメン女王」と呼ばれるに至りました。

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2010年には既に500店舗を超えていた飛ぶ鳥を落とす勢いの味千ラーメンでしたが、その後に突然失速、減収減益トレンドに入ります。2011年7月には、味千ラーメンが原料となる豚骨からスープを製造していることを謳っていた広告に対して司法の手が入りました。味千(中国)は実際にはスープ用の濃縮液を沸騰したお湯に入れることでスープを製造していたのです。これは、”豚骨スープゲート事件(ウォーターゲート事件へのなぞらえ)”と呼ばれ、全国的な問題となりました。

これ以降、味千ラーメンはスープ濃縮液を使用することを停止し、原価・人件費が上昇した結果、2012年の営業利益は56ポイントも落ちることになりました。それまでがどれだけ暴利だったかということも分かりますね。

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やみくもな多角化と投資の失敗

その後、味千(中国)は多角化経営に走ります。ラーメンについても、味千ブランドだけでなく、喜多蔵や麻布十番(!)など高級ブランドもラインナップ。更に、焼き肉や日本料理、カフェなどの業態にも手を出していきます。しかし、この戦略がその後の業績の改善に寄与したという報告は出されていません。

2015年に入り味千(中国)は百度外売(百度の出前プラットフォームサービス)に出資、2016年には含み益が出ましたが、その後は百度外売がライバルに対して劣勢となる中で株価も下落、2017年には餓了么に救済的な買収をされることとなり、味千(中国)が保有していた有価証券の価値も急落しました。

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中国人のものづくりについての姿勢の差が”薄める”発想を生み出す

市場の成長局面における店舗拡大までは良かったのですが、スープ偽装、業態多角化、金融投資などで失敗を重ねてきたということです。熊本と味千は、当初中国に豚骨スープを提供していたのですが、スープ偽装の事件に見られるように途中から中国側の意向でそれも取りやめたということでしょう。ラーメンはスープが肝ですが、そこすら捨ててしまったというところに経営の傲慢と中国的な”薄めて同じ値段で売る”発想を感じます。

2018年12月31日時点で味千ラーメンは全国に766店舗、2017年の704店舗から増加しました。新規店舗は北京市、江蘇省、浙江省、上海市などで、今までよりも小型な店舗を出店しているとのことです。昨今の、中国の小売店舗の小型化のトレンドはここにも見られます。

2018年に入り増収増益局面に再び入った味千(中国)、成熟し、多様化していく中国の消費者が求める商品を今後も提供することができるのか、注目です。

中国では現在”新飲食”と呼ばれる業態が急成長してきています。記事をこちらにまとめているのでご覧ください。

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