中国テンセントの30%を超える”爆”利益率を叩きだしたアリババの2014年度決算

1.表紙

2015年5月7日にアリババグループの2015年3月期の決算報告が発表されました。テンセントグループについての2014年決算報告については、下記のリンクで紹介しましたので、今回はジャック・マー軍団の業績について紹介します。

当期利益率30%!しかし驚くべきは決算よりも潜在的成長力 テンセント2014年財務報告

また、最近になってアリババグループは張勇(ダニエル・チャン)にCEOを交代し、大幅な若返りを図りましたが、それについても下記のリンクにて紹介しています。

老兵は去るべし!アリババ経営層が大幅若返り、驚きの平均年齢

アリババグループの収益の根幹はECです。ECサイトの実力を表すGMV(Gross Merchandise Volume)の四半期ベースでの推移を見てみましょう。オレンジが天猫(Tmall)、薄い茶色が淘宝網(タオバオ)の総取扱額です。

2.GMV

GMVはトップライン(売上)を支えますから、まずは伸び率に注目すると。当初は65%あった伸び率が徐々に鈍化していって直近では40%まで落ちてきています。Amazonは既にRetail事業からMarket Place事業に軸足が移っていますが、そのMarket Place事業のGMV成長率は直近で33%です。まあ妥当な線かなと。金額はQ4で6,000億元(約1.2兆円)、AmazonのMarket Place事業の2014年Q4が327億ドル(約3.9兆円)であることを考えると世界一ではありません。ただ、中国国内でこれだけ稼いでいることを考えると、言い換えればポテンシャルがまだまだあるということだと考えて良いと思います。

3.MAU

次にインターネットプラットフォーム事業ではこちらも重要となる指標であるMAU(Monthly Active User)について触れたグラフが上記(右)です。直近で2.9億MAUです。LINEの2015年3月末時点でのMAUが約2.1億人と言われていますが、これはLINEを褒めてあげた方が良さそうです。ちなみに、テンセントの微信(wechat)のMAUは2014年3Q時点で4.7億人と言われていますし、AppleのMAUが約8億人でもありますし、グローバルのプラットフォーマーの競争はもはや億単位となっていることが分かります。アリババのMAUも順調な伸びを見せています。

4.モバイル貢献

次にGMVに占めるモバイルからのトラフィックによる貢献の状況です。現在40%となっており貢献度自体は伸びています。ただ、脚元でモバイルGMVがやや減速傾向にも関わらず伸びていることを考えると、2015年1月〜3月についてはWebトラフィックによるGMVが相当量減ったということが伺えます。総GMV、モバイルGMVが2015年Q1でどうなるのか、今後の潮目を占うのに重要な指標となりそうです。

5.財務状況

では、財務ハイライト。売上高は762億元(約1兆5千億円)でテンセントとほぼ同額です。EBITDAマージンが驚異の53%、当期利益を示すNet Income率も45.9%です。テンセントの直近の財務報告によると当期利益率は30.2%ですから、まあある意味天文学的な数字です。

6.セグメント別売上

次にセグメント別売上を見てみます(右上)。75%が中国国内でのEC事業、すなわち天猫(Tmall)と淘宝網(タオバオ)からの収入です。残りは、中国、越境でのBtoC、BtoBのECサイト事業が占めています。

7.EC

さて、彼らの2105年のハイライトとして出てきているテーマのうち一つ目がCross Border EC、いわゆる越境ECです。世界各地の流通・小売と組むことによってプラットフォームとしての価値を上げていくことが狙いと思われますが、ここで上げられている企業は幾分小粒かなという印象も持ちます。日本からは広島のスーパーを営む株式会社フレスタがピックアップされていますね。

8.MA

二つ目は戦略的M&Aです。モバイルでは”魅族(Meizu)”というスマートフォンメーカーを買収。中国のプラットフォーマーとして激烈なレッドオーシャンとなっているO2Oでは快適打車を買収し、ライバルであるテンセント傘下の滴滴打車との合併話になっていることは記憶に新しい話です。また、エンタメ業界にも積極的に手を出していて、H.BROTHERSや光銭伝媒というメディアの両巨頭に資本参加、更にYouku(優酷)やTudou(土豆)など動画コンテンツサイトも保有しています。一見、野放図な買収、資本参加にように見えますが・・・、

9.クラウド

彼らの狙いを支えるエンジンとしてクラウドコンピューティングに力を入れています。約3億のMAUをベースに、O2Oやエンタメコンテンツを取り揃えていく中で、中心に位置するのがこの技術になるのは間違いないと思われます。YunOSなどモバイル向けのOS開発も行っており、かつ魅族を手に入れたことでスマートフォン端末も扱うことができます。端末からサービスまでの一気通貫したバリューチェーンの中心にクラウドを置き、レコメンデーションの精度をどんどん上げていくことで、ユーザーとのエンゲージメントを上げていくという、正に王道を進んでいくのがアリババの未来形であると考えて良いでしょう。

直近では顔認証によるモバイル決済を発表したアリババグループですが、互いに約1.5兆円規模の会社で、目指す未来は同じとなると見逃せない戦いになっていくと思いますが、個人的にはモバイルに焦点を当てて既存の成功もかなぐり捨ててシェアを取りに来たテンセントに勢いを感じます。モバイルによる貢献が40%のアリババが、この部分についてO2O、特にペイメントの部分についてどれだけテンセントを脅かす存在となれるかどうか、新CEOの張勇(ダニエル・ザング)にとっても、既存のECの利益率が良い中で難しい舵取りを迫られることになりそうです。

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