中国が提唱する”海上シルクロード構想”を日本はどう捉えるべきか?

中国政府、また新しい造語を出してきました”一帯一路”戦略です。これは中国国務院が、国家発展改革委員会、外交部、商務部の3部門に作成する権利を与えて連名で2015年3月28日に発表された「推动共建丝绸之路经济带和21世纪海上丝绸之路的愿景与行动(シルクロードと21世紀の海上シルクロードの共同建設推進に関する背景と行動)」と称された綱領・基本原則としての色合いを持つ文献です。

8章建てになっており、そのタイトルは「一、時代背景:二、共同建設の原則・・・」と説明するだけで眠くなるものになっているので、いくつかの記事や参考文献から内容を簡単に紐解こうと思います。

基本的な考え方としては、この”一帯一路”戦略により中国と周辺国家の国民の所得を増加させるということだけでなく、就業や生活レベルの向上ということが謳われています。分野としては旅行、ショッピング、教育、文化、医療などの領域を得出ししています。ふーむ・・・。

シルクロード経済圏の範囲

そもそも、周辺国家の定義、シルクロード経済や21世紀海上シルクロードとはどの範囲を指すのでしょうか?

シルクロード経済圏(上)、21世紀海上シルクロード(下)

シルクロード経済圏(上)、21世紀海上シルクロード(下)

この地図上にアメリカが存在しないというところがまず第一の特徴です。21世紀の大国は事実上アメリカと中国のみですからこのような形になることも理解できます。上がシルクロード経済圏。歴史上のシルクロードにおける中国の交易の中心である西北地区に加えて、西南地区が加わっている形です。中国大陸の中では発展が遅れてきた地区で、言い換えればこれから発展が著しい地区でもあります。

下が21世紀海上シルクロード。この概念には日本も含まれています。この図を見ると元朝を思い出す方もいらっしゃるかもしれませんが、中国は経済的な協調関係を構築することができる周辺国家の定義としてここまで広い範囲を考えているということが分かります。

経済を発展・推進する分野

”一帯一路”戦略ではターゲット領域を定めています。

  • 旅行:旅行業界の拡大・進化を掲げています。商務部の国際貿易経済合作研究員の国際市場部副主任である白明氏曰く、今後、ビザの手続きの簡略化、もしくはノービザでの渡航を拡大しつつ、海外との交通インフラを整備していくとのこと。ヨーロッパへの鉄道ルートも不可能ではないとしています。
  • ショッピング:周辺国家と共同で自由貿易区を建設し、新しい貿易方式を構築することが謳われています。「海淘」の範囲が促進され、「越境EC」が中心となることは昨今の政策的背景を考えると間違いないと思います。
  • 教育・文化:中国は周辺国家に対して国費留学補助となる奨学金や国際文化活動などに対しての資金援助を毎年1万件提供することが謳われています。同時に、中国への留学生を積極的に増やしていくそうです。

何度も言いますがポイントは「越境EC」です。また国家レベルでの自由貿易区も注目すべきワードです。

地区別役割

今回、”一帯一路”戦略の中で中心的役割を果たす18省(と15港湾)が定義されましたが、その位置づけを分析してみましょう。

一帯一路

西北・東北地区:

西北地区はヨーロッパへのルートで、事実上のシルクロードの根幹。東北地区はロシアなど北部との窓口の役割を果たすとのことです。ポイントは鉄道輸送、今後積極的に高速鉄道路線を建築することが考えられます。

西南地区:

ASEAN地区との窓口。貿易だけでなく、旅行産業について周辺国家との関係構築を狙います。

沿岸・香港・マカオ・台湾地区

言わずもがなの、港湾を中心とした周辺国家との窓口。今後はショッピング面で越境ECの拠点となっていくと同時に、国家級の自由貿易区の建設が積極的に行われる可能性が高いです。

内陸地区:

中央アジア・ヨーロッパとの窓口としての発展が期待されます。中央アジアは今後伸びてくる地域で、中国とのシナジーは非常に大きいはずです。

新疆ウィグル自治区の女の子、シルクロードは物だけでなく血が交わる場所。美しい女性を輩出することで有名です

新疆ウィグル自治区の女の子、シルクロードは物だけでなく血が交わる場所。美しい女性を輩出することで有名です

編集後記

習近平政権は3年目に入り、「打黒(腐敗活動打倒)」の成果も上々、恐らく今年から来年にかけては「外」に向かう活動が活発すると考えられていますが、経済面についての骨太の戦略が出されたという位置づけです。外交についてはまた別途周辺国家に圧力がかかってくることは間違いありません。この動きは考え方次第では日本企業にとって大きなチャンスになります

まず外せないのは「越境EC」です。今年は本当にこのビジネスが爆発すると思います。今年の春節の中国人による「爆買い」は始まりに過ぎません。現在は極めて注目度が低く、アングラ、グレー領域で行われているビジネスですが、企業をベースにしっかりと立ち上がってくるはずです。ポイントは、日本にいる中国人と、中国を経験した日本人とのコラボレーションです。

他は旅行、教育・文化、医療ですね。日本にはこのあたりの資源沢山あります。もちろん日本の教育レベルは国際エリートから見れば非常に低いものがありますが、分野を絞る、もしくは概念を広げると面白いアイデアが出せるはずです。ここは弊社でも取り組んでいく領域です。積極的に仕掛けようと思っています。

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