中国の裁判は恣意性が強く、言い渡された死刑については速やかに執行されるという認識があるかと思いますが、そうとも言えない事実があることについてもここで紹介しておきます。

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7年前に一家4人が毒殺される事件が発生

2011年に山東省の臨沂市というところで一家4人が毒殺されるという事件がありました。原因は殺鼠剤。事件が発覚した2011年7月5日、殺された一家の夫妻、そして当時15歳の長女の3人が食べた夕食の水餃子の中に混ぜられていました。

そして、そこから半年さかのぼった1月に当時8歳の長男が同様な症状で死亡していたことが分かりました。実は2010年8月から上記の2案件を含み、5回に渡って同様の中毒症状が発生しており、家族は都度病院に運び込まれていました。

病院はその中毒の原因が薬物であることを突き止めることはできず、治療をするだけで家族を返していました。その結果、最終的には一家4人が全て殺鼠剤による中毒で死亡することになったのです。

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隣家の妻が逮捕され、2年後に死刑判決

警察が調べを進めた結果、この一家の隣に住む任艶紅という女性が逮捕されました。ウソ発見器にかけられて事件との関係性が認められたとも逮捕の理由の一つとなっていたとのことです。

逮捕された彼女は2013年6月4日に臨沂市中級裁判所の法定にて、隣家に対する5回の薬物混入の結果4人を死亡させたことにより死刑判決と2年後の執行を言い渡されました。

任艶紅は、殺された一家の夫である李忠山にレイプされ、その事実により脅迫をされその後も複数回関係を強要され、たまりかねて家族もろとも毒殺したと自白したためです。

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控訴後も死刑判決、しかし地方高裁は被告の訴えを受け、捜査のやり直しを決定

しかし、任艶紅は供述中に殴られることも含めて自白を強要されたということで山東省高等裁判所に控訴した結果認められ、2015年10月27日に再審が開始されました。そして2017年7月に再び死刑判決と2年後の執行が言い渡されました。

そして、今年に入り1月2日に任艶紅とその弁護人は、山東省高等裁判所に証拠不十分を理由に、裁判そのもののやり直しを求めた結果、1月8日に当裁判所もその内容を認め、再び臨沂市中級裁判所に裁判は差し戻されたのです。

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決定的な証拠が不足する中での違法な取り調べを司法が認めたかたち

実は、現場からは指紋や毛髪、薬物投与の痕跡は発見されておらず、かつ5回の投薬事件の内2回について任艶紅のアリバイが実証されているのです。その上で、任艶紅によれば、警察・検察側からの暴力による自白の強要があったとされています。証拠に使われたのは村民41人の供述と、任艶紅のウソ発見器の結果のみということになります。

中国の司法が「疑わしきは罰せず」に基づいたかたちですが、事件から既に7年が経過しており、かつ辺境の人口が少ない農村が現場とあって、今後警察・検察側がどのように証拠を積み上げていくのか、非常に厳しい状況であると見られています。

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