全人代への提案は”インターネット+”と”中国大脳” 人民解放軍の技術をも活用か?

BAT+X(Baidu, Alibaba, Tencent + Xaiomi)の全人代期間中の動きを記事で追ってみました。それぞれ、企業の思惑に合わせた行動をしています。


小米:雷軍(レイジュン)

第12期全人代第3回会議の予備会議の開催前、雷軍(レイジュン)は広東省代表団と一緒に到着。人民大会堂前の広場にて、ネット上で流行になっている小米(シャオミ)の「自撮り棒」を取り出して撮影、すぐに回りは外国メディアに取り囲まれ、これこそが中国のスマートフォン業界における風雲児であると騒ぎ立てた。

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最近、小米がインドにおいて権利侵害で起訴された案件で追い掛け回されている中で、雷軍(レイジュン)は、企業が「成長の悩み」に直面することがあると説明していた。彼は、「この案件は小米(シャオミ)の成長過程において必ず通らなければならない道です」と言う。彼はこのような海外における起訴について問題解決を行うことは、ひとつの競争手段でもあり、最終的には企業発展に繋がる「必要なプロセス」であるの認識を示す。

今回の全人代におけるホットトピックは「中国大陸メーカーの転進」だ。彼は、「モバイルインターネットにおける千載一遇のチャンスを必ず利用するべきです」と言う。彼の認識では、製造業のレベルアップは「業界を超えた融合」に該当し、「モバイルインターネットを上手く活用し、業界全体の転進を図ることが重要で、核心は、品質を上げ、グローバル展開を行うことがメガトレンドであり、最終的にはグローバルブランドを構築することが必要です」。

「小米(シャオミ)」の投資先が業界を超えて拡張される問題について、外部の関心は非常に高い。小米(シャオミ)は既に不動産と内装業界に参入したとの憶測について、彼は明確に説明した。「小米(シャオミ)が注視する核心領域はスマート領域、スマートフォン、テレビおよびセットトップボックス、ルーター」の3大領域だ。

2014年の第二期の統計数値によると、中国のスマホ市場における同期の出荷量の中で、中国ブランドの小米(シャオミ)の出荷量は、長らく首位の座を譲らなかったサムソンを超えた。これは「メイドインチャイナ」における一つの新しい風であると見られている。この話題によって、全人代における新産業領域は代表委員から注目を集めている。

出所:新華社

テンセント:馬化腾(ポニー・マー)

2015年3月4日、全人代代表であるテンセント董事会主席兼CEOの馬化腾(ポニー・マー)は北京で記者会見を開いた。インターネットは経済の非対称性を打ち破り、トランザクションコストを下げ、専門分化を促進し、労働生産性を引き上げ、 転身・レベルアップのための重要な機会を提供する、と述べた。ポニー・マーは今年「”インターネット+”をドライバーとした我が国の経済社会のイノベーションについての建議」を持ち込んだ。

「わんぱくなおこ」さんによるポニー・マー(テンセント微博のAndroidアプリの誤植が元ネタ)

「わんぱくなおこ」さんによるポニー・マー(テンセント微博のAndroidアプリの誤植が元ネタ)

ポニー・マーは、「インターネット+」をドライバーとすることによって、産業のイノベーションを奨励し、産業の垣根を超えた融合を促進し、社会民生に恵をもたらし、我が国経済と社会の発展をプッシュすることを求めている。事実上、「インターネット+」は、第三次産業のみに適用されるのではなく、金融、交通、医療、教育などに展開され、更に第一次、第二次産業へ広がっていくとしている。

ポニー・マーは、インターネット企業が顧客のニーズを満足させるために新商品を出し続ける以外に、プラットフォームをAPIを開放することにより、エコシステムを共にする産業イノベーションを促進することを考えている。テンセント、アリババ、百度などのプラットフォーム型インターネット企業は既にある一定規模の産業エコシステムを形勢している。

ポニー・マーは、国家のトップからボトムまで「インターネット+」型の発展戦略を策定し、「インターネット+」の健全な発展についての指導意見を迅速に公布、インターネットと各産業の融合を促進し、技術、標準、政策など多方面でインターネットと伝統産業の結合を実現、インターネットと関連インフラの建設を強化することを提案している。

出所:証券時報

百度:李彦宏(ロビン・リー)

「米国のアポロ計画は10年の歳月、3万社以上の企業と30万人の人員、255億ドルを費やしました。表面上は、月面に着陸するという計画は実質的には何の作用をもたらすことはありませんでした。しかし、インテルなどのシリコンバレー企業は全てこのプロジェクトによって恩恵を受けることになりました。多くのイノベーションを生み出すことになったのです。」全国政協委員である、百度の董事長である李彦宏は今年の全人代において「中国大脳」を提案。人工知能技術の発展とイノベーションを行うためのインフラ設置を呼びかけている。

李彦宏

「中国大脳」は人工知能のインフラ施設の開発を行い、大規模なサーバーを集中して建設、科学技術研究機構、民間企業、そして国有企業や、起業家など各方面に開放し、このプラットフォーム上で音声認識、視覚認識、自然言語解析、ロボットなど様々なことをトライさせるためのものだ、とロビン・リーは語る。

「このプロジェクトについて、私は国務院発展改革委員会のような伝統的な政府部門が積極的に関与すること以外に、中国の人民解放軍が参加することも希望しています。」ロビン・リーは、軍隊は技術イノベーションにおいて非常に大きな作用があり、世界の歴史を振り返ると、多くのイノベーションが戦争時に飛躍的に発展していることを指摘します。

「これは国家の力を全て投入すべき一大プロジェクトです。人工知能に関する大プロジェクトであり、かなり大きなレベルでのイノベーションを呼び起こす必要があります」とロビン・リーは言う。このインフラ施設、百度には建設する能力は無い。百度は現在「百度大脳」プロジェクトを行っており、そこでは数万台のサーバーを使用しているものの、「中国大脳」のレベルに達するためには、数十万台のサーバー技術フレームが必要だ。このように、研究者が更に大規模な実験を行いたいと希望する時、国家が提供するプラットフォーム上で実施することで、低コストで更に多くのイノベーションを行うことができる。

ロビン・リーは、百度が人工知能方面において比較的先行的でかつ実験的な作業を実施していると伝える。例えば無人運転自動車の基礎技術は視覚認識であり、周囲にどのような障害物があるのかを正確に把握し、前方に車がなく、信号もなく、人もいなければ、無人自動車は自然に走りだすといった具合だ。他に、自動翻訳。ロビン・リーは今後5年で必ず解決することはできないと考えている。「自然言語認識についての要求技術レベルは非常に高く、現在の翻訳アプリは必要に応じで類推をするものの、普段の生活においてコミュニケーションを促進するためには、更にまだ多くの障害が存在します。もっと自然な形でのコミュニケーションに使うには、完全に言語の垣根を取り払った翻訳機能が必要で、その道程はかなり長いと言わざるをえないでしょう。」

出所:北京晩報

アリババ:馬雲(ジャック・マー)

2015年3月3日の午後、台湾大学総合体育館の1階は満席。15時15分、台湾大学、台湾師範大学、台湾科学大学の3校の校長による紹介の下、アリババグループ董事局主席である馬雲(ジャック・マー)による「夢が起業を成功させる」と題した講演が開始された。

ジャック・マーは台湾の学生たちに自らの15年の起業経験をシェアし、いつも言い続けている3つの要素「楽観」、「自省」、「堅持(あきらめない)」を中心に話をした。その後のQ&Aでは台湾の学生の熱気は最高潮に達し、30分だけにも関わらず300もの質問がSMSを通じて投じられた。元々1時間の交流であったものの時間は延長され、歓声は尽きなかった。

この講演の入場券は正に「秒殺」、このために準備した登録システムは麻痺状態に陥り、その時間も含めて4時間で1000名分の座席は一気に埋まった。台湾の若者にとって芸能人のライブよりも爆発力があった。またステージの下には、郭台銘(テリー・ゴウ:Foxconnの部分なオーナー)など台湾の著名な起業家の姿もあった

講演の前日に、アリババは台湾において創業ファンドを設立。台湾の若者と若い起業家たちに起業意欲を発揮させることを目的にしており、総額20億元(約400億円)で非営利性質のファンドである。

馬雲

以下は発言の要約:

①起業について:

1. アリババの起業は批判され罵倒され続けた道だった。罵声がなければむしろ緊張するくらい。世界の変化はとても早く、ますます多様化が進んでいる。いかなる観点についても自分の頭で判断する。我々は異なる観点で未来を描き、待ち望むことができる。

2. アリババはラッキーだった。我々が払ってきた代償と努力は皆さんの増槽を越える。見えないところに多くの涙が流れ、多くの挫折があった。郭董(郭台銘)さんがいらっしゃるが、我々は皆この道を通ってきた。起業時、企業が大きくなるにつれてこのような苦労はなくなると思っていた。お金持ちは皆ビーチで高級タバコを吸うものだと思っていた。こんなに疲れるものだと、プレッシャーが大きいものとは思っていなかった。毎回失敗をするたびに明日店じまいをしようと思っていた。

3. 他の人の意見はあまり聞かずに自分で考える。同じ道を歩む人を探す。5年、10年とやり続けると自ら決心する。アリババの今日はこのようにして出来ている。現在の全ての起業家が歩む道であり、基本原則だ。

②起業に役立ったこと:

1. 英語を学ぶ。私の英語は勉強して身についたものではない。会話をして身についたものだ。私の家族には英語が分かる人はいない。毎日、朝に杭州のホテルのドアのところへ行き、旅行にやってきた外人を見つけ、無料でツアーガイドをすることを9年間続けた

この9年間で私が感じたメリットは語学だけではない。異なるものごとを理解するということだ。西方の一連の考え方や文化を理解することによって視野が広がった。英語を学ぶことで語学を学ぶのではなく、文化やその国家がどのようにして発展してきたのかを学ぶのだ。今まで、世界各地に行ってきたが、各地の背景、原点には何があるのか明確に理解することができる。もし通訳を使って交流をしているのであれば、こういったことを理解することは難しいだろう。

2. 教師になる。教師の道に進み学生会の主席となり、学生連合の主席ともなった時、他人を理解すること、組織活動について学んだ。私が大学の教科書を配る際に、当時の校長から、1人で全クラスに教科書を配るのであれば5年あっても足りないだろうと言われた。その後、学校での日々はとてもつらかった。私の学歴は最低で、給料も低かった。深センではある人から1,200元、海南島では3,600元を給料として出しても良いという人がいた。しかし、自分で認めたことだ。行かないと言い続け、6年間教鞭を振るった。

この6年間、愚直にクラス担任を務めた経歴は私を変えることになった。私に大きな利益を残した。教師の共通認識は学生たちが成長し、自らを超越し、ダメな学生であっても飛躍してもらい、間違ったことをしてほしくはないというものだった。故に、私は今まで自らが教師に似ていると感じている。毎日会社の中で社員に自分を超えて欲しい、成果を出して欲しい、皆成功して欲しいと考えている。

3. 失敗の経験。失敗は正常なこと。人生歳代の財産は自らが以前に失敗した経験だ。私は眉をひそめるようなことを沢山やってきた。皆さんは私が数十の企業に就職で拒絶されたことを知っているだろう。この生涯で就職に一度も成功したことがない。24人がケンタッキーの面接に行って、私だけが採用されなかった。ちなみに、社長は台湾人だった。両親も含めて、誰も私が成功すると思っていなかった。妻に聞いたことがある。私に大富豪になってほしいか、もしくは人を尊重するようになってほしいかと。彼女は、大富豪?どうやってなれるのか?当然、人を尊重することができる人になってほしいと。

言葉は視野を広げ、学生幹部をやり先生になったことで心と組織能力を鍛え、失敗し続けたことが忍耐力を養った。

③起業において重要な3点:

 1. 楽観的であること。皆さんが認めるかどうかに関わらず、本質的には大部分の人は楽観的だ。私は以前自分がとても楽観的であるとは思えなかったが、小さいころから失敗し続けてきたことによって慣れてしまった。失敗するということは今から考えるととても良いことだ。左手で右手を温めるということを学んだ。明日は今日よりは必ず良くなるということを信じることができた。1999年当時、中国企業がECを取り入れるということは不可能に思えた。当時10社の顧客を訪問し、10社全てに断られた。しかし、その後は一つも断られることがなくなった。とても嬉しかった。本当に嬉しかった。

10年後、優秀な企業がますます増えてきた。異なるレベルには異なる痛みがある。以前、誰もかまってくれなかったとしたら、それはとても辛いことだ。一方で、現在あなたに関心を示してくれるのは、あなたに面倒なことを持ち込んでくる人だ。

2. 自らの問題を検査する。企業を作るというのは戦争をするようなものだ。生きていれば成功だ。他人の失敗を言い続ける人は生きて帰ってくることはできない。他人がどのような失敗をしたかを分析することに時間を使い、自らの問題として自らを検査することが肝要だ。

3. あきらめないという点で他人を超越する。10数年、毎晩思うことがあった。もうやめよう、本当につまらない。そして朝起きると続けていた。競争を恐れるなら起業するのはやめなさい。人に罵られるのが怖いなら起業するのはやめなさい。夢と理想の間にある差異は何か?パイロットになりたい、社長になりたい、教授になりたい、これは夢。理想とは何か?チームであるということだ。チームが共通の認識と相互サポートを行い、理想を現実に変えるということだ。

④起業のチャンス:

1. 今よりも良い時代はない。今以上のチャンスに巡りあったことがないからだ。どの世代の人間にもその世代特有の責任がありチャンスがある。THIS IS OUR TIMEということだ。第一次、第二次産業革命は人の体力とエネルギーを解放した。更に我々は今第一次技術革命の最中、大脳の解放期にある。IT時代からDT(Digital Tech)時代の発展期だ。多くの若者は現実を受け入れないが、ならば皆さんがより良きイノベーションを起こせば良いのだ。

2. 未来30年、変革は皆さんの想像を遥かに越えるだろう。ある人はスーパーマーケットは立ちゆかなくなり、全てが淘宝網に頼ることになると言う。しかし、淘宝網だって立ちゆかなくなっている可能性があることに気づく人はいない。消費者のニーズはどんどん個性化しているからだ。これが社会の発展だ。

3. イノベーションは無尽蔵。しかし、人々が既に良いと思っていることはチャンスとは呼ばない。ある大学生が淘宝網で夏の蚊の標本を販売した。とても良く売れた。彼は、夏に授業内容を復讐する際に蚊に刺された。それをイヤリングにして彼女にプレゼントした結果、別の人が全く同じようなものが欲しいと言ってきたという。(この意味不明なニーズに)彼はとても苦悩していた。数年前、アリババで売れ行きの良い黒人が普段良く使うかつらがあった。ある人がそれを買い、つけたままプールで泳いだ結果、ゴムが緩くなった。彼女の不満を解決することを目的として、世界初の水泳用かつらが誕生することになった。

出所:新浪財経


編集後記:

攻撃的な動きをしているのは、テンセントのポニー・マーの「インターネット+」と、百度のロビン・リーの「中国大脳」の2つのテーマです。前者には業界を超えたコミュニケーション、プロモーション、決裁プラットフォームとしてのwechatがあり、後者には百度を進化させるツールとしてのビッグデータと人工知能という考え方が見えます。小米(シャオミ)のレイジュンは特に目立った提案や建議などを出している訳ではなく、ポニー・マーと同様、業界を超えた形でのイノベーションの促進を求め、その背景にはUXを司る端末とMIUI(シャオミのUI)の存在が見えます。マイペースなのはアリババのジャック・マーで、台湾人に対して起業について熱く語っています。BAT+Xの4企業の中では唯一全人代に参加していないジャック・マーの行動や発言には普遍性があり、哲学的に深いところがあります。この辺りが秀でた魅力であると感じます。

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