イケアが方針転換、中国を含めた30カ国で家具リースサービスの本格導入へ
イケアが2020年からグローバル30カ国において家具のリースサービスを開始することを発表しました。30カ国の中には中国はもちろん、日本も含まれています。家具リース以外にも、ビジネスモデルの転換を企図しているイケアについて触れてみます。
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イケアの営業利益は41%も下落
イケアの2018年財務報告によると売上高が前年度比で5%下降の370億ユーロで更に営業利益は14.7億ユーロとなり、なんと41%の下落、大幅な減収減益となりました。
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2010年より中国を含めた世界30都市で家具リースサービスを開始
2019年4月3日、イケアはドイツ西部にある小都市カールストにある傘下店舗のキャンペーン活動の中で、2020年に世界30都市において家具リースサービスを開始することを発表しました。中国、日本、カナダ、シンガポール、フランス、ドイツ等、イケアブランドを保有するIngkaグループが直営店舗を保有・運営する都市が対象になり、当初はソファとテーブルからサービスを提供するとのことです。
実は2019年2月にスウェーデンでテスト的に導入されたことを皮切りに、2019年4月に母国スウェーデン、スイス、オランダ、ポーランドの4カ国において家具のリースサービスを開始しています。
オランダでは現地の住宅・不動産協会と協業してサービス展開をしており、月額30億ユーロ規模の家具資産をリース事業として回しているそうです。ソファとテーブルだけでなく、椅子やベッド、本棚なども提供、目下の主要顧客は学生だそうです。
IngkaグループのCEOであるJesper Brodinによると、現在世界中で多くの生活者が少なくない引っ越しを行っていることを考えると、引っ越しの度に新しい家具を取り揃えることには合理性があるとは思えない中で、リース事業を試行錯誤しながら展開することを考えた、とのことです。
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人が都市間を、資産が人の間を流動する現代の中国に適合したサービス
中国では一軒家(いわゆる”別荘”)の建築・販売・購入は規制されており、基本的に集合住宅を購入することになりますが、買うのはあくまでも躯体(スケルトン)で、内装(インフィル)は購入者自らが業者を選定して行います。一体型販売はまだごく少数です。住宅購入時に立派な家具を揃えることも中国人にとっての面子(メンツ)です。
一方で、中国人は商売人であり投資家の側面も持っています。住宅を購入した後に転売したり、第三者に貸し出すことも少なくありません。その際に、家具ごと転売したり、貸したりします。家具も重要な投資資産であると言えます。
上記の前提で考えると、中国人は家具をみだりに買い替えたりするニーズが多いとは考えにくいことも事実です。しかし、一方で昨今の社会状況の変化の中、引っ越し等が増えていることも事実です。内陸部地方都市の若者が沿岸部中心都市に引っ越して複数人で住居を借りることもあります。そうした場合に、家主が家具を備え付けているケースもありますが、場合によっては増設したり変更したりするケースもあるかもしれません。また、家主自体が既存の古くなった家具を放出し、今の時代にあった家具を備え付けることによって借り主に対して価値をつけたいと思うこともあるでしょう。イケアの狙いはそのような部分にあるのではないでしょうか。
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イケアは他にも、EC市場への積極的な取り組みや、小規模店舗の展開など、新たな取組方針を戦略として掲げているイケア、足下の業績がおぼつかない中での大きめな方向転換の結果は吉と出るか凶と出るか、今後の動向を見守っていきたいと思います。
中国人の生活様式・社会の様態の変化についてはこちらをご覧ください。
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