中国企業に対して日本で語られていることのギャップ

日本で報道されている中国企業の印象は非常に偏っている

中国企業に関する記事はここ2年くらいで非常に増えました。オフラインで中国に対するネガティブな記事で販売数を稼ぐやり方は一般的でした。また、それは一部の嫌中に属する読者の溜飲を下げる特殊な役割であることを一般の方も理解していたと思います。

一方で、オンラインでは中国企業に関する記事のポストが非常に増えた印象があります。百度(Baidu, バイドゥ)、阿里巴巴(Alibaba, アリババ)や腾讯(Tencent, テンセント)はBATと称され、日本のメディアでもその最新動向が中国のエッジ・トレンドとして普通に紹介されています。

一方で、日本に対して、M&Aや資本業務提携も含めて何らかの関心のある企業と日常的に接触している立場として感じるのは、果たして本当にそれらの記事群が中国企業について一定の確からしさを担保しているのか疑問に思うことが少なくありません。

もちろん、中国企業についての記事が増えることは、それまでのオフライン暗黒時代と比較すれば素晴らしいことです。しかし、少し偏っているようです。

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実話:上手くいかない中国地方系国有企業とのプロジェクト

弊社は中国華南地域にあるとある地方系国有企業と非常に強い関係があります。当該企業は華南地域で非常に大きな力を持っています。簡単に言えば利権を持っている、更に簡略化すれば中国の国有財産である土地の獲得能力を持っているということです。

土地を持っていても開発しなければお金にはなりません。一方で、中国の大都市における不動産開発については決して追い風の状況とは言えません。住宅開発については規制が強化され、商業開発も含めた複合開発が求められています。

一方で、中国企業について、不動産開発大手の万達集団も含めて商業・住宅複合開発の能力はそれほど高くありません。ですから、海外の複合開発に優れた企業の力を借りたいと思うのは当然のことであり、その流れで日本の商業不動産開発に優れた企業に白羽の矢が立ちました。我々は仲介、PMOとしての立ち位置で、当該企業のプロジェクトを日本企業を紹介しました。しかし、結論としてはプロジェクトは上手く行きませんでした。

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中国国有企業の意思決定は日本企業以上に複雑で遅い?

弊社が太いパイプを持つのは上述した中国地方国有企業グループの持株会社です。当該プロジェクトはこの持株会社の孫会社に当たります。持株会社の紹介によってこの孫会社のプロジェクトを日本企業に持ちかけたというかたちです。

持株会社は純粋な中国の地方国有企業であり、ほぼ地方政府と一心同体です。当然、地方政府の情報は誰よりも先に入手できており、開発プロジェクトやそれに関わる土地の情報も手に入れています。もちろん、当該土地も持株会社が保有しています。

しかし、このプロジェクトは、持株会社が保有する土地についてのものではありましたが、孫会社に対して商業複合開発の計画・実行について委託した後でした。孫会社の中ではプロジェクトが組成され、リーダー、メンバーがアサインされ、実態としての活動が既に始まっていました。

この状況で持株会社の考えによって我々を介して孫会社に対して日本の商業複合開発にノウハウを持つ企業が紹介されたのです。プロジェクトは既に進行しており、推測ではありますが中国系の開発企業がアサインされていたはずです。もちろん、当該孫会社に属するプロジェクトリーダーの名の下に、です。彼もしくは彼女は当然当惑するはずです。メンツを潰されたと感じてもおかしくありません。

持株会社はこの孫会社のプロジェクトリーダーに対して強烈なトップダウンを発揮することはできません。国有企業はコンプライアンスを遵守することを求められており、乱暴なことはできません。中国企業はトップダウンで、考えられないスピードで、驚くような意思決定を行えるというような報道が目に付きますが、実際にはそう簡単ではありません。

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中国国有企業とビジネスを上手く進めていくために何が必要か

中国ビジネスと切っても切り離せない国有企業

とは言え、中国でビジネスを行い、バリューアップを企図するのであれば国有企業との関係は切っても切れません。足下では”国進民退”と言って、国有企業には有利で、民間企業には厳しい政策が、行政を中心として加速しています。

国有企業は発展途上国の富の源泉である土地と情報を一手に握っています。中国市場の規模と成長力を手に入れるためには彼らの力を借りない訳にはいかないのです。だからこそ、彼らと付き合う上でのリスクを正確に理解し、適切な方法で冷静に距離を測っていくことが重要なのです。そして、それは深センなどの最先端ベンチャーについて語られることとは遥か遠く、ともすれば日本人がビジネスで伝統的に行ってきたことが参考になる世界かもしれないのです。

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中国国有企業とのビジネスを成功に導くためのヒント

民間企業、国有企業同じことが言えるかもしれませんが、中国企業とより良い付き合いをするには、まずは人。信頼できる人と個人的な繋がりをベースにビジネスを行うことに尽きます。これは国有企業に特に言えることです。

ビジネスを行う形態は企業対企業ではありますが、それを作り上げるのは人と人との関係ということです。相手となる中国企業、そのグループ(集団)におけるカウンターパートの人物の見極め、組織の中でのパワーバランスの把握、その立ち位置における適切な接触の仕方を冷静に見極め、着実に、そして熱く実行していくことが重要です。

忍耐が伴いますが、それも含めて中国企業、中国人は見ています。

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こういったやり方は実は日本の諸先輩方が得意としてきたやり方と非常に似ています。泥臭く人間関係を作った上で、ようやくビジネスの話になります。そのために、長い時間をかけて、時には酒を酌み交わし、相手を知る。実は、日中ビジネスの黎明期に深い井戸を掘ってきた諸先輩方に学ぶことが非常に多いのです。

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