フォーチュン500企業の安定を捨て故郷で起業した中国人若者が目をつけたのは驚きのアレ
はい、ゴキブリの話題です。嫌な人はこれ以上読まないで下さい。
四川省徳陽市に属する什邡市(上記写真)の师古镇に住む24歳の銭程は、パートナーの鄭天航と共に70㎡の小屋を借り、40数万匹のゴキブリ”軍団”を飼っているそうです。2人は一緒に起業し、什邡市の関係部門から5万元(約100万円)の青年起業ファンドの支援を受けています(!)。
銭程は四川大学華西公共衛生学院にて医薬企業マネジメントを学び卒業しました。銭程は卒業後、すぐにフォーチュン500企業の成都オフィスに採用が決定、医薬品の販売に携わりました。しかし、就職後それほど間もなく、彼はこの安定した収入の環境を捨てて、故郷に戻り起業することを選択しました。
「大学時代にある商学院が未来産業予測のセミナーに参加をした際に、人間は衣食住の欲求が満たされた後には健康に対する欲求がどんどん高まってくるという話を聞きました」、銭程はこのセミナーの影響を強く受け、健康に関する産業の可能性に賭けることにしたのです。銭程は自らのアイデアを親友である鄭天航にうちあけたところ、すぐに一緒に事業をすることになりました。
鄭天航の話では、2014年9月に彼らは一緒に雲南、甘粛、自貢などの地を見て回り、様々な漢方の材料、ミミズやサソリなどの養殖プロジェクトを見て回りました。何度も検討をした結果、低コストでかつ漢方薬としての効果が高く、そして何よりも特殊なアメリカゴキブリの養殖に目をつけました。その後すぐに2014年10月には什邡市の農村にある物置を借り、ゴキブリたちに”安住の家”を提供したのです。
「以前にゴキブリを販売した際には市場価格は1kgで80元(約1,600円)で、品質が良いものは更に高い値段で販売することができました」と銭程は言います。ゴキブリから採取されるPNAは医薬品材料として価値があることは広く知られています。血液循環を促し、血圧を下げ、肝臓を保護し、服用することで胃腸炎などの治療に使うことも可能だそうです。
ゴキブリたちが住む小屋は、24時間の温度・湿度のコントロールがされており、彼らは果物やトウモロコシ粥、魚粉などを与えられています。
2015年5月4日に、什邡市の青年起業大会の決勝にて、彼らはプロジェクトの特殊性、費用対効果の高さを認められ、5万元(約100万円)の賞金を獲得しました。決勝戦の舞台上にて、彼らの起業に要した投資は10万元(約200万円)だったそうです。そして見込むことができる収入は少なくても1kgあたり60〜70元(1,200〜1,400円)、一般的にはキロあたり150元(3,000円)、高品質なものでは200元(4,000円)以上で販売することができるそうです。計画では2年で投資の回収が可能だと言う銭程は次の言葉で大会を締めくくりました。
「ゴキブリの養殖は参入障壁が低く、投資が少なく、周期も短い。しかし市場のニーズは大きく収益化も可能です。この賞金を活用して大規模化を促進し、加工技術も高め、いずれは合作社化し村人たちにも参加して頂き、富を分かち合いたいと考えています」
編集後記
中国の美男美女の20代カップルが大学院・フランス留学を蹴って養鶏場で起業
以前、上記の記事を紹介したことがあります。共通しているのは、安定した環境を捨てて、目の前のチャンスに果敢に挑んでいく中国人の若者たちの姿です。リンク先の記事では2人の若者たちの愛、そして今回のゴキブリ起業については本当に目の前のビジネスチャンスに忠実に向き合ってリスクを採って起業して”お金”をしっかりと手に入れようとする態度です。
寺村も今年で40歳となり、若い人たちからの就職や起業に関する相談を受けることが多くります。共通するのは社会起業的な考え方で、それはそれで素晴らしいとは思うのですが、お金に対する貪欲さが欠落しているように感じることが少なくありません。お金は目的ではなく、手段であり結果です。ですから、お金儲けをすることが第一義になっては上手くいかないと思いますが、お金に対する考え方が欠落すると、事業としても完全な姿にはなりえません(簡単に言えば自己満足の世界)。
ちなみに、この什邡市ですが2008年の四川大地震の際に大打撃を受けた街です。今では街の中心部も復興を終えており、起業イベントで賞金が出せる程に元気を取り戻しているようです。皆さん、想いも大事、力も大事です。何事もビジネスとして考える癖をつけて、中国人たちの今をしっかりと活きていく良いところからも学んでいきましょう。