越境ECならぬ脱法ECで在大陸中国人が有罪判決、利益没収の上罰金徴収
越境ECの影の話です。2015年の2月、海外から高級ブランド品を並行輸入販売していた会社社長に対して”普通貨物の密輸”という罪状により、18ヶ月(執行猶予2年)、罰金55万元(約1,100万円)の判決が下りました。この罰金には彼が脱税をして不当に上げたとされる利益35万元(700万円)は含まれておらず、別途没収されることされています。
彼は寧波市にてヨーロッパの高級ブランド品を販売する店を経営しており、2011年8月からルイ・ヴィトンやプラダのバッグを中心に並行輸入を開始。当時、海外に頻繁に出張するビジネスマンや留学生など10名程を集め、購入資金を渡した上で現地でブランド品を購入させ、その後中国へ配送させる、もしくは直接持ち帰らせていました。
直接持ち帰る場合、一般的に5,000元を超える金額の商品については申告が義務付けられていますが、彼の代理購入者は全て税関申告を行っておらず、結果として彼の店で販売される高級ブランド品の価格は正規代理店を含めたその他の店舗よりも割安となり、多くの固定客を掴んでいたそうです。密輸の形で持ち込まれた品物の点数は290点に及び、総額は120万元(約2,400万円)に上り、脱税金額は合計で35万元(約700万円)にのぼりました。
今回、韓国から商品を持ち帰った代理購入者の1人が無申告で税関チェックを抜けようとしたところ止められ、慌てた彼女は店主である楊氏にSMSを送ったところ、楊氏が彼女に対して”自分で購入したと話すように”と書いたSMSを返送したことが裏目に出て、これが証拠となって逮捕されるに至りました。
編集後記
このモデル、越境ECに関係する方なら良く似た場面を思い起こすことでしょう。日本に来た留学生が生活費を稼ぐために、化粧品や衛生商品を大量に”個人利用”の名の下に、中国に並行輸出販売を行っているケースです。
タオバオでの個人輸出に対する日本政府の取り締まりの厳格化と、法人化によるチャンスの拡大
上記のケースは、在留許可の資格外活動で許可された以外の活動を行ったとして”出入国管理法”違反に問われたケースで、密輸(輸出)について摘発された訳ではありませんでした。日中韓の越境ECについて、特に日本から中国へのアウトバウンドを行う際に問われるのはこの部分ですが、今回の記事のケースは受け側である中国で”密輸”を罪状として有罪判決が下ったということになります。
現在のC2Cによる日中間での越境ECについては、
タオバオ個人輸出の聖地となるか?7つのモデル都市に杭州が追加批准
この記事に書かれているように杭州を含めた8都市の越境ECモデル都市、そして自由貿易特区を中心に貨物輸送がされることが普通になってきており、基本的には税関当局から指摘された場合について、受け手である中国の消費者側が関税を払うという処理が普通です。もちろん、受け手がしっかりと認識をしておらず、送り手とのトラブルになるケースも少なくありません。
この案件1つで判断は難しいとは思いますが、受け手である中国企業、消費者に対する関税の徴収の厳格化がトレンドであることの見せしめである可能性も否定できません。いずれにせよ、中国側で密輸をすることによって利益を稼ぐという方法については網の目が小さくなってきているということでしょう。越境ECがより合法的に、かつ個人から企業へと重心が移っていくことは、政府の考えと合致しています。未だに個人でハンドキャリーをして無申告というパターンの方もいらっしゃるとは思いますが、非常に高いリスクを負っていることを認識した方が良さそうです。