日本企業の陥りがちな失敗

中国企業や中国人とビジネス上で何らかの関わりを持っている日本企業が、彼らと付き合う中で最初に不思議に思うことは、彼らが、お互いが本来実現しようとしていた目的を達成するための内容とやや離れた、場合によっては全く違うことを提案してくることです。日本企業側からすれば、本筋と関係ないことに対して、なぜこの場で我々に提案してくるのか、そもそもその提案内容に対して効率的に応えられるかどうかも分からない中で、アタマの中は「?」です。

また、こういうこともあります。プロジェクトのために中国に出張してきている日本企業と当該プロジェクトの内容が会議の中で結論を出せていないにも関わらず、食事に行こうと言い出したりすることです。その宴席では「私たちは友達だから一歩一歩やっていきましょう」ということで白酒を酌み交わすことになりますが、出張してきた日本企業からすれば、一体何が進捗したのか分からないということがあります。

新しい相手とビジネスを立ち上げる際にこういうことが往々にして起こります。そして、日本企業は非効率なことで翻弄されていると思い、本筋が進まないことに業を煮やして、中国側と離れていってしまい、逆説的ではありますが結果としてビジネスが立ち上がらないことになります。

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性善説の日本人と性悪説の中国人

日本は、また日本人は、四方を海で守られていることに慣れていて、民族的な複雑さも少なく、お互いが同じ環境で同じ価値観であることを前提として会話をします。ですから利害関係を共にしようとする相手とは既に信頼関係のチームであるということは疑いようもなく、むしろその本論の果実を得るために如何に進めていくかについて、その役割分担についての話に入ろうとします。いわゆる段取りを大事にします。

一方で、中国は大陸であり歴史的に周囲の異民族からの侵略に晒されやすく、そこに根ざす国家も人も基本的には知らない相手と利害を共にしようとする時には、まず相手の価値観や実力がどのくらいであるのかについて推し量ろうとします。簡単に言えば、相手に対して悪意のない疑いから入るということです。ですから、段取りの話をする前に、本論と関係のないところで相手を結果で試すようなことを無意識にするのです。

この違いが日本企業にとって中国ビジネスが難しいなと思わせる、初歩的でもあり、かつ大きな要因になっています。

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日中PE投資と現代アーティストイベント

ここが非常に難しいのです。

弊社でも日中間でのPE投資案件についてのビジネスを立ち上げる話をしていた際に相手から、中国のショッピングモールやその中に入っているハイブランドと、日本の現代アーティストとのコラボをしかけたいと友人の会社が言っている、何とかできないか?と突然言われたことがあります。

普通であれば、PE投資と全く関係のないことであり、「それは本件と関係がないし、我々も得意ではないので難しい」と断るところです。

実際には、そこで試されているのです。単に断ることは簡単ですが、日本の現代アーティストに詳しい友人・知人、もしくはその法人や協会等を紹介する、アーティストをリストアップして提案資料を作成し、実際に日本でファーストコンタクトをする等、レベル感はありますが弊社としてもこれくらいはお手伝いします。

そういったやり取りをする中で、中国側は我々の仕事の仕方、結果の質、コミュニケーションのとり方等を見ているのです。

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信用の貯金の積み重ねでドアが開く

日本人は価値観、仕事のやり方、アウトプットの質等を前提としてある程度共有しているので段取りを精緻化する作業にいきなり入ることができますが、中国ではそもそもの前提が共有されていないため、段取り自体を一つのテストとして相手方に実行させるのです。

そのテストに小さくても一歩ずつしっかりと応えていくことにより、中国側は安心し、それが信頼となって蓄積されていきます。その積み重ねの中で、いつのまにか話の本筋に戻り、場合によっては更に大きな果実を伴う話がもたらされます。その時には、互いの関係は切っても切れない強固なものとなっているはずです。

結果とスピードにこだわる中国人、という部分的な印象ばかりが日本国内で中国を報道するメディアに溢れていますが、実はこういうことが根底に流れています。しかし、実態は違います。この違いを理解できているかどうかで中国側とのビジネスの成否が決まると言っても過言ではありません。

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