中国アリババの2015年最初のM&Aは国内最大のデジタル広告企業AdChina
2014年1月14日(水)アリババは、「易伝媒(AdChina)」の株式を購入しマジョリティを確保したことを発表しました。AdChinaは中国最大のマルチメディアデジタル広告プラットフォームで、アリババはこの買収によってデジタルマーケティング業務を強化する意図があるとのことです。
これはアリババにとって2015年で初めてとなる投資案件です。アリババは現段階でこの取引の規模の絶対額や、AdChinaに対する持ち株比率を明らかにはしていませんが、AdChinaの運営の独立性は維持しつつ、End to Endでのアドテクノロジーとビッグデータを用いたマーケティングプラットフォームを構築することで、広告主やネットワークメディア、サードパーティの専門機関の間での流動性を高めることが狙いだそうです。
マーケットリサーチ機関であるeMarketerが2014年末に発表した内容によると、アリババと中国インターネット検索大手の「百度(Baidu)」は、全世界デジタル広告売上の3位と4位に位置しており、それぞれ4.7%のシェアを誇っています。2015年には、中国大陸におけるデジタル広告予算規模は30%成長すると言われており、アリババとAdChinaの統合は自然な決断です。
AdChinaに対するアリババの投資により、アリババグループ傘下でアドエクスチェンジプラットフォームである「阿里妈妈(Alimama.com)」のラインナップと利益率の改善を行います。
Alimama.comは現時点で、「淘宝(Taobao:アリババグループのECサイト)」と「天猫(T Mall:同)」に対してのみデジタル広告を販売しています。AdChinaのTradingOSプラットフォームと、アリババが持つビッグデータ、クラウドコンピューティング能力を統合し、双方のデータを共有することによって、広告主に対してブランド構築と展開を支援するトータルサービスを展開することができます。
AdChinaのCEOである閻方军は、アリババとAdChinaの今回の戦略的統合は、ビッグデータマーケティングの時代がまさに到来したことを意味しており、双方がデジタルマーケティング産業のエコシステムを更に発展させることになる、と述べました。
AdChinaは、2007年に創業、本社は上海にある中国最大のデジタル広告企業です。傘下には、DSP(Demmand Side Platform:広告主側へのサービス提供プラットフォーム)、SSP(Supply Side Platform:メディア側のプラットフォーム)、そしてDMP(Digital Marketing Platform:デジタルマーケティングの管理プラットフォーム)の三大技術を保有し、広告主に対してトータルサービスを提供しています。
中国大陸においてAdChinaが提供することができる広告のカバー率は、インターネットユーザーの98.5%, スマートフォンユーザーの80%, 更にインターネットコンテンツ(音楽・映像)ユーザーの80%にまで及ぶとのこと。2011年の広告販売額は5,100万ドルでした。
ここからは私見です。日本でも2014年末のAdTechでは、ソリューションプロバイダーの参加者から、広告主、すなわち一般企業側の関心がかなり高まったという話を聞きました。2015年の日本はデジタルマーケティング元年になることは間違いないでしょう。この買収案件を見ると、中国も同じか、むしろ速いスピードで進んでいるように思えます。デジタルマーケティングで必要となるのは、従来型のマス広告とは異なり、
A. 広範なアドネットワークカバレッジ
B. サードパーティを含めたActiveデータ(属性、購買)
C. スケーラビリティとアベイラビリティの高いシステムインフラ
- デジタルマーケティングの実経験がありビジネスに精通している人間
- 定型的な解析モデルのPDCAを回しグロースハックする人間
- 玉石混交のビッグデータの中から意味のある解析モデルを構築する人間
が必要となります。大雑把に言えば、C, 1, 2, 3に強みを持つアリババが、A, Bを持つAdChinaを吸収するのは必然です。アリババは今後、協力なクラウドコンピューティングパワーと、民間では随一の頭脳を持つとも言われる優秀なデジタル系人材、そして今回手に入れたアドネットワークを武器に、世界最大のデジタルマーケティング企業を狙う位置につけました。Amazonとは似て非なるとこもあり、2社の比較は今後のテーマに取っておきます。ただ、一つ言えるのは、日本でもここに立ち向かう企業が出てきて欲しいということです。