中国アリババが広東省の農村と組み大改革を実施、農村の若者にUターンの兆しが
最近になって、広東省の陽山県は2014年の「陽山県十大新聞」を発行しました。「大衆教育実践活動」と「5/22洪水災害」に次いで、「アリババが陽山県に山東省農村モデル地区を設立」がトップ3に入りました。これは、陽山県は広東省でも最貧困地区であるものの、農村ECの発展を重視していることを示しています。
2014年10月14日、アリババグループの広東省広域エリアマネージャー余湧などは、陽山県に向かい、農業におけるECの取組状況と、その促進に何が必要かを検討した結果、協業のフレームについて基本合意を締結し、「陽山県EC”新農村”プロジェクト」にサインをしました。12月17日に、広東省陽山県は農村ECテスト地区の看板除幕式を行い、「アリババ農村」としての全国で2番目、広東省では初めてのモデル地区となりました。
「アリババ」プラットフォーム
「三階層ネットワークサービス」への添え木
アリババと「千県万村(全国の県と村)」との最初の合作は、浙江省の桐庐県でした。桐庐県には、申通、圆通、中通、韵达快递など、宅急便型の物流チャネルがありした。これは農村EC発展の上で重要な要素のひとつでした。では、なぜマカオ北部の山岳地帯にある伝統的な農業県である陽山県が全国で2番目、広東省で最初のテスト地区になったのでしょうか?
全国農村総合改革モデル県となるために、陽山県は「中国農村電化達成県」、「中国農村水力発電の郷」、「中国緑化の県」、「全国林業先進機構」、「中国二期作野菜の郷」などのタイトルを獲得していたことは、前述した余湧の記憶に深刻な印象を与えました。この他、2012年、陽山県は県、鎮、村の三階層に渡る社会総合サービスネットワーク(通信)をかかげ、県レベルで1箇所、鎮レベルで13箇所の総合サービスセンターを、村レベルでは167箇所の総合サービススポットを建築し、180人のスタッフを動員、住人に対して便利で、効率の高い公共サービスを提供しました。アリババ陽山農村Taobaoプロジェクトの責任者は、陽山県における県・鎮・村の三階層ネットワークは、農村ECにとって非常に基礎的な条件であった、と言います。
「農村Taobaoサービススポットを、村レベルの総合サービススポットに設置することで、大分手間が省けました」、と陽山農村Taobaoプロジェクトの責任者は言います。既にある「三階層ネットワークへの添え木」というかたちにすることで、政府のサービス以外のサービスを住民に提供し、便宜を図ることができます。その他、陽山県の村レベルのサービススポットは地理的条件に恵まれており、交通アクセスが良いので、物流拠点として有利でした。しかも、県・鎮・村レベルのネットワークは相互に繋がっており、すぐにでも都市部から村に至るまでの物流システムを整えることができます。そのため、陽山農村Taobaoプロジェクトの、最初のサービス拠点は、2ヶ月もかからずに利用開始に至ることができました。
「Taobao」が加わったことにより、陽山県では、都市部から戻ってくる青年や、農村に留まる農民がますます増えました。彼らはTaobao上にある農産品の特売店を見て状況を理解し、起業を考えるようになりました。現在の山村は、生活条件において未だに大きな変化はありません。しかし、世代を超えて伝わる伝統農産品、例えば「晒笋干(上記写真、干し筍)」などが、ECプラットフォームを通して、より多くの消費者に届くようになりました。
ワンストップ消費
農産品の代理販売が販売難を変えた
「数日前、村のTaobaoスポットで1台の冷蔵庫の購しました。オーダーしてから3日後に届きました。本当に便利です」、黎埠镇均安村の村民のひとりは非常に喜んでいました。「村の中心にある実店舗と比べても数百元も安い。安いし、便利!」。
均安村のTaobaoスポットの責任者曰く、「このスポットを運営して40日が経ち、村民は既に4万元(80万円)近い商品を買いました。中には冷蔵庫などの家電も含まれます。かなり忙しかったですが、村民が利便性を感じて、嬉しそうな姿を見ると、私も嬉しくなりました」。彼によると、今では村民は街の市場にあまりいかなくなりました。歯磨き、歯ブラシ、トイレットペーパーなどの生活用品も含めて、ECで購入するようになりました。「1回だけ買いに行くものでも、遠くへ行く必要はないし、時間とお金を省けるからね」。
村のTaobaoスポットの機能は、村民が買い物に使用するだけではありません。村民の販売チャネルにもなります。「農産品の代理販売」です。
2014年末、陽城鎮の村民は500kgの売れないジャガイモをTaobaoスポットに持ち込みました。3日後に、ジャガイモは0.8/kgだったものが1.3元/kgで売れたのです。「まさか市場に行かずに、ネット上でジャガイモが売れるとは思わなかった。しかも、その価格は今までの中で最高価格を記録したんです!」。結局、一気に6,000kgを販売し、村民は思いもしなかった成果を手に入れることができました。村民が更に驚いたのは、Taobaoスポットに作られた新農村合作社地区総合サービスセンターでは、農薬や肥料などの農業中間財を手に入れることができるだけでなく、農業技術訓練や、物流機能、生活日用品、医療サービス、現金のやり取り、電話の支払いなどのサービスを受けることができるということでした。
この村のTaobaoスポットでは、全ての社会資源と能力を整え、農民が一歩も村を出ることなく、生活、産業用品を購入したり、農産品を販売したりといった、都市部と変わらない品質のサービスを受けることができるのです。
Uターン起業
土地の還流を促進
「今は良くなった。ECチャネルを手に入れて、作付した農産品を売ることに一喜一憂することはなくなった。お金の節約、そして悩みの解消です。心を落ち着けて、次のシーズンのことを考えることができる。自分で起業することもできる。自分の持ち分以外で出稼ぎに行く必要も無くなった」、これは、陽山県の広大な農村で育った青年の選択でした。
長い間、陽山県の農村で育った青年は村から仕事を求めて出て行きました。「農家をやって農産品で生活するとなると、元々は自分で販売経路を探す必要がありました。しかも、自分で農産物を運んで市場で売る必要がありました。農業はとても大変です。収穫したとしてもそれから更にどうやって売るかを考えていました。しかし今、村から出て仕事を探す悩みはなくなりました」。
陽山県がECプラットフォームを作った後、農村の青年は起業への希望を見ることができるようになりました。皆が村に戻って起業することを念頭に置いて奮起した結果、今では陽山県では農村青年のUターン起業ブームが到来しています。同時に、陽山県は引き続き、「陽山県における”政府・銀行・保険”による補助を元にした農村共同合作社の具体的な方法論」など、農村金融改革と統合し、資金の呼び込み促進し、農民専業合作社や農家が共同で金融的な支援・優遇を受けることができるようになり、結果として起業が活発化することを狙っています。
農村のある女性は、Taobao上で自分の店を開き、当地の農産品を販売しています。「村に”EC特急”が来たから、自分で店も持てた。収入は出稼ぎよりももちろん良いです」。
この「自らECショップを出す」というモデルが立ち上がって以来、陽山県には多くの若者がUターンをして起業をしました。ECがあれば、Taobao上で店を出すことができ、かつ新農村共同合作社に参加することができ、スケーラビリティのある農業を行うこともできます。農民のひとり、蔡木秤は、「もう販路に悩むことがなくなりました。今後は、パートナーと相談して、20〜30ムー(土地の広さの単位)を引き受け、前記は甜麦、後期はジャガイモを育てようと思っています」と意欲的です。
目下、陽山県は農村総合改革の中で、農地の流動化促進と農村金融改革をもの凄い勢いで進めています。ECモデルによって農民が販路の心配をすることがなくない、農業を行うことに再び情熱が戻ってきたのです。「世間を一通り見て村に帰ってきた青年」は、もっと大きく「やんちゃ」をしたいと、陽山県の土地の流動化に向けた野心を暖めています。
政府補助の規範は整った
農村市場はもはや「孤島」ではない
2015年に、陽山県は「上流工程+下流工程の統合モデルによりEC特急を推進する」活動を始めました。農民にとって、より安定的で、速く、利便性の高い、世界を実現するためです。
上流工程モデルは、「生産量の保証、品質コントロール、コールドチェーン輸送」を実現することです。設備を最適に配置し、科学的かつ合理的な区域性の作物を育て、農産品の生産規模を拡大し、販売量を保証することが目的です。また、陽山県国家級輸出食品農産品品質安全モデル地区と共同で、県、村レベルでの品質検査大成を完備し、品質管理を徹底します。EC物流産業パークでは、冷蔵庫とピッキングセンター、配送センターを建設し、一定量の冷蔵車を配備し、コールドチェーン環境を整えます。
下流工程モデルは、「ブランドプロモーション+Webサイト直営+リアル販売+実店舗」の形態で発展させます。県レベルの供销社(農協)をベースに新農村供销合作社を統合、機能を共通化し、サードパーティのサービス企業と組むことで「陽農(陽山県の農産物)」ブランドを確立します。その上で、統一ブランド、統一パッケージ、統一プロモーションを行います。ECをテコにして、「陽農」の経営状態を向上させ、既存の陽農農産品Taobao専門店等発展させます。将来的には、より多くのインターネット関連機構や、EC企業と組むことにより、陽農ブランドの「Tmall(AlibabaのブランドECサイト)」や、「蘇寧(大手家電量販店)易購(EC)ブランド店」、「京東商城(大手ECサイト)ブランド店」など、複数のECチャネルの建設を行っていきます。
インターネット上でのEC以外にも、陽山県はリアル販売体系の構築を行い、ネットとリアルの同期に力を入れます。これは、将来的に、陽山県に旅行で来る消費者を想定したもので、体験型のプラットフォームを構築します。他の地区にもネットワークを建設し、代理店として、もしくはFCとしてカバレッジを広げていきます。
編集後記
長年、いわゆるモデル地区は、中央政府が政策の実効性をテストするためではなく、省・市の共産党の委員会が政府からの補助金をもらうための典型的な手段でした。「まずモデル地区をやって、その後プロモーション」、というのが党委員会や政府がプロジェクトを組成する合言葉でした。
今、陽山県は、「Taobaoテスト県」としての機会を得ることができました。更に、これは一企業「非政府組織」によって市場原理によって提案された、言わば破天荒なモデルです。このやり方は非常に示唆に富んでいます。
昔から、経済には二面的な側面がありました。農村の大量の労働力と資金そして学生は、皆都市部へ出て、「都市化」の建設に携わる以外に、遠くの農村で日雇いの出稼ぎをしていました。以前で言うところの「386199250部隊(奥さん、子供、老人、精神病患者)」も含めて、子女の教育のために、条件が合えば農村を離れることが普通でした。農村は電化されましたが、既に労働力はありません。村民自治など一定の規律・ルールの運用によって規制はありますが、基本的な状況は変わっていません。
同時に、農村の共同資産や、宅地、倉庫、建設用の土地などは権利関係が複雑かつ曖昧で、大都市からの資本が流入することは難しく、農村には大量の古い民家や物置、荒れ果てた休耕地、整備されていない感慨設備などが残されるのみで、活力はありませんでした。農村は市場経済における陸の孤島だったのです。このケースには、各省にとって、積極的に示唆を得ることができる大きな意義があります。
陽山県は広東省に属しており、中国の中西部の農村と比べて比較的良い条件です。重要なのは、県の党委員会、県政府が主導的な立場でTaobaoと合作を行い、「三階層のネットワークに対する添え木」を作り販路に対する問題を解決し、農民に対する利便性を上げることを目的として、インターネット時代におけるチャンスを掴みとろうとしたことです。小さな農村と外界とを繋げることにより、農村の若者たちに起業の可能性を見せることができたのです。更に、合作社を通した、スケールモデルにより、古びた農村は徐々に変わっていくことになるでしょう。
出所:新華網、中国新聞網