日本の新幹線の逆襲?中国新華社が冷静に書く安倍トップセールスの底力

新華社通信の記事です。日本の高速鉄道、すなわち新幹線技術・設備が、安倍首相の元、世界で積極的な展開を見せていることについて冷静に記事にしています。新華社がここまで書くということもありますが、日本のインフラ輸出が大攻勢をかけていることがよく分かる記事です。


欧州鉄道連盟の予測によれば、2015年以降数年は高速鉄道を中心とした市場は急拡大が予測されています。高速鉄道の建設能力を持つ国にとっては大きなチャンスとなります。そのため、日本の安倍内閣は鉄道と関連する設備について国家の”経済成長戦略”の支柱のひとつとして位置づけており、海外の鉄道建設プロジェクトとそれに伴う関連設備の輸出による経済成長を期待しています。

このため、日本は積極的に”首相によるトップセールス”を仕掛けています。安倍晋三首相は”トッププロモーター”として関連諸国のリーダーを歴訪する際に、日本の高速鉄道(新幹線)をプッシュすることに余年がありません。もちろんそこには必要な資金提供も含まれています。

新幹線

同じく日本の国土交通大臣は需要のある諸国を多く訪れ、新幹線と関連設備を売り込んでいます。日本は官民一体で”海外交通・都市開発事業支援機構”を設立し、海外に向けて新幹線のプロモーションを行うとともに、各方面の情報を収集し、関連企業の間の連携を取り持っています。2014年4月に、日本の4大鉄道会社が連合し、”国際高速鉄道協会”を設立、同じく日本の新幹線技術と設備の輸出業務を手掛けています。

日本の世界における交通インフラ市場におけるプレゼンスはそれほど突出したものではありませんでした。まず、日本は2007年に台湾で新幹線を正式に開通させ、時速300kmを達成し、現時点で運営状況にも問題はなく、台北と高雄とを結ぶ大動脈の構築を支援しました。

日立は1兆円のロンドン新幹線の車両のオーダーを既に獲得しています。2015年1月に神戸港からロンドンに向けて第一弾の新幹線が輸送されていきました。計画通りに進めば2015年の春・夏にかけて順次以降が進み運行が開始されるとのことです。

米国のニューヨークには巨大な地下鉄ネットワークがありますが、そこでは川崎重工が生産した車両が最も多く採用され、その数は2,000両を超えるそうです。現在、川崎重工の2つの米国工場ではフル生産体制状態で、かつ能増を計画しているようです。

三菱重工などの企業連合は2014年8月にブラジルのサンパウロの鉄道建設プロジェクトの受注に成功しました。2015年2月にはカタールの首都ドーハにて地下鉄建設プロジェクト4,000億円分を受注しています。

この他、日立はイタリアの防衛・航空大手企業であるフィンメッカニカグループの鉄道車両と信号業務部門を買収。日立は、この買収によって日本企業の国際市場での影響力と競争力の増強が有利に進み、世界の鉄道市場における競争に全面的に参戦することを表明しています。

インドは今後アジア地区の鉄道建設マーケットとして最も重要なマーケットとなります。国内の主要都市を結ぶ高速鉄道を7本(総延長4,600km)つくる計画があります。日本は各ルートを通じて受注獲得に向けた積極的な動きを見せています。

日本の報道によれば、インドの鉄道建設に関する行政機関の責任者が2015年2月に記者会見の席で「インドが日本の新幹線の技術を導入する可能性は高いですか?」と聞かれたのに対して、「当然」と明確に答えています。インドのモディ首相は日本の新幹線に対してかなり期待をしていると、行政トップも述べています。

日本はインドのムンバイから西部の都市であるアフマダバードまでの500kmを結ぶ高速鉄道建設プロジェクトについてもフィージビリティスタディ行っており、2015年7月にインド政府に対して報告を行う予定となっています。日本のメディアによると、インド政府はこのプロジェクトについて日本の新幹線技術を採用する可能性がかなり高まっているそうです。

マレーシアの首都、クアラルンプールからシンガポールまでの330kmの高速鉄道建設プロジェクトは2015年内に公募入札が行われる予定で、日本企業は全力で参加することが予想されています。日本の報道によると、日本の新幹線の安全性がシンガポールで認可される可能性が高いとのことです。

高速鉄道美女

米国は現時点で最大の高速鉄道市場で11路線、総延長で13,700kmが計画されています。日本は既に世界最速で時速500kmを誇るリニアモーターカーの建設を開始しています。ワシントンからボルチモアまでのリニア路線を積極的にプッシュしています。

他にも日本はタイに向けてODAによる鉄道建設を何度も提案し、プロジェクトにおける先進技術と運営経験を売り込んでいます。同様にミャンマーとタイを繋ぐ越境高速鉄道プロジェクトについてもODAによる資金援助を提案しており、タイ、ミャンマー、カンボジア3カ国を繋ぐ路線への資金提供についても前向きな姿勢を見せています。


編集後記

日の丸インフラ攻撃隊、なかなかやりますね。コメントも色々と面白くて、

  • 中国の高速鉄道の乗り心地は台湾のそれよりも良いと思った。
  • 中国は色々と細かい点で改善する余地はあるね。
  • お前は日本へ行って米と便座でも買ってこい!
  • 日本はどんどん良くなって欲しい、頑張れ日本!
  • (上に対して)死ね!
  • 小日本の製品はそれほどでもない。中国の高速鉄道技術の方が上だ。
  • 単純な比較はできない。最も重要なのは安全、そしてUX。
  • 日本の技術はドイツのコピーじゃないか。

などなど、中国バンザイ一色でもないんです。そういう私自身も中国大陸の高速鉄道の乗り心地は台湾の新幹線よりも良いと思いました(台北-高雄路線と、上海-北京路線の比較)。もちろん完成時期が違うということもありますが、中国の高速鉄道もかなり快適ですから、単純な比較はできません(上記にも冷静なコメントがありますね)。

それと、叩かれまくってる安倍さんですが、このトップセールスはかなり評価されても良いと思います。僕が中国に駐在している際に、大手インフラ系企業の現地トップや海外事業責任者と話をしてきましたが、出てくる話は政府が全然積極的に動いてくれないというボヤキでした。自民党政権に戻り安倍さんの体制が整い、重工系メーカーの積年の願いが実行に移された形です。日本は外に出て積極的に外貨を稼ぐことが今は非常に重要です。そのための税制をとって、僕のような中小企業には苦しいところですが、なんとか上手く進めて欲しいです。富の再分配の問題は残っているとは言え、ここが上手くいかなければ何も残りませんからね。

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