中国流:日本人、日本企業はなぜ海外の人、企業とコミュニケーションができないのか?
話せないからではなく、話すことがない日本人
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これ、一昨日ですかね、同じ日だったと思うのですが結構バズった記事だと思います。Webをクロールしていて、連続で出てきた記事ですが、共通して流れているトーンは極論すると”日本人には会話をする内容が無い”ということです。ちなみに、グーグルで”話すことがない”というキーワードで検索をすると、1,120,000件がヒットします。これだけ意識されているある意味”自覚的な”テーマということです。
自分はこの2つの記事にとても共感できる部分がありました。日本と海外のクロスボーダー案件を手がけている人であれば誰でもこの問題について意識的であると思います。それは、海外企業との交渉の場における日本企業、日本人は実際に”話すことがない”のです。
ビジネスの場では、しっかりとゴールとアジェンダを設定していくことで、技術的になんとか話をまとめることはできると思います。しかし、本当の意味での人と人としての信頼関係を醸成することができなければ、ビジネス交渉についても非常に細かい部分、ある意味妥協を強いる、強いられる部分についての納得感のある合意にこじつけることはできません。そのためには、相手のことを理解する必要があります。だからこそ、話をして相手をより深く理解することが大事です。人間同士、”分かり合う”ことなんてできませんが、どこに興味があって、どこに違いがあるのかについて理解をし、自分の中で腹に落とすことは可能です。
話すことが無いとは、どういうことか?
では、”話すことがない”というのはどういう状態でしょうか。日本企業が海外企業を招いて行う宴席で寺村自身が良く目にする光景として、相手方のトップが放って置かれており、つまらなそうにしている光景です。傍らで日本企業側は内輪ノリで盛り上がっている光景です。自分も中国に駐在した当初、現地の人間たちが現地語で盛り上がっているのを全く聞き取れない状態というのは極めて居心地が悪いものでした。
どうしてこのような状況が発生するのかを、その場にいながらにしてよく考えるのですが、結局は日本人は”相手個人に対する興味・関心が極めて低い”というところに行き着きました。”話すこと”は沢山あります。年齢、趣味、仕事、相手がトップであるならば、その事業の立ち上げから今までの苦労話、その国の経済や文化についてなど、挙げればキリがありません。どれか一つでも取っ掛かりにできれば、相手に話をしてもらうことはできます。人間、話をするという行為はある意味自己確認行為でもあり自己承認行為でもあり、そうすることによって質問をしてきた日本企業側との距離は縮まっていきます。
例えば、海外企業のトップの立志伝を聞いたとします。彼が話をし終わった時に、日本企業側でよく見られるのは、「うちの会社ではそんなことできないよな」、「そうそう、◯◯事業部のあの人がさあ」というような話で盛り上がって、相手に質問を返さずにいつのまにか内輪の盛り上がりになってしまっているという光景です。出てきた料理の中で日本の米の話になったとします。外国企業は日本の米は美味しいと話を振ったとします。日本企業側は日本の水の良さ、空気の良さなどの話で盛り上がり、ある意味自己完結的にはなしが終わってしまいます。こういう光景は山程見てきました。それも、ビジネス、プライベート両方です。
自分を語らず組織について”確認”をする日本人
そうです。日本人は”特定の所属組織の中で自己完結する”傾向が非常に強いということです。上記の会話のポイントも、結局は大切なビジネスパートナーのトップ個人に対しての興味・関心は無く、自らの会社組織について、”誰もが当たり前に知っている前提を確認”しているだけなのです。組織の中で同じであることを確認することに自己承認があるということです。日本の村社会ではこれで通用すると思いますが、相手方、海外企業側の立場に立った場合これ程辛いことはありません。自分が興味を持って質問したこと、知ってもらおうと思って発言したことが、いつのまにかどこかに飛んでいき、理解できない話に置き換えられているからです。
日本人はどうしても組織の中で違うことに対して不安感を抱きがちです。仮に、非常にプライベートで非常にコミュニケーションが上手な人がいたとして、その彼・彼女が宴席で日本企業側の社長などを出しぬいて相手のトップと深いやり取りをするでしょうか。する人もいるでしょう。しかし、社長や上司の目が気になって、自分を押し殺し、本来であればやれることを敢えて我慢してやらないということもあると思います。そこを一歩踏み込めるかどうか、そういった人の後押しをしてあげられるかどうか、そこが日本人として日本企業としての、海外ビジネスを手掛ける際の第一歩だと思います。
どうすれば自分を語ることができるか
人と人は違うのが当たり前。その中での良い悪いは相対的なものです。この考え方を意識するだけでも大分変わってきます。自分が良いと思ったことを相手が良いと思わなくても、それが当たり前なのです。文化、価値観、考え方が違うのですから。ですから、コミュニケーションの中で良い、悪いを判断するのはビジネスの中でのロジカルな数値についてのみ、それ以外については”違い”について徹底的に話しあえば良いのです。その中で、逆説的ですが、相手の文化、価値観、考え方を理解することができれば良いのです。皆さん、宴席の場では、身内とは会話するのをやめてみましょう。そして、相手企業、個人としっかり向き合ってみましょう。
海外のニュースソースを見てみましょう
そして、最後にもう一つ。英文でも中文でも良いので、母国語とは異なるニュースソースを毎日かならずチェックしましょう。日本で報じられるニュースソースは、海外で報じられるものとはかなり異質なものです。日本の村社会の中で日本だけで報じられるニュースだけを見ていると、世界の中ではかなり偏ります。これは、上手く説明できないですが、実際に読みだすと分かっていただけると思います。更に、世界の経済がどう動いているのか、社会がどう変動しているのかは、日本の経済・社会に実は密接に関係しているので、日本を理解するためにも意味のあることです。海外ソースを身近にすることで、相手との会話における話題が増えてきます。そうすれば、自信もついてきますから。スマホでゲームやっている時間があるんだったら、その時間の少しを割り当ててみませんか。
相手に興味・関心を持つこと。
そこで”違い”の背景にある文化、価値観、考え方を理解すること。
更に、相手との共通のトピックを海外ソースから作っておくこと。
この3点を意識するだけでも大分変わってくると思います。それは、効率も上がることに繋がりますし、何よりも自分自身が楽しくなるはずです。少しでも心がざわついたのであれば、是非今日からトライしてみて下さい。