中国流:真の意味でのインバウンドが日本の未来を救う | 崩壊に向かう日本経済に対する提言

子供

日本の崩壊は経済基盤から明らか

資本主義社会を営む日本にとって、社会の維持は経済の基盤によってなりたっています。もちろんその他にも社会規範やルールなども含めての社会国家であると思いますが、資本主義社会を成り立たせる大動脈である経済が成り立たなければ、心臓が動いていない死体に礼服を着せることと同じで、何の意味もありません。その経済ですが、様々なデータを見るにつけ明るくないどころか、どうしようもないというところまで来ています。

経済成長はGDPの成長率で語ることができます。GDP成長率は、

①労働投入量の増加

②資本ストックの増加

③全要素生産性(TFP)の増加

に分解することができます。

①労働投入量の増加は国内における労働人口の増加のことで、男性、女性、移民という括りが語ることができます。

②資本ストックの増加は設備投資など有形固定資産残高(償却を除いた部分)のことを意味します。

③全要素生産性(TFP)とは①、②で説明できないGDP成長率の残差のことで、一般的には生産性の向上と同義として説明されます。

日本の実質経済成長率は2014年度の実質ベースで-1.0%になると予測されています。日本は足下で富を生み出すことができなくなっていることを意味しますが、先ほどの①〜③の観点で見ると更に恐ろしいことが分かります。

総人口の減少

人口

主要各国、エリアの総人口のトレンドです。アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、EU17の全てが人口については増加トレンドにあるのに対して、日本だけが変曲点を迎えた後に人口減少局面に入っています。日本が人口減少国家となったことについては皆さんご存知だとは思いますが、実は欧米主要各国は人口が増加しています。これは移民の増加と関係しています。

生産年齢人口の急激な減少

生産年齢人口

そして、もっと恐ろしいのが生産年齢人口の総人口に占める割合です。色が見にくくて恐縮ですが、殆どの国が横ばいで安定しているにも関わらず、急激に下降しているのが日本です。2000年当時は68%もあった生産年齢人口割合は2012年で63%と5ポイントも下がっています。人口が1.2億人であると考えれば600万人分の労働力投入量が減っているということになります。GDPの主要構成要素である①労働投入量は強烈なマイナスになっているということです。

移民の受け入れはほぼゼロ

移民

移民については肌感覚でお分かりの通り、日本は移民が少ないのではなく、ほぼ受け入れていない国家であることが上記のグラフから分かります。データでは示しませんが、女性の活用も進んでいませんね。

資本ストックは取り崩され、海外からの投資は無い

次に②資本ストックの増加ですが、国内の固定資本形成を金融危機以前の07年から12年までのスパンで成長率を見た時に、-2.8%と伸びるどころか下がっています。足下ではプラス成長になっていますが非常に弱含みです。日本企業は積極的に海外に工場を建てて生産拠点を移してきましたが、それは国内の富の増加には直接的には結びつきません。では、海外から日本に対するインバウンドでの資本投下があるかというと、

FDI

このFDIのInboundの数値を見ていただけると分かる通り、ほぼゼロです。Outboundは多いので、日本は資本輸出国であり、海外からの投入はほとんど無いということが分かります。それだけではありまえせん、①で説明をした生産年齢人口の減少は、別の言い方をすれば高齢化が進んでいるということです。高齢化が進むことによって銀行などに入っている預貯金は取り崩され、再生産用の資本の形成に使われず、身の回りの消費に向けられることになります。

下がり続ける生産性

最後に③全要素生産性ですが、

TFP

この灰色の折れ線グラフで表したものですが、1990年代は非常に高い成長率であったのに対して、2000年代は3%未満、低い時にはマイナス成長となっています。技術革新やイノベーションによる生産性の向上ができていないということが分かります。

本当に非常に暗いデータですが、事実です。国内がこれ以上豊かにならないどころか、豊かではなくなっていく世界に私たちの子供や孫は生きていくことになります。それどころか、高齢化社会の中で福祉などに資本ストックが回されていくことにより、経済循環のサイクルは回らず、かつ生産年齢人口が減少すると同時にピラミッド構造がおかしくなることにより、下の世代が上を支える負担は企業の中でも、社会的にも急激に増大していきます。私たちの子供、孫は本当に過酷な経済状況の中で生きていかざるを得ません。現状が変わらなければ、これは確実に将来、現実になります。

どうすればこの未来を変えられるか

変えるためには下記の方法があります。

1)女性の活用、移民の受け入れ

2)海外からの資本の受け入れ

3)イノベーションの加速による生産性の向上

1)については、女性と移民は別に議論すべきだという意見がありますが、個人的にはこの話は”ダイバーシティ(多様性)”の問題で語ることができると考えています。日本は世界的に見ても顕著な男根主義社会であり、女性は下に見られるのが当たり前です。中国で仕事をし生活をしてきた自分にとって、日本は今でも厳然たる男根主義社会であると思います。ベビーカーの問題などもありましたし、ワーキング”ママ”という言葉は皮肉にも女性が育児をするものだという考え方が常識となっていることを現しています。移民についても同じです。移民が増えることによって街の秩序が失われ、犯罪が増えるという意見が多く見られます。基本的には”現状の価値観や秩序を変えたくない”という大衆的執着心が非常に強く現れている結果であると思います。

2)については1)と関係していて、海外企業にとって多様性の無い”ガラパゴス市場”である日本に投資することでの効率は全くもって高くありません。中国の大手企業は日本市場に対して興味はあるものの、優先順位は極めて低いそうです。ガラパゴス市場を作り出している理由は国際政治的なものも含めて様々ではあると思いますが、国内の規制が複雑かつ古くなっており融通が利かないということと、日本の消費者が非常に保守的であることが大きいと思います。日本は既に豊かになっており、機能については何でも手に入る中で、ユーザーが新しいモノに対して敏感ではなくなってしまったということでしょうか。中国では老人が喜んでスマートフォンを使い、モバイルから株式市場にアクセスして富を稼いでいます。

3)については少し期待できる部分です。IT系については起業が再び加速し、新しいアイデアに資本が投下される環境が整ってきています。実際、日本市場で急激に成長するベンチャーが出現しています。しかし、あくまでも日本市場です。LINEのMAUは約1億と言われていますがその大半が日本国内のものです。最近では若者を中心として社会起業的な動きが増えており、それはそれで素晴らしいことですが、ビジネスとして経済基盤を支えていくくらいの力強いものがあるかと言うと疑問です。NPOやボランティアとして社会的課題を解決するアプローチには脆さがあります。それは、何らかの経済的基盤のストックを取り崩すことによって成り立っているからです。社会起業が進む一方で、既存産業における大幅な効率化、イノベーションによる利得の増大を両輪で回していかなければ、資本主義社会的には”自己満足”と言っていい世界です。

変えようとしない雰囲気を変える

上記3点に共通して言えることは、日本という国家、社会が”多様性を受け入れず、変わることに対して極めて保守的”になってしまったということです。若者はそういった雰囲気を敏感に感じ取ります。だからこそ彼らは海外にどんどん出ていこうとしています。起業して何かイノベーションを起こそうとしています。日本企業も海外で勝負します。しかし、欧米企業の海外展開と比べて日本企業が勝てる要素は客観的に見てあまりありません。その根幹には、海外事業の展開の仕方です。日本人の若者がいきなり現地に駐在して部下を10人抱えるということはもう現実的ではないのです。なぜなら、現地の若者たちの方が日本人よりも優秀であることが多くなってきたからです。結果として、色々なところで矛盾が生まれて、現地人材を積極的にトップにまで登用する欧米企業に出し抜かれていきます。この日本企業の事例も、”今までの日本式のやり方を変えようとしない”という態度に原因があります。

日本は国家として、社会として”変わることを受け入れる”ことが必要です。多様化した状態を受け入れる必要があります。アウトバウンドについては人、企業も含めて、やり方は旧態依然ですが増えてきたのは良いことです。後は、現在全く入ってきていない人と資本のインバウンド。これを”ビジネスとして”進め、多様化社会に持ち込み、そこから人、社会の変革を起こしていくことが残っているピースです。異質なものが近くにある環境を早い内に経験させる。同質化に圧力をかけるのではなく”違い”を認め合う社会を創る。後5年で、この世界の基盤を築くことができるかどうか、それにより五輪以降の日本の状態が、私たちの子供、孫たちの未来が決まると言っても過言ではありません。人と資本のインバウンド、皆さん、一緒に取り組みませんか?

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