中国KTVが苦境に!大型チェーン店も含めて閉店・倒産が続出。一部は台湾系資本が買収

北京や上海に駐在していた頃、会社の同僚と良くカラオケを歌いに行ったのが「钱柜(Party World)」というKTVチェーン店です。KTVとは日本で言うカラオケ店のことですが、この全国的な大型KTVチェーンが年末から年明けにかけて猛烈な勢いで閉店を加速しています。2月4日のニュースでは、既に首都体育館店、雍和宮店(これは以前行きました)に加えて3店舗を閉鎖し、朝外店では約20名のスタッフが解雇されたとのこと。更に、一部の店では台湾のHolidayが買収、既に台湾人のマネジメントが入っているとのことです。これはこの大型チェーンに限ってのことでしょうか、背景には何があるのでしょうか?「新趨勢新思维」の記事を引用します。


(旧暦の)年末が近づき、また友人と繰り出す日々がやってきました。友人や同期、同級生と一緒にKTVに行くのも悪く無い。ところが、山東省の省都である済南市では、多くのKTVが潰れているのを目にした人は少なくないでしょう。2014年から、「帝凱楽」、「総統」、「香港帝一麦」などが続けて閉店、更に済南市から全国に目を向けると、「銭柜」や「万達大歌星」など大型KTVチェーンが大量に閉店するという現象が見られています。背景に何があるのでしょうか、そしてこれからKTVはどのような道をたどるのでしょうか。

中国KTV

現象:「パイ屋」に変わっていた老舗KTV

最近、済南市仏山街付近に住む女性の魏さんは、友達を連れてKTVに歌いに行きたいと思いましたが、住宅の区画を遮る門から出た瞬間に、近所の「総統」KTVが突然閉店しているのを見つけました。「かなり儲かっていたはずじゃない?どうして閉店しちゃったの?」、魏さんは納得いかない様子でした。

2015年2月6日の午後に、記者は仏山街の「総統」KTVが元々あった場所に訪問しました。既にKTVがあったようには全く見えず、1Fは「パイ屋」さんに、2Fは旅館が使用していました。

付近の住民の紹介によると、「総統」KTVは2014年の早い段階で営業休止に追い込まれていました。建物の契約更新期限になった上に、経営状況が悪く、契約更新のための資金を準備できなかったとのことです。

「総統」KTVの他にも、省内の多くのKTVが閉店しており、売りに出されたり、吸収されたりしています。花園路付近の「帝凱楽」チェーンのKTVも閉店、「香港帝一麦」の開元店も営業を停止、銀座新天地にある「銀座歌唱家」も「高笙KTV」に取って代わりました。2014年、KTVの閉店時代がとうとうやってきたのです。

原因その一:若者世代での人気低下

長年、食事をした後にKTVへ行って喉を枯らすというのは、若者にとって真っ先に思いつく選択肢ではありませんでした。しかし、ここ数年、新しい刺激を求めるやや退廃的な若者がKTVのメインの顧客となりました。

「数年前は、クラスメイトと飲み会をした後は必ず歌を歌いに行きました。しかし、ここ1, 2年はみんなで遊ぶ内容も場所も多様化し、今ではゲームセンターで「三国殺」や「殺人遊戯」などで遊びますし、最近特に流行っているのは、密室からの脱出ゲーム、これはかなり面白いですよ」。山東師範大学の3年制、高俊(仮名)はこう語りますが、それでもKTVには行くそうです。ただ、以前よりも頻度が減ったとのこと。

この他、カラオケのスマホアプリの流行が伝統的な店舗型KTVに一定の影響を与えています。「唱吧」、「K哥達人」などのアプリを使えば、スマホ上で直接カラオケを楽しむことができる上に、採点機能や、自分の歌を友人にシェアする機能などがあり、ソーシャル色が強まっています。ある調査によると、77.3%の人がKTVへ行く頻度が下がったと答え、81.1%の人がKTVには飽きて、他の遊びを楽しんでいると答えています。

原因その二:官僚接待規制後、洋酒のボトルオーダー率が15%低下

業界人の話では、政府が「官僚接待」を規制した後、多くの企業・機関が外食や、接待の機会を大幅に減らし、以前はいくつかのKTVは法人接待部門を持ち、直接、宴会や接待の業務を請け負っていたというような状況が、かなり少なくなっているとのことです。

企業・機関の接待費用の現象は大きな負の要因です。「以前は多くの企業・機関が接待をしていました。宴会娯楽活動の場所にはKTVが選ばれていました。しかし、近年の倹約・節約の雰囲気の中で、このようなお客さんは減りました」、とあるKTVのフロントは話します。統計データはありませんが、領収書の発行枚数は大幅に減っているそうです。ある調査によると、接待規制導入後、KTVでの洋酒のボトルオーダー率は15%低下したそうです。

原因その三:音楽の権利費用が1年で10数万元(200〜400万円)に

「たった20元で、260元分の価値がある昼間3時間無料券」、済南市のあるKTVはインターネット上の団体購買サイトにこのような商品を掲示しました。高給な内装、黄金の床、高価な設備にも関わらず極めて安価な商売、これこそがKTV業界が直面する困難です。

「現在、比較的大規模なKTV店は皆団体購買を使っています。団体購買は基本的に儲け度外視で、場合によっては損を出します。仕方ないんです。他の店舗がやって、自分のところがやらなければお客さんは来なくなります。団体購買で来るお客さんには、ドリンクを沢山消費してくれることを祈るのみです」、環状二号線沿いにあるKTVの範オーナーの言葉です。

収入は減る一方でKTVビジネスのオペレーションコストは年々増加しています。「最大のコストは家賃。KTVのような娯楽施設は、その他の場所に比べて家賃が高いのが一般的、しかもそれは毎年値上がりしていきます」、範さんは言います。彼の店は、家賃だけで毎年約100万元(2,000万円)、総コストの1/3を占めるそうです。

済南市にある比較的規模の大きいKTVは20数店舗あります。小型店は数えきれません。業界通曰く、競争環境は日増しに苛烈になり、価格競争を引き起こし、多くのKTVが苦境に立たされているとのこと。

その他に、音楽知的財産権保護の動きがKTV経営者へのコスト負担を増しています。あるKTVの責任者である杜さん曰く、2008年以降版権費の支払いが始まり、毎年10数万元(200〜400万円)の費用がかかっていて、負担は非常に重くなった、ということです。

出口戦略:ソーシャライズ、パーソナライズ

「我が国の娯楽文化産業の発展スピードは速く、大衆のニーズは非常に旺盛です。KTVで歌うことは大衆にとって重要な娯楽のひとつですし、市場は非常に大きい。一方でKTVの閉店、倒産が伝えられていますが、これは正常な市場経済活動の結果であり、業界全体の将来を否定すべきことではありません」、山東大学社会学享受の王忠武さんは言います。

「現在、中国には娯楽文化産業の供給過剰の状態です。KTV業界も長年の発展を経て供給過剰に陥っています。業界で生き残るためには、かならず特色を持ち、個性化する必要があります。そのためには、経営者は消費者の娯楽に対するニーズに感心を強める必要があります。サービスを広げていくのであれば、消費者が歌う前、歌っている間、歌った後にどのようなニーズがあるのかを理解したうえで、多様なサービスを考え、より良い体験を提供することが必要でしょう」、王忠武享受の言葉です。

KTVオーナーの杜さんは、KTVにはまだ巨大な市場があります。業界全体としての黄金期はもうやってきません。しかし、特定ブランドとしての黄金期はまだ残っています。「パーソナライズしなければなりません。KTVのブランド化は今正に正しい方向に向かっているという研究もあります」。この他に、マネジメントの専門家を呼びこむことも、成功要件となるでしょう。

業界専門家によると、将来のKTVの発展方向は、パーソナライズとソーシャライズにあると言います。KTVが歌うだけの場所ではなく、インターネットを通して人と交流する場となり、ソーシャル的な側面を強めていきます。例えば、アプリで録音した自分の歌をスマホ上でwechatの友人にシェアしたり、KTVが提供する様々なアプリを楽しんだりというような環境を創ることです。また別の専門家は、KTVでは他の様々な娯楽を融合する場となり、映画館、ファッション、カフェ、書店サービスなども取り込んでいくのではないかと語っています。


結構色々な示唆があります。

・若者のレジャーの多様化(スマホも含め)
・企業・機関での「接待規制」の影響
・コスト(家賃、音楽著作権費)の上昇
・店舗の供給過剰による価格競争激化
・パーソナル化とソーシャル化

KTVの美女

習近平時代になって官僚や国営企業に対する接待の締め付けが更に厳しくなっていることが娯楽業界にマイナスの影響を与えていることが分かります。若者もレジャーが多様化する中でカラオケに行く頻度が下がっています。家賃は高騰、著作権については払うのが当たり前なので今までがおかしかったとしましょう。

一方で、中国では既にスマホ上に自分が歌った曲をアップして互いにシェアをしたり評価をするサイトが人気を集めています。中国にはCDショップなどがほとんどありません。日本のようにCDを購入して楽しむというところを飛び越えて、デジタルで楽曲を楽しむ文化にいきなり入っています。一方で、安くないチケットを購入してライブを楽しむ層は増えています。デジタル時代にいきなり突入した国であるからこそ、デジタルとリアルの垣根をあまり感じずに、相互の壁を乗り越えて楽しむ中国の若者のニーズをどう捉えていくか、日本のレジャー、コンテンツ産業としても注目すべき動向であると思います。