Apple Car?BYDが京都に電動バスを5台納入、王伝福が考える3つの夢

日本のバス会社である京都急行バス株式会社が2015年2月23日より、京都の路線バスにおいて電気バスを営業運行することになり、近畿初の試みとなりました。このバスは中国最大のEVメーカーでもありリチウムイオン電池メーカでもある「比亜迪(BYD)」グループが製造した「K9」で、5台が営業運行されるそうです。総重量が非常に重いため、国土交通省は従来の規制を臨時に緩和して認定をしているというから、かなり大胆なことまでして導入を進めたようです。

 

国土交通省のプレスリリース

 

このニュース、あまり日本で話題になっていませんね?しかし、中国では結構話題になりました。ハイブリッド、PHEV、EVの先進国である日本から電動技術でお金をとることができたというのは、中国側、そして古くから民間資本として孤軍奮闘してEV開発を続けてきたBYDにとっては感慨深いものがあるはずです。一体何が起こっているのでしょうか?こちらの記事より。

 


 昨日(2015年2月23日)に中国BYD自動車が製造するK9が正式に日本で採用され、京都で営業運転に入ることが発表された。ハイブリッド車、EVが非常に発達する日本においてBYDが承認された。これは極めて得難いことだ。ネット上の評価では、「中国の自主ブランド自動車メーカーが日本から高価なエンジンを買っている時代に、BYDは日本人からお金を稼ぐことができた」と言う意見も出ている。様々な評価を気にするためかBYD側は徹底的に緘口令を引いている。

K9

BYD自動車のK9電動バスは車長が12m、総重量が18t。搭載する電池はリン酸鉄リチウムイオン電池で、BYD自身が自主開発したものでありコア技術の塊である。伝統的な内燃機関系自動車の駆動システムとは異なり、K9のホイルには全てモーターが備わっている「インホイールモーター」を採用する。このモーターの最大出力効率は90kW、最大トルクは550Nmを記録。販売価格は400万元(約8,000万円)である。

 

2014年1月9日、2ヶ月のテストを終えて、米国ニューヨークメトロポリタン交通局はK9のテスト報告を発表。結果は「Outstanding(卓越している)」とされ、具体的な測定結果は下記のようなものであった。

1. テスト期間の合計走行距離は2,383km
2. フル充電下での航続距離は225km, 30時間。
3. 1.6kmあたりの運転コストは0.2〜0.3ドル(LNG, ディーゼルの場合1.3ドル)。


 

総重量18t、販売価格は8,000万円、この辺りの数値が驚きです。北九州では韓国製のEVバスが走っているとの記事もありましたが、この価格で購入し、かつ電池重量の負担でこれだけ重くなった車重を国土交通省が緩和認定して導入しているというところ、何か大きな力が働いていることを感じさせます。

 

さて、このBYDグループですが、創業者であり現在は総裁兼董事局主席となっている王伝福(安徽省生まれ)は中国の起業家の中でも伝説上の人物です。1995年に電池メーカーとして創業し、自動車会社の買収を通じてPHEV、EVの領域に参入。2010年に日本の金型メーカーであるオギハラの館林工場を買収したことや、ウォーレン・バフェットが出資していることで知っている方もいらっしゃるかもしれません。彼の家庭は貧しく、兄が18歳の時に弟を進学させるために学業をやめて働きに出てお金を稼いだという話が残っています。

 

その王伝福が2014年の10月にメディアのインタビューを受けた際に、語った会社の戦略についての話がありましたので、その全文を下記に訳しました。

 


技術は戦略のためにあります。戦略は製品・サービスのためにあります。製品ひとつで失敗したとしても関係ありませんが、戦略で間違うと挽回することは非常に難しくなります。中国企業が保有する技術力は世界とそれほど違いはありません。私たちは長い間、落ちぶれ続けてきただけなのです。現在、私たちが外国人の先を走っているということについて、誰も信じてくれません。内燃機関系の伝統的な自動車もしくはバスは、世界で部品を購買して中国に持ち帰って組み立てをします。しかし、電動バスに至っては、世界で部品を調達したとしても完成させることはできないでしょう。BYDの光るところは電池のR&Dです。ここに1,000人以上の研究者がおりまして、数の上から言えば世界最大です。日本の電池メーカーにはわずか300〜400名しか研究者がいません

 

BYDの電動化の取り組みはどのレベルでしょうか。我々のEV戦略は「7+4」で説明することができます。

7っの領域は都市領域に関するもの、公共交通、タクシー、自家用車、長距離バス、環境衛生車、2種類の物流車両です。物流車両は一般商品物流に使われる車両と、建築材料(セメントなど)を輸送するための車両に分けました。

他の4つは専用車両、空港、港湾、鉱山、倉庫です。例えば電動フォークリフトがあります。現在、フォークリフトには電動車の選択肢があります。しかし、電池寿命と倉庫の中で充電することの安全性の確保が不十分です。私たちは、将来3〜5年で電動フォークリフトを需要が100億元(2,000億円)規模となることを予想しています。

 

3度(中国の電力購入単位)の電気は1.8元、1リットルの油が7.5元です。BYDの目標は3度の電力で1リットルの油を代替することです。両者の効率は同じにすることです。

現在、都市部ではPM2.5が危険なレベルです。自動車の排ガスの1/3は自家用車、もう1/3が公共交通、残りの1/3が物流車両から排出されます。もし、都市内の輸送電動化が実現すれば、排ガスの排出量は大量に下がります。自家用車、マイカーについても私たちは諦めません。むしろ、なかなか良い仕上がりになってきています。ハイエンドでは「腾輝(EVの名前)」、入門用に「泰」があります。2014年末には「唐」を、2015年には「漢」をリリースする予定です。2015年までにBYDの新開発製品は全て「漢」をベースとし、内燃機関系を捨て去ります。そう、今我々が持っているEVは全て内燃機関系のベースを改良したものです。

 

技術によって自動車は更に安全になります。今後5年、皆さんは驚くことになります。EVはより人によって操作しやすくなります。中国交通部のデータによると、交通事故の60%はコントロールを誤り、道路の軌道を外れたことが原因です。自動車事故は一瞬にして起こります。メカニカルコントロールを考えると反応速度は6秒ですが、電子制御ではミリ秒単位でコントロールが可能です。電子制御時代、モーターとブレーキの速度は高速です。自動車のタイヤが軌道を外れてから、従来の位置に戻すまで500ミリ秒しか必要ありません。その間、速度、スライド、トルクにより車の姿勢を制御します。このくらいの時間があれば車の姿勢を簡単に制御することができます。電子制御と機械(メカ)制御により車の安全性は飛躍的に向上します。どれだけの人の命を救うことができるでしょうか?どれくらいのGDPを創ることができるでしょうか?この価値は計算することができます。BYDに20mmを与えてくれれば、600ミリ秒の制御を実現します。

王伝福

 

 icon-arrow-right EV以外に太陽光発電と蓄電、BYDが追求する夢

計算してみましょう。人類の歴史は200万年と言われていますが、化石燃料を使うようになった歴史はたったの数百年です。1750年から現在、ワットが蒸気機関を発明してからわずか250年、これは人類の歴史上何万分の一という期間です。一方でこれから化石燃料がどれくらい持つのか計算することもできます。ガソリンは100年、石炭は100年未満、原子力のウランも100年程度と言われています。更に、資源は地政学的に不均衡です。地球上の戦争の90%は資源を巡るものだと言われています。もし私たちが今の消費習慣を変えることができなければ、将来の化石エネルギーを使い尽くしてしまうことになるでしょう。なくなってしまえば、昔の農耕時代に戻ればいいという人もいます。しかし、私たちはもう後戻りすることはできません。簡単な例を挙げましょう。私たちの食料生産は現在化学肥料に頼っています。化学肥料の減量は化石資源なのです。こういった状況は変えなければなりません。人類が唯一頼ることができる持続可能なエネルギーは、太陽光なのです。

 

もし、世界中の太陽光エネルギーを1時間集めることができれば、世界中で1年間使用することができます。もし中国大陸にある砂漠の1%に太陽光パネルを敷き詰めることができれば、中国国内にある全ての発電所を閉めて構わないのです。確かに、太陽光エネルギーは現在非常に苦しい状況にありますが、私たちは諦めません。業界が転身する際には力のある会社が標準を決め、先を走ることができるのです。

 

もう一つの夢は、「蓄電」です。現在採用されている蓄電方式は揚水(ダム)式で、効率がとても低い。どの地域にもダムを建設することはできません。しかし、電池を用いることが根本的な解決ができます。

1. 電池の放電効率は90%以上
2. 電池の反応速度は非常に早く20m秒程度
3. 電池は密閉式でサイズも小さい

BYDは「蓄電」に関して戦略的計画を立てました。EVを電池と見立てる方式です。将来は各家庭に走行可能な電池があるというイメージです。私たちの調査によると、中国電網(中国最大の発電、送配電会社)では異なる時間における電気料金に差があります。であれば、夜に3毛/1度程度の料金で充電をして、朝に9毛/1度で売電すればいいのです。そうすれば送配電網側から売電によってお金を稼ぐことができます。送配電網側もピークカットができるので喜びます。EVを電池にするためのハードと技術をBYDは全て自社で保有しています。今、解決すべきなのはビジネスモデル、利益を産むかどうかです。各方面に受け入れられるかどうかです。私たちのEVの未来の定義は、交通手段であると同時に、蓄電可能な発電所なのです。


 

 icon-arrow-right 編集後記

世間ではAppleが自動車の製造を目指していること、そのために電池メーカーから大量のエンジニアを引き抜いたことなどがニュースになっています。BYDもそのような時代がありました。2009年頃から中国国内ではスター企業でした。中国のEVマーケットは世界を牽引するという予測も出ていました。しかし、充電ステーションや電池の安全性の問題などから、一時の勢いは衰えています。また、彼らが残り2本の柱としている太陽光と蓄電についても、太陽光のバブルが弾けて以来、あまり良い状況ではありません。ですから、最近BYDのニュースは中国国内でもあまり聞かれることがなくなっています。

 

寺村は実はBYDの深センの工場に訪問して、F3DMというPHEVに載せて頂いき、構内で運転する機会を頂いたことがあります。その時にインタビューした相手はエンジニアの方でしたが、非常に誠実な方で、技術に対する想いはしっかりしたものがありました。それ以上に、自分たちが技術で世界を変えるという気概を持っているのが伝わってきたことを覚えています。その頃には飛ぶ鳥を落とす成長企業だったBYDが影を潜め、IT系の企業がどんどん出てくる中で、再び京都のバスに採用されるというところで懐かしい名前を思い出しました。王伝福の話の中からは、自動車の電子制御技術についても触れています。自動運転までは話題にしてはいませんが、水面下で研究が進められている可能性は高いです。Apple Car, Google Carと並ぶ本命はここにもいることを皆さんお忘れなく。

 

 icon-arrow-right 関連資料:

新たな時代に向かう中国自動車産業の課題(株式会社野村総合研究所)

 

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