中国石油と中国石化が合併?北車、南車の合併以降尽きない国有企業同士の合併話、注目は全人代以降
ニュースを流し読みしていて、中国石油(ペトロチャイナ)と中国石化(シノペック)の合弁に関するニュースが目に入り、この記事を書きました。テーマは、国有企業の大型合併です。もちろん通常であれば独占禁止法の対象になるであろう案件です。中国の石油大手は3社しか存在せず、すべてが国有企業で、そのうちの2社なのですから。先日、滴滴打車(テンセント系)と快的打車(アリババ系)のタクシーアプリの両巨頭が合併を発表し、市場シェアがほぼ100%になるということで、独占禁止法に抵触する可能性があるのではないかということが話題になっていましたが、この2社はタクシー配車アプリの比にならないくらいに巨大な規模のマーケットシェアを保有しています。ですから、自分のように中国国有企業と付き合いがあった人間にとって、独禁法に触れるような合併のニュースがあったとしてもあまり驚きません。しかし、さすがに石油メジャー2社となると驚きを禁じえません。
ところが、国有企業の大型合併、実は昨年末に既にひとつの案件が成就しています。中国南車と中国北車の合併です。この2社は中国における鉄道車両メーカーの2大巨頭で、明確な数値は手元に持ちあわせませんが、国内シェアのほとんどを握っているはずです。その2社の合併が承認されていることから、今後何が起こってもあまり不思議ではありません。古いところだと、首都鋼鉄と鞍山鋼鉄の合併など、鉄鋼業界の再編についても国有企業同士の合併という形で政府主導で行われました。
最近の中国国有企業は総じて上場を目指します。実際に、既に上場している会社がかなりあります。ですから、株式市場に与える影響が非常に大きいのです。実際、北車と南車の合併後、両社の株価はストップ高を記録しています。では、今年は何が起こるのでしょうか?かなり大きな再編がありそうです。中国新聞網の記事を引用します。
中国石油(ペトロチャイナ)と中国石化(シノペック)の合併に関する新聞記事が、2月25日に上場企業である両社の株価が急騰した。これ以前に、通信業界、鉄道業界、原子力業界などの寡占業界で嘘か真か分からない情報が報道され、株式市場に動揺を与えた。専門家によれば、国有企業は30~50社にまで再編する計画があるとのことで、企業数を現在の60~70%削減することを意味する。2015年の株式市場におけるメイントピックのひとつは、この国有企業改革であることは間違いない。
大型国有企業合併の動きが頻発、真偽の情報が市場を撹乱
春節期間を除けば、A株市場には、この「2つのオイルタンク」合併の情報以外に、通信、鉄道など多くの業界にあまねく合併の話が伝えられている。しかし、「南北車(中国南車と中国北車、共に国有の車両製造メーカー)」について、市場側が感情的にも論理的にも落とし所はあるとしたのに対して、チャイナユニコムについては理解することもできないだろう。中国工業情報部には一部の噂について説明をし、事の正常化を図っているが、株式市場は沸騰し極端に跳ね上がっている。
2015年2月中旬に、海外メディアが中国電信と中国連通(チャイナユニコム)との合併と、中国移動(チャイナモバイル)と中国広電網(通信設備プラットフォーマー)との合併の可能性を報じた。この情報を受け、チャイナユニコムと、中国広電網は午後にはストップ高となり、市場が閉まる直前に若干落とした。チャイナモバイルと中国電信の香港株はどちらも上がり続けている。インターネット上の合併に関する伝聞について、中国電信とチャイナユニコムの関係者は、「合併の情報については全く聞いたこともない」と繰り返している。チャイナモバイルのスポークスマンによると、会社としてそのような通知は発表されていないとしている。
2014年9月4日、中国北車と中国南車の株式が取引停止となり、市場に両社の合併の憶測を呼んだ。その後、双方が同時に、ハイレベルの当局関連部門に統合に関連する法案を提出していることを発表。そして、10月28日、多数のメディアで、北車と南車が合併することを確認したことを報道。12月31日から中国南車と北車の株価は6日間連続でストップ高となった。
南車と北車の合併以外に、2014年4月25日のメディアにて、中電投集団(中国の発電企業グループ)と国家核電(原子力)技術公司の統合に関する法案が報道された。同年7月17日、国家核電のスポークスマンにより、この法案が既に国資委(SASAC:国務院国有資産監督管理委員会:国有企業の管理を司る最高行政機関)に報告されていることが明らかになった。2015年2月4日、中電投のグループ会社である上海電力など複数の上場企業が、この2社の統合について既に国資委が通知を行い、具体的な作業に入っていることを伝えた。
全人代の後に国有企業改革法案が出され、60~70%の削減目標が提示される
最近のメディアの報道によると、国有企業改革のトップ法案は既に何度も議論と修正を重ね、全人代の後に公布されると言う。この改革は業界の参入障壁を緩め、競争領域ににて資本制限がされてきた株式比率をより一歩緩めることが目標とされている。注意すべきは、31省で分割開催される人民代表大会において、2015年の地方国有資産改革の青写真が全会一致で採択されたことだ。これには、「混合所有制(国有企業が民間企業の出資を受け入れる制度)改革」、「兼并重組(統合による組織再編)」、「分類改革(行政、経営、公益などの分類の改革)」、「整体上市(上場)」、「国有資本投資公司テストケース」などの内容が盛り込まれており、これをテコに24兆元(480兆円)の市場価値を創出するとされている。
更にこれ以前、中国国務院発展研究センターの企業研究所が2015年1月に発表した「中国企業発展報告2015」の中で、経済成長が原則するに伴い、国有企業の低い生産性の問題が再び顕在化し、いくつかの国有企業については重大な経営危機に陥る可能性があるとされている。同レポートでは、国有企業改革の緊急性と重要性が指摘されている。2014年の国有企業改革の歩みは非常に遅かったが、各地で論争を引き起こし、地方の国有企業改革法案が次々と提出され、国有企業改革のトップ法案が提出される基礎となった。2015年の国有企業改革が実質的に進展するであろう確かな証拠と言えるだろう。
中国企業改革と発展研究会の副会長である李綿も直近曰く、国資委が改革任務のリーダーシップに責任を持つという観点から見れば、国有企業の合併と再編成に関する数値目標が完全に明確になったと言える。このような再編は十分な驚きに足る。国資委が管轄する国有企業は中央系国有企業で現在112社存在する。これを、30~50社に再編するということだから、企業数は60~70%減らす必要がある。
株式市場側の国有企業改革開放制度に対するボーナスは過小評価するべきではない。国有企業改革というテーマは2015年の投資材料として最も爆発力があるとい市場の共通認識が形勢されている。マーケット関係者は、「国有企業改革は最大の投資材料のひとつです。しかも、今年は重要な進展があるとのこと。資金需要が注目する中で、市場が躍動する可能性はまだまだあります」と言う。
編集後記
要するに政府関係者のインサイダーの臭いがプンプンするということです。中国の全ての国有企業は、国資委(SASAC:国務院国有資産監督管理委員会)、すなわち中国の行政機関の最高権力を持つ国務院の傘下にあるということです。今回の国有企業改革は、112社あるいわゆる「中央系」国有企業を30~50社に統合するということです。日本の業界大分類に即して13の産業区分があると仮定すれば、大きく括って同一産業内に10社程度の企業が存在すると仮定すれば、どの会社が合併対象となるかの判断はつきやすいと思います。更に、これらの企業のほとんどは上場しています。すなわち一般の人でも株式を購入することができます。ですから、国内に閉じて売買材料に乏しい中国の株式市場にとって、大きな材料となります。実際、大型国有企業合併のニュースは事実であってもそうではなくても株価を大きく動かします。仮に、行政側で国有企業の合併の政策判断がなされたとして、その情報が人づてに、一般のそれなりに情報をとり得る立場の人間に流れると考えるのはごく普通のことです。
ちなみに、寺村は、中国北車、中国石化とはコンサルティングプロジェクトベースで仕事をしたことがあります。国有企業の人間は人情味の熱い人が多く、一方で仕事については、割りと組織効率が悪く、大企業的な動き方しかできないところが特徴的だと感じました。地方の人民代表の会議にて、地方国有企業も改革も含めて、全会一致の選択がされているという状況を考えると、全人代以降、かなり大きな動きが出てくる可能性もあります。それによって、株式市場は大きく左右されることになりますが、それまでに、一度、国有企業の分析をすると面白いかもしれません。検討してみます。ともかく、統合される可能性のある国有企業株は買い推奨になりそうだということですね。