ユニクロ問題の背景?フォックスコンと中国政府当局との違法労働をめぐる激しい応酬

「劣悪な環境で安い賃金で長時間労働させている」だけで思考停止してませんか?

中国では「労働法実施20週年」を迎え、2日に当局の代表が記者会見を行い、iPhoneの生産などを行う巨大OEMのフォックスコンを名指しで非難。違法な過剰労働と、従業員の自殺に因果関係があるとまで言い切りました。この翌日、フォックスコンは反論の声明を発表し、残業と自殺の因果関係を完全に否定、当局の企業に対する見方と見識を疑うというようなかなり厳しく論じています。

まずは、新京報から、当局側の記者会見内容を見て下さい。


 

新京報が伝えるところによると、2015年2月2日全国総工会(全総会)書記所の書記で法律工作部部長の郭軍が、フォックスコン(富士康:iPhoneのOEM生産で有名)など一連の企業が長期に渡り、労働者に対して長時間の残業を課し、一部の労働者に心理的、もしくは健康上の問題が現れ、過労死や自殺を引き起こしていると指摘しました。

これは、郭群が全総会の新聞記者発表会で述べたものです。現在、中国の労働関係の発展状況の中で、従業員に対する労働法違反や、権益を侵害する案件が大量に存在し、当局として労働行為に対する管理監督を強化、工会(労働組合)に関する法律の監督への意見書や建議書制度を設け、大規模な違法案件を明るみに出していく、としました。

同時に、全総会は、2014年10月以降に発生した労働関係領域における違法案件と労働事件、特に女性の権利平等や子供の労働徴用などについて明らかにしました。

中国の女性工員の朝礼

フォックスコンの長時間違法労働

一部の企業は労働者に毎日10数時間の労働を課し、休日も非常に少ない状態でした。一部の民間企業、特に中小企業では有給休暇制度がありませんでした。フォックスコンなど一連の企業が長期に渡り、労働者に対して長時間の残業を課し、一部の労働者に心理的、もしくは健康上の問題が現れ、過労死や自殺を引き起こしていると指摘しました。

「多くの地域において告訴された案件を調査したところ、全ての案件について違法性を追求することはできませんでした。違法案件に対する罰則も緩く、違法に人を雇用する企業への抑制には不十分で、文字通り”木桶理論(木桶では最も短い板のところで水が溢れる)”の状態でした」。

突出する性差別問題

現在、労働問題で従業員を雇用する企業に突出して多く見られる問題は、性差別の問題です。

この記者会見では10の典型的な違法案件と労働事件を列挙しました。その中で、2014年に浙江新東烹飪(料理)学校で起きた女性平等就業権の侵害が紹介されました。河南省戸籍の女子大学生、郭さんが就職活動をした際に、構内の就職掲示板に掲示される多くの料理学校の求人情報に「男性に限る」との条件が記されており、応募することができませんでした。郭さんは、杭州市西湖区人民法院に提訴、法印は料理学校の行為は性差別であり、郭さんの就業機会均等の権利を侵害したとして、精神的な賠償金2,000元(約40,000円)の支払いを求める判決を下しました。

給与の遅配は道徳の問題

農民工(出稼ぎ農民)への給与遅配問題は、単純な法律的な問題だけではなく、基本的な道徳、道義的な問題です。まず企業に責任があり、そして政府関係行政部門の責任もまた大きいと考えられます。

非常に酷い、そして悪質な給与遅配問題には、厳しい手段で解決に望むこと、場合によっては刑事責任の追求を行うと郭群は述べました。

さて、給与遅配が極めて突出している地域には、工会が従業員給与保証金制度を設立され、資金や建設プロジェクトに問題が出た際に、従業員の給与の一部をそこから補填しています。また、企業の経営において問題が発生したり、資産が部分的に変化した場合、工会もしくは政府が先行して貸出を行い、従業員が給与を支払う原資とし、その後に企業が償還するという形態も出現しています。

2014年の違法労働における典型的な案件

深センで2社が不法に子供を徴用し従事させた件

 2013年末、深セン市可立克科技股份有限公司、德林克电子有限公司はが不法に子供を労働させているとの告発がありました。2014年1月、この2社は一定期間内の業務改善命令が出され、それぞれ1万元(約20万円)、3.5万元(約70万円)の罰金の支払いを命じられました。

江苏鹏越电子科技有限公司が妊娠している女性へ辞職強要

2012年初頭、江苏鹏越电子科技有限公司で行政秘書として周さん(女性)を採用。2014年に彼女が妊娠後、会社は周さんに対して暫定的な休暇を告知し、その後辞職を要求され、呑まなければ重労働となる第一線の生産ラインに配属することを告げられました。当局は企業に期限付きの業務改善命令を出し、人民法院が強制執行を行いました。


最後の方は他社事例となりましたが、冒頭で大きく名前を出されたフォックスコンとしては黙っているわけにはいきません。この記者会見の翌日に、下記のような反論の声明を発表しました。


2015年2月3日(上記の記者会見翌日)、フォックスコンが人民財経に語ったところによると、1. 従業員の残業に関しては事実で「フォックスコングループ内部の全ての企業にとって従業員の残業問題の解決が頭の痛い課題である」、2010年に発生した従業員の飛び降り自殺問題以降、企業は多くの予防・救済措置を導入してきている、3. 関係当局にはフォックスコンが成長と進歩を遂げていることを認めて欲しい、と声明を出しました。以下、全文です。

foxconn工場

フォックスコン集団としての(全総会)郭群殿に対する説明

昨日、多くのメディアで全総会書記所の郭群書記の記者会見が報道されました。その中で、郭群殿はフォックスコンの名前を挙げ、「フォックスコンなど一連の企業が長期に渡り、労働者に対して長時間の残業を課し、一部の労働者に心理的、もしくは健康上の問題が現れ、過労死や自殺を引き起こしている」と指摘されました。郭殿の指摘に対して、フォックスコングループとして下記のような説明を行い、検討を頂きたい次第です。

第一に、私たちフォックスコンとそのグループに所属する製造業は全面的に従業員の残業問題に直面しています。ひとつの方法として、従業員が最大に残業した場合に匹敵する給与水準にまで引き上げることです。もうひとつは、企業として従業員の残業時間を国家の法律・規制に見合ったところに的確に抑え、従業員の権利を保護することです。これは、全ての製造業がずっと直面し続けてきた問題であり挑戦です。フォックスコンは、従業員の残業について、厳格なシステムを作り管理するための政策を執行し続けてきました。まず、従業員の基本給と残業手当を引き上げ続けてきました。次に、「6日働いたら1日休み」の原則を厳格に執行し、従業員に十分な休息時間を与えてきました。同時に、フォックスコンは、自動化の能力を引き上げ続け、従業員を猛烈な忙しさから開放し、重複する仕事をなくす努力をし続けてきました。

二つ目として、皆さんはご存知の通り、2010年にフォックスコンでは従業員の不幸な事件が発生しました。私たちは永遠に心を痛め続けています。しかし、郭群殿が、従業員の残業と、「一部の労働者に心理的、もしくは健康上の問題が現れ、過労死や自殺を引き起こしている」ことに一種の因果関係があると仰った際、私たちには心の痛みを超えて、驚きました。既に、多くの専門家や、国家人文部、全総会など各レベルのリーダーたちがフォックスコンを調査し、状況を理解し、問題解決を支援して頂いることです。しかるに、郭群殿は、未だにフォックスコンのいかなる工場からも提示されたことのない因果関係を持ちだして、あまりにも性急な議論をされています。2010年依頼、私たちは自ら至らない部分を改め続けてきました。企業として物質的なものだけでなく精神的に至るまで従業員を支援してきました。私たちは率先して企業内部に「スタッフケアセンター」を設置して、心理コンサルタントを招き入れ、スタッフに対して24時間の精神的ケアをして参りました。更に、毎年億元(20億円)を超える「相互ケア」経費を捻出し、数万を超える生産ラインをカバーして参りました。

最後に、百万人を超える従業員を抱える製造業として、私たちは、まだ完全ではないことを理解しています。しかし、私たちはずっと努力し続けて参りました。郭群殿には、私たちを名指しで批判され続けるだけでなく、「基本へ立ち返って」いただき、企業と従業員の心の声を理解し、企業の不備を監督し、どうか企業の成長と進歩に目を向けていただけるように期待しております。

フォックスコングループ


日本では、ユニクロがNGO/NPOから中国の下請け工場における過酷な労働環境を指摘されたばかりです。これに対して、日本では公的に私的に様々な意見が飛び交いました。しかし、中国の現実はこういうことです。もちろん企業側も従業員を如何に効率的に活用していくかを考えるでしょうし、従業員側も如何に少ない基本給を上げるか、残業代で補填するかを考えています。また、その関係性は、企業、従業員、そして監督当局の努力によって、その速度は速くないかもしれませんが、いい方向には向かっていることは間違いありません。

また、そのように「安くて、良い商品」を求めているのは、間違いなく消費者です。そこにはもちろん日本人も含まれています。製造業のグローバル化が進んだ世界において、例えば日本にいるiPhoneの消費者と、このフォックスコンの従業員とは、利害をベースとしたサプライチェーンで繋がっているのです。

「劣悪な環境で安い賃金で長時間労働させている」というのはもちろん事実だと思いますが、ひとつの見方に過ぎませんし、何よりも時間(改善)とサプライチェーンの要素が含まれていません。特定の企業の名前を挙げて、ひとつの見方を押し付けるというのは、NGO/NPOとしては非常に政治的な効果のあるやり方です。しかし、そこを指摘された企業側としては、かなり苦しい理屈を捏ねる必要がでてきます。

ここでは解決策が何かはあえて提示しませんが、こういう観点で議論し、行動していくことこそが重要なのだと思います。