世界から起業家が集まる中国上海のクロスボーダーピッチイベントで切実に感じた日本の課題
XNode Pitchingとは?
XNodeをご存知でしょうか?紹介は上記画像をクリックした先のウェブサイトを見ていただくとして、僭越ながら簡単に紹介をすると、
- 起業家向けコワーキングスペース、アクセラレーター
- 中国・日本人の起業家向けにサービスを提供
- 中国・日本のエンジェル、VC等に投資先発掘の機会を提供
- 中国人オーナー、中国人・日本人が運営
- 場所は、上海市(複数ヶ所)と蘇州市
というものです。今回、上海市の静安寺で新しいコワーキングスペースがオープンしたことを記念して、起業家ピッチイベントが開催されました。寺村は、運営者の一人である田中さんからの招待で参加しました。
イベントの場所は、北外灘(The North Bund)で、いわゆる観光客で有名なThe Bundの北、いわゆる中国人爆買い旅行客が船出をするクルーズセンターにあり、屋上からの長めは浦東地区の高層ビル群を一望できる素晴らしい場所でした。日本と中国の起業家と投資家に機会を与えるテーマも含めて、これだけでもワクワクするでしょう?実際の内容はどうったでしょうか?
壮大なスケールで与えられたステージ
見てください!大盛況でした。前のステージは当然ピッチをする方が使います。アリーナ側の最前列には投資家がレビュアーとして座っています。ピッチ者に与えられた時間は6分、そしてレビュアーによる質疑応答時間が6分。ポイントは、
- ピッチ者は中国はもちろん、日本、韓国、米国から
- 投資家は、中国のVCファンド、そして日本からはドリームインキューベーターが
面白いでしょう?
他にも協力者として香港のファンドや、デロイト、ローランドベルガーなどそうそうたるメンバーが招待されていました。
なぜ日本陣営は厳しいのか?
中身はどうだったのでしょう?僕は個人的に日本のピッチャーが劣勢で残念でした。そして、相対的な事象とは思いますが、中国・韓国ベンチャーのピッチが本当に素晴らしかったのです。その理由がどこにあるのか考えてみました。
- 日本人のテーマはニッチ過ぎる
- 投資家への訴求ポイントが弱い
- ピッチに慣れていない
- 言語の弱さ
この4つです。
日本人のテーマのニッチさ
一番目のテーマについて。今回のテーマの一つはアニメがベースの擬似恋愛ゲームでした。日本人でもニッチなテーマですから、中国人の投資家、徴収には刺さりにくいのは当たり前ですよね。ピッチャーにテーマを変えろというのは本末転倒ですが、中国の投資家に向けたイベントという状況を考えるとやや調査不足だったのかなという感は否めません。
投資家への訴求ポイントの弱さ
上記の日本ベンチャーは既にサムライインキュベートからの出資を受けていた(はず)のですが、結果としてピッチのゴールとして中国でのパートナー探しという位置付けになっていました。中国人投資家の期待利回りは非常に高く、寺村が知るところでは10%以上を要求することが普通だそうです。そうした、投資家達の前で、リターンを提供しないピッチ内容だとどうしてもニーズがマッチしません。
実はこれは中国人のピッチャーにも当てはまる話で、ピッチ内容のポイントとして財務数値の開示と、出資額、それを管理するためのKPIに触れていないものがいくつかありました。投資家サイドとして一番聞きたいことが何かというところをよく考える必要がありますね。
ピッチに慣れていない
日本ベンチャーのピッチは非常に真面目で堅く、説明的なものが多く見られました。言い方を変えると、面白みに欠けるということです。また、ピッチャーの声が小さく、自信が無いように見えました。何でもそうですが、聞き手の注意力を上げるためには工夫が必要です。驚きや面白さを与え、一気にインタレストを上げていくやり方は、中国人、韓国人の方が上だな、慣れているなと感じました。
言語の弱さ
今さら驚くことではないのですが、中国人を中心としたレビューア達、皆投資家ですが、彼・彼女たちは英語も非常に流暢でした。韓国企業は韓国人が完璧な英語でピッチを行いましたが、中国人投資家達も同様に素晴らしい英語で質問をするのです。一方で、日本のベンチャーは、ピッチャーは中国語で、それはそれで良いのですが、質問になると傍らにいる日本人が通訳を介して日本語で質問に応えるというかたちで、どうしても間が悪くなってしまいます。日本人は言葉が弱いということ、改めて意識することになりました。
いずれにせよ、素晴らしい試み
厳しいことを書きましたが、それでもこの「場」の設定は素晴らしいものでした。そして、そこに日本ベンチャーが参加してピッチしているということも、素晴らしい出発点であることは間違いありません。日本人、どんどん外に出て他流試合をして強いサムライ、武士に成長して欲しいです。そうすることが、私達日本人、引いては日本産業、ベンチャー界の世界でのプレゼンスを上げることに繋がるのですから。