当期利益率30%!しかし驚くべきは決算よりも潜在的成長力 テンセント2014年財務報告

 

Tencent IR

テンセントの2014年第4四半期と年間の財務報告が2015年3月18日に実施されました。その内容についてアニュアルレポートの内容と、メディア記事との引用とで、驚くべきその結果と潜在力の真髄に少しでも迫ってみようと思います。

 

また、同時に財務報告会後に、董事長兼CEOである馬化腾(ポニー・マー)、総裁である劉熾平、CSO(Cheif Strategic Officer)であるJames Michelle、CFOである羅硕瀚などのハイレベルマネジメントが、電話によりクレディスイスやモルガンスタンレーなどのアナリストからの質問に答えた内容も差し込んでおきます。

 

Business Highlights

事業ドメインは、①ソーシャル、②ゲーム、③メディア・広告、④セキュリティ、⑤App Store、⑥決済・ファイナンスの6つ。中国でナンバーワンのモバイルゲーム、モバイルニュースプラットフォームとなったこと。動画トラフィックとそれによる収益がYtoYで2倍になったこと、アプリ市場で中国市場シェアが26%となったこと、wechat, QQを合わせて1億ユーザーが銀行アカウントとのひも付けを行ったことなどが挙げられています。

 

①、②を合わせてValue Added Services(VAS)、③がOnline Advertising, ④、⑤がTher Others(公開データには無く、本サイト独自の項目), ⑥をEC Transactionsと当てはめています。

 

劉熾平総裁:私たちは多くのプロジェクトを手がけていますが、現在その殆どがまだアーリーステージにあると認識しています。私たちが新しいプラットフォームをリリースする際には顧客体験(UX)を第一義に考えています。全てのサービスにはポテンシャルがあると思っていますが、私たちは真摯な態度で向き合わなければなりません。ともかく、UXを第一義に掲げて今後の発展を考えています

 

Financial Highlights単位(10億元)

見にくいので日本語化してみました。

 

FinancialHighlights

  • 売上高:789億元(約1兆5,000億円)
  • 売上総利益率:61.0%
  • 営業利益率:38.7%
  • 当期利益率:30.2%
  • トップライン(売上高)の成長率は31.0%

 

ちなみに、ソフトバンクの2013年度の売上が6兆円、DeNAが約2,000億円と言われていますから、この数値はバケモノと言って良いでしょう。

 

Revenue Share

売上の56.8%は実はオンラインゲームから。SNSも23.4%と2番めの貢献となっていると同時に前年比43.0%で急速に伸びてきています。QQ, wechatの収益化が進んできているということですね。アナリストからの質問の多くは稼ぎ頭であるゲーム事業に集中します。

 

James Michelle CSO:私たちがユーザーがよりゲームに参加しやすいようにマネタイズの手を緩めるのではないかとのご心配かと思いますが、そのようなことはございません。私たちはゲーム事業について具体的なタスクを定めていませんし、それぞれのゲームについての財務目標も設定してはおりません。ゲーム事業のマネタイズは引き続き継続していくと同時にプラットフォームのインフラとUXを改善することに全力を注いでまいります。同時に、R&Dへの投資を加速し、サードパーティによるゲームの発展を支援します。私たちのゲーム事業の収入が伸びているのは、サードパーティゲームによる貢献が大きいのです。

 

(第2四半期にゲーム事業が伸び悩んだことについて)私たちは決してゲーム事業について手を抜いてはいません。ユーザーの行動に何らかの変化が見られたのではということですが、そんなことはありません。ユーザーは相変わらず積極的な姿勢を見せています。また、問題提起されたように、ゲーム以外の業務との調整や衝突が起こっている訳ではありません。ユーザーセグメントが異なるため、そのようなことは起こりえません。

 

羅碩瀚CFO:2014年第2四半期でのゲームのARPU(月次ユーザー1人辺り収入)は85〜220元の間でした。MMOG(アバターによる仮想空間)ゲームでは240〜320元、モバイルゲームのARPUは110〜110元と認識しています。

 

Key Platform Update

  • QQ:8.2億MAU(Monthly Active User:+1%)
  • 微信(wechat):5億MAU(+41%)
  • QZone(QQユーザーのWeb):6.5億MAU(+5%)
  • QQ, QZoneもスマートメディア上での成長率は30%以上

 

5〜8億のMAUベースを持っていること自体が凄い資産です。

 

Connection Strategy

”Connection”というキーワードでソーシャル事業の戦略を表現しています。あらゆるサービスがシームレスに繋がるというイメージで、ユーザーの周辺にあるアイコンからは、

 

  • wechat, QQがベース
  • 用途としてゲーム、ショッピング、映像・音楽コンテンツ、教育、タクシー、財テク、ヘルスケア、スマートホーム
  • 基盤としての決済、認証、セキュリティ

 

あたりまでの展開を想定しているようです。

 

Strategic Partnership

  • O2O領域での拡張を求めて業界のリーダーとのパートナリングを進めています。タクシーでは滴滴打車・快的打車との合併会社、コミュニティポータルの58同城(都市別情報コミュニティ)、大衆点評(飲食店情報コミュニティ)や、ショッピング領域における京東(JD)モールなど積極的に投資をしています。
  • 一方で、コンテンツの充実にも勤めていて、動画、音楽、ゲームの取り込みを図っています。この動きはアリババも含めて現時点で非常に活発化している動きです。

 

劉熾平総裁:58同城に対する投資については、彼らのコミュニティプラットフォームを利用することにより、テンセントの生態系が豊かになるという戦略判断によって行いました。テンセントのプラットフォームは人と人とを結びつけることを目的としてきましたが、徐々に人とサービス、人と商品、人と業務を結びつける発想に変わってきました。京東(JD)モールに対する投資は人と商品を、大衆点評網への投資は人とO2Oサービスとを結びつける戦略的な位置づけです。

 

58同城への投資についても同じです。例えば、テンセントのユーザーに58同城のプラットフォームにある短期賃貸マンションを紹介することもできるようになります。使用率が高いサービスではありませんが、必ず必要となるサービスです。将来的には58同城のユーザーとの連携を行うことを考えています。その結果、時間の経過とともにテンセントは、どのような顧客セグメントがどのような商品を買うのか、売るのかということを経験値として蓄積することができます。58同城との合作はまさしくWin-Winの関係です。

 

Owned Media

そのコンテンツを載せるのはあくまでもテンセントのOwned Mediaであると。モバイル動画、オンラインブックスでトップであること。App Storeのマーケットシェアが14%から25%(第3位)まで1年で上昇したこと。セキュリティでもナンバー2であることなどがOwned Mediaになり得るベースであるとしています。

 

Advertising Strategy

オンライン広告についても、ポータル、動画、ソーシャル、App Storeでトップ1からトップ3の位置につけていることを強調しています。

 

Payment

テンセントが今非常に力を入れているのがこの決済エリアを取りに行くことです。TenPay(テンペイ)は、首位にある決済サービスであるAlipay(アリペイ:アリババ)を猛追している状態です。現在、TenPay上で既に1億アカウントが銀行アカウントとひも付けされています。商業ユーザーに使って貰えるようにソリューションを提供し、ユーザー事例を豊富化していくことを掲げています。

 

劉熾平総裁:(インターネット銀行の許可を取得したことについて)テンセントは確かにインターネット銀行許認可を取得しましたが、まだサービスを提供するには時期尚早であると考えています。今は計画があるのみです。全国範囲で実体のある銀行を営業する許可となっていますが、まず管理・監督制度を整え、既存サービスとは異なるユーザーニースを満足するためのプラットフォームづくりの準備を行っていきます。既存の銀行と必ずしも戦うことにはならないと考えています。既存銀行の手が回らない細かなサービスを実現していきたい、例えば消費者ローンなどです。これを手掛けることによって、大量の信用情報を蓄積することができれば、むしろ将来的に多くの銀行とパートナーシップを気づくことができると考えています。

 

(京東モールとの合作の将来について)京東モールの顧客のメインはPCですが、今後はモバイル側にも入り口を儲けようと考えており、既にQQ上に設置をしました。その結果、大量のトラフィックが京東に流れていることを確認しました。ただ、事実上、まだ開始したばかりでありこれ以上のことは特にありません。また、QQと微信(wechat)のユーザーは無料で使用するユーザーから、お金を使うユーザーに変化しつつあります。QQとwechat上での広告提供による新しいECエコシステムを作るために努力しています。

 

Business Review

猛烈なスピードでトップライン(売上)を上げてきています。

 

James Michelle CSO:京東(JD)モールとの合作を行った結果、テンセントの広告収入は増加しましたが、それが広告収入増加の最大の理由ではありません。モバイルQQ空間(モバイル上でのQQのFB的なもの)における広告収入の貢献度が最大でした。

 

Gross Margin

事業セグメント別の売上粗利益は年単位で見れば安定しています。特にECについては大幅なマージン幅の改善が見られます。別の角度で見てみましょう。

 

Gross Margin

縦軸が事業セグメント別の売上総利益(グロスマージン)率、横軸が売上高(10億元)です。現時点では規模、利益率共にVASが引っ張っているのが分かります(その収益の大半はゲームとSNS)。今後、オンライン広告(wechat上での広告など)、テンペイを活用したECからの収入、利益を上げていくことが課題となります。言い方を変えれば、まだまだ成長余地があるということです。

 

編集後記

Stockprice

この財務報告を受けての翌日のテンセント株の動きですが、135.9元から145.0元まで6.7%ほども跳ね上がりました。中国は個人投資家も多い市場なので、プロの投資家が全てを織り込んで財務報告をしてもそれほど株価に跳ね返らない日本市場とは異なりますが、それでも市場としてはテンセントの将来性について最大限に好感触であることの証明です。

 

馬化腾

 

wechatとQQの5〜8億のMAUを最大限の資産としてその周辺にサービスとコンテンツを取り揃え、決済とセキュリティで抑えていくエコシステムの実現に向けて着実に、そしてハイスピードで進んでいます。京東モールを取り込んでECを抑えアリババに対抗するだけでなく、58同城や大衆点評などの都市別コミュニティサイトや、飲食店メディアを取り込むことで、取り扱う商材・情報の幅を確保。更に滴滴・快的などモバイルタクシーコールサービスなどへの展開、更には消費者ローンまで、提供サービスを広げていきます。その投資の源泉をゲームと広告メディア(QZoneなど)で稼ぐという構図です。モバイルを中心として確実に消費者の利用時間を取り込んでいく戦略、盤石なものに見えます。恐ろしさすら感じさせるモバイルインターネットの巨人、全人代で「インターネット+」を掲げたポニー・マーの次の一手は何でしょうか

 

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