繁体字の見直し? 中国の超有名な映画監督と俳優が授業での復活を提案

中国で使われる漢字には大きく分けて2種類が存在ます。簡体字と繁体字です。そのどちらも、日本で使われる漢字とは同じではありません。簡体字は繁体字を省略したもので、主に中国大陸で使われます。繁体字は以前大陸で用いられていたもので、今では台湾と香港で使われています。全人代ではその漢字の取り扱いについても議論がなされています。大陸での教育において、繁体字の学習についても一部取り入れることができないかという提案が文芸界から巻き起こりました。提案の主は、中国では「超」がつくと言っていい有名な映画監督と俳優です。北京青年報の記事を引用します。

 


2015年3月4日午前に開かれた政協文芸グループの討論会で、冯小剛(Feng Xiaogang:映画監督)、張国立(Zhang Guoli:俳優)の2人は共同で学校の授業において部分的に繁体字を使うことを提案することを検討していると語った。このことが中国全土で激しい議論を呼ぶことになるとは思いもよらなかった。

 

冯小刚

 

「私が言いたいのは文化を伝承するということです。」映画監督である冯小剛は、今年は映画の話をせずに繁体字のことを話した。彼は部分的に繁体字を復活させることを望んでいる。量が少なかったとしても、含蓄のある繁体字であれば良いと考えている。「亲(簡体字)」の繁体字は、左側に「亲」、右側に「見」という字から構成され、「親」となる。「愛(繁体字)」には、簡体字の「爱」の中心に「心」が加えられている。この2つの文字の含意は「親しいならばお互いに会(見)う」、「愛の中心には心がある」ということだ。簡略化して簡体字にした結果、「親しいが会わない」、「心の無い愛」ということになってしまった。工場の中に、工場の部屋しかないようなものだ、と例えた。

 

「現在の子どもたちは英語、フランス語、イタリア語などを勉強しています。彼らに繁体字を認識するための学習をさせることは可能ではないですか?」と冯小剛は言う。彼と張国立は、50, 100, 200個の含意のある繁体字を選び出し、中学校の教科書の中に掲載、子どもたちに中華の伝統文化の最も重要な部分を感じさせることができるかどうかを相談した。

 

冯小剛は、繁体字を授業に取り入れることが学生に対する多大な負担の増加になるとは思っていない。「このようなものを失ってはいけません。」、「繁体字を書いて学ぶことによって、子どもたちの心の中に美的感覚の種が生まれます」と述べた。

 

08年に冯小剛が撮影して一大ヒットとなった「非誠勿扰」、北海道が舞台になっており、この結果中国人の北海道旅行が一気に増加した
08年に冯小剛が撮影して一大ヒットとなった「非誠勿扰」、北海道が舞台になっており、この結果中国人の北海道旅行が一気に増加した

 

この提案に対して、冯骥才委員(作家)は非常に賛同した。彼は、「漢字の簡略化は伝搬速度を高めるために行われました。現在、繁体字を復活させるという意味は完全な復活ではなく、授業の中で学生に書き方を教えることで、文化的な意味合いが何であるのかについても教えることができます。これは非常に重要です。」と述べた。

 

更に、冯小剛と共同でこの提案を提出した張国立は、「どうして私たちがこのような考え方に至ったかと言うと、習近平主席は中国の故事について語り継ぎ、中国の文字の美しさを伝承していく以前に、まずやらなければいけないのは、文字の中に含まれる意味そのものを理解する必要があると述べているからです。」と語った。

出所:北京青年報


 

編集後記

冯小剛は北京出身の映画監督です。風刺の聞いた人情味のある映画を撮るのが得意な監督で、2008年に上映された「非誠勿扰」が大ヒットました。この映画は、北海道を舞台にしたロードムービーで、この映画がヒットした結果として中国人の北海道旅行人気が爆発。更に、北海道で主人公たちが移動に使ったフォレスターが爆発的に売れました。張国立は天津市生まれ、これまた超有名なベテラン俳優です。人間味溢れる演技が魅力的です。

 

文芸界におけるこの2人のスーパースターが上記にあるように、繁体字を一部の授業に復活させて取り入れることを提案したことが社会全体で議論を巻き起こしています。漢字は非常に奥が深いものです。自分も専門家ではないので詳しく解説することはできませんが、元々は象形文字です。そこに、後から表意文字的な側面が加わってきたところで、簡体字として簡略化されたため、一部の字の意味が失われてきたことに警鐘を鳴らしたという形です。

 

簡体字と繁体字

 

上記の表に示されるように、同じ意味であっても、繁体字と簡体字では漢字が異なります。日本語は繁体字と近いですが、繁体字よりもやや簡素化されているという意味では考え方は簡体字と近いのです。引用文中にもあったように、「愛」という字が良く引き合いに出されます。「中国人の”爱”には”心”が無い」と揶揄されることがあります。読み書き、伝達の速度を上げる、すなわち効率化を進めるために漢字の簡略化を進めてきた中国は、1956年に「漢字簡化方案」を発表し簡体字の利用を開始しました。実は簡体字の利用の歴史は中国の長い歴史から比べれば非常に約60年と非常に短いのです。ここにきて文化的な側面から繁体字の見直しが図られることは興味深い動きで、今後の動向が注目されます。

 

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