中国で住宅を購入しない層が出現 | 経済合理性で賃貸を選び生活を満喫する若者のストーリー

中国人同士の結婚では、「まず家と車を買った上で」行われるのが普通ですが、そのような概念ではない人たちが出現してきているようです。賃貸をするという選択肢を積極的に選ぶ人たちです。彼・彼女たちは、お金がないから家を買わないのではなく、家を買うよりも、借りる方が、経済合理性があると考えています。西安晩報の記事を引用します。


家の価格は毎年上がり続け、下がるようには見えない。「何よりも先に家を買う」、家は中国人の伝統的価値観と分かつことのできない概念だ。しかし、この概念を打ち破るような動きが出てきている。蔡焱はその一人だ。住宅ローンの重荷を背負わずに、余ったお金を理財(財テク)商品に回すことで、部屋の賃貸料を相殺でき「損をしない」という状況だ。

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「多くの人は部屋を賃貸することを一つのステップとして考えていますが、私にとっては一つの理想的な生活方式です」と言う彼女は、友人の中では変人扱いだ。その意味で彼女は徹底した賃貸主義者だ。彼女の実家は上海にないため、大学卒業後に部屋を借りる生活が始まった。まず、クラスメイトと一緒に部屋を借り、1人あたりの家賃は700元(14,000円)だった。1年後、給料が上がり、彼女は1ルームを借りて引っ越した。現在、蔡焱はとある法律事務所に所属し、特許案を書き起こす仕事で、5,000元(10万円)の給料をもらっている。仕事を始めて4年弱、蓄えは既に10万元(約200万円)を超えた。親しい友人は、彼女に10万元を頭金として家を購入することを勧めるが、彼女はそうしない。

その理由として、蔡焱が記者に語るには、「私が借りている部屋は50㎡、それを家主は48万元(960万円)で購入しています。私が毎月払っている家賃は1,600元(32,000円)ですから、1年で19,200元(384,000円)を払っています。計算すると年率のリターンは3.5%しかありません。それを含めれば恐らく3%程度まで落ち込むでしょう。」彼女曰く、3%のリターンは実際に非常に低いという。「今、どの財テク商品を買ったとしても、どれも4%程度のリターンを期待できます。そうであるならば、私は財テク商品を購入して、その利回りで部屋を借りることを選ぶでしょう。家賃を払ってもまだお釣りがくるんですから。」

もう一つ、住宅を購入したい理由としては「生活水準を下げたくない」という思いがある。「私の周りには”住宅の奴隷”がたくさんいます。毎日、住宅を購入するために衣食にかけるお金を節約しています。彼・彼女たちは頭金を払って住宅ローンを組みますが、私は頭金分を投資に回してお金を稼ぐことを選びます。」彼女の毎月の固定費は1,600元(32,000円)の家賃に加えて、電力、水道、ガス、インターネット、電話、生活費など。その支払をした後に2,000元(40,000円)程度の余りが出る。その内、1,000元(20,000円)を定期預金に回し、残りを財テク商品の購入に充てる。

結果、彼女の生活は同水準の給料をもらっている同僚と比べて非常にリラックスしたものになっている。「私の収入レベルは上海では中流です。もし住宅を購入したとすると、最低レベルの生活に入ってしまいます。住宅の購入にたいしてそれほどの犠牲を払う必要があるでしょうか?」彼女はボーナスをもらうとまず旅行の計画を建て、好きな物を買います。一方で、住宅ローンを背負うことになる友人たちは頭金の支払い、内装費の支払いまでの日々を指折り数え、プレッシャーを抱え、生活レベルを一層下げることになる。


編集後記

例に挙がっている女性、蔡焱は就職して4年足らず。給料は5,000元ですから、まあまあの水準です。自分が中国にいた頃の同僚の話は、とにかく親からの「結婚」のプレッシャーが、「住宅購入」のプレッシャーに繋がっていて、彼・彼女なりにストレスを抱えて生きているなと実感しました。しかし、冷静に経済性を計算し、生活レベルとのバランスの中で賃貸を選んでいる現代っ子たちが現れたというのは面白い潮流だと思います。彼女の頭には住宅を購入するという選択はなくなっている訳ですから。このような考え方の人が増えてくると、住宅マーケットは強く影響を受けることになります。賃貸用の投資物件が値上がりし、居住用の販売物件の価格が下る可能性も出ます。今後どのようになるのか、注意が必要ですね。

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