ブレイクし切れないLINEの戦略に対する中国インターネット企業からの示唆

 

先日、紹興酒の飲み比べで有名な六本木のオシャレ中華”黒猫夜”にて、某インターネット企業の方と話をさせて頂いた時の話題のひとつとして、”LINEは中国のテンセントや百度、アリババが目指しているようなプラットフォームにはなることはない”というものでした。様々な理由があると思いますが、この背景にはちょっと言い方が古いですが日本企業も含めた西側諸国と中国やその他発展途上国の企業の考え方、ビジネスモデルにかなり大きな違いがあるのではないかと考えるようになりました。そして、この中国に代表される対極的な考え方は日本には逆に上手く応用できるはずだというものです。

LINE

 

皆さん、地図を見る時にどのようなアプリを使っていますか?Google Mapsなどを使うのが一般的ですよね。中国では百度が提供する”百度地図”が圧倒的なシェアを占めています。2つのアプリを使ってみるとよく分かりますが、百度地図の方が圧倒的に便利で機能的に優れています。百度地図で自分が今いる位置の周囲にある湖南料理店をクリックすると、その店の評価、クーポン、グルーポン的な先払い団体購買などができます。映画館をクリックすれば上映されている映画、空席状況、チケットの予約ができます。更に周囲にあるオフィス物件や住宅などをクリックすると、その物件が賃貸に出されているかどうか、その場合の価格、そして必要があればその場で不動産会社に連絡をすることができます。もちろん、決済することも可能です。これらのサービスが、モバイルプラットフォームに最適化された状態でユーザーに提供されています。Google Mapsでこのようなことはできません。まず、ポイント情報が圧倒的に少なく、クリックしたとしても出てくるのはせいぜいその物件の基本情報と、クチコミですが数は多くありません。

 

次にLINEについてです。比較するのはもちろんテンセントのwechatです。wechatでは、ニュース購読や決済はもちろんのこと、財テク、宝くじ、タクシー配車、アパレル購買、ショッピングモール(京東:JDモール)での購買、お金のやり取り(お年玉や割り勘)、グルメなどのスポット情報(クーポンやグルーポン的な団体購買と連動)、社会活動への寄付、映画館のチケット予約、飛行機の予約、上海地区であれば病院等の予約ができます。一方でLINEではそこまでのサービスを利用することはできません。

 

この違いがどこから来るのかと考えていましたが、

  • 広告型モデルとサービス型モデルの違い(中国と、日本を含む西側との違い)
  • BS(貸借対照表)型経営とPL(損益計算書)型経営との違い(日本と他国の違い)

にあるのではないかと今は結論づけています。

 

まず広告型モデルとサービス型モデルについてです。GoogleやLINEのモデルでは、まずコアとなる機能でMAUを獲得します。Googleなら検索エンジン、LINEではクローズなコミュニケーション環境とスタンプですね。その後、企業アカウントを追加して、顧客データを提供することで広告収入を得るという形に持っていきます。GoogleであればGoogle AdwordsやGoogle Apps for Business, Google+、LINEであればLINE公式アカウントやLINE@, そしてビジネスコネクト(APIの利用権)です。その後は膨大なMAUに対して企業から、コア機能(検索エンジンやメッセンジャー)を通して広告が提供されていきます。しかし、百度やテンセント(wechat)の場合は異なります。コア機能でMAUを確保するところまでは同じですが、その後は自らのプラットフォームを介したサービスの提供に向かいます。サービスについては前述した通りで、コア機能(検索エンジンやメッセンジャー)とは別に、優れたUXによってモバイルプラットフォーム上で全てが完結するようによくデザインされています。

 

では、そのサービスを共通プラットフォーム上でどのように提供するのかと言うと、それぞれの分野で優れたサービスを提供する企業に対するM&Aです。これがBS型経営、すなわち資本を効果的に回転させ、最大の効率を上げていくモデルです。百度やテンセント(wechat)が物凄い勢いでサービス企業に対する出資、買収を行っているのは当ブログでも多く取り上げています。例えば、テンセントであればタクシー配車のトップ企業である滴滴打車や、ECモールの同じくトップ企業である京東(JDモール)などを買収して自社サービスの中に取り込んでいます。もちろん、LINEも一部のサービスは手がけています。例えばタクシー配車サービスですが、これは自前で開発をしています。また、昨年リリースされた”ビジネスコネクト”という機能により、企業はLINEのAPIを使って、顧客データ(アクセス情報や位置情報など)にアクセスし、サービスを提供することができるようになってはいますが、それはあくまでも公式アカウントとユーザーとのやり取りがメッセンジャーの中に閉じた形でのサービス提供に限定されてしまいます。

wechat

 

Googleのようなグローバル企業は、世界に広くあまねくフラットで普遍的なサービスを提供し、そこから広く薄く広告収入を取っていくという考え方です。一方でその国に根ざした形でのサービス提供については意識的にかもしれませんが無視する形となります。しかし中国のインターネット企業は、まずは自国のサービスを深掘りしてユーザーに対してあらゆる生活シーンにおける最高の利便性を提供することに注力します。そのためにはなりふり構わずその分野でのトップ企業に対して資本を投下し、自らのモバイルプラットフォームに取り込んでいきます。このサービス型モデルについては、以前紹介した記事の中で百度のCEOの李彦宏が明確に語っています。

 

ロビンリー(李彦宏)が万科メンバー80人を相手に熱く語る百度とGoogleの違い

 

ポイントはモバイルデバイスにあります。中国のインターネット企業は完全にモバイル上でのサービスプラットフォーマーとして極めようと動いています。モバイルデバイスの画面は小さく、画面上でアプリやブラウザを複数遷移して使うことに向いていません。モバイルに最適化されていないwebサイトは淘汰されますし、アプリの中で新たなアプリが呼び出されたり、ブラウザが起動することによってUXは大幅に低下してユーザーの離脱率は上がります。だからこそ、自前のアプリの中であらゆる分野のサービスが最高のUXで完結するように、中国インターネット企業は動いているのです。

 

では、LINEはどのポジションにいるのでしょうか?自分には明確には見えません。しかし、サービス型モデルについてはその国の企業に一日の長があります。Googleが日本での深掘りサービスを強化してくるとは到底思えません。中国インターネット企業が海外展開についてはコア機能の提供に留まり、その土地に根ざしたサービスの提供を行っていないのはそのためです(wechatも日本では中国で提供されているようなサービスを享受することはできません)。モバイルの世界で広範なサービスを提供し高いUXで提供する、ここに日本企業の次なるチャンスがありますし、色々な企業にできることがあると思うのですが、動かないことが不思議でなりません。LINEの上場準備が再開したとのニュースが出ていましたが、そこでの調達資金をどのように回転させていくのか、非常に興味深いところです。

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実は根本的にはモバイルの普及率にあるのではと悩むメルマガ

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