小米(シャオミ)の日本製品パクり問題の背景にある中国の産業構造と想いを日本人は知っておくべき

先日、中国スマートフォンメーカーである小米(シャオミ)が2014年末に発売した空気清浄機が、日本の家電ベンチャー企業であるバルミューダ社の製品に外観、機能、内部構造が酷似しているという記事がzakzakから出され、SNSなどで話題となっています。この記事によると、価格差は10倍弱、もちろん小米の方が格段に安いそうで、2012年に発表したバルミューダ製品にとっては大きな打撃となることは間違いないと思われます。

【ビジネス解読】超先進中国「シャオミ」に盗作疑惑 日本ベンチャー激怒「提訴辞さず」 中国企業のパクリDNAは変えらない(zakzak)

小米はスマートフォンで世界シェア第3位にまで上り詰めたまだ4年目と若い中国企業ですが、当サイトでも紹介した雷軍(レイジュン)CEOの2015年2月の台湾講演でも示されているように、今後は「スマート技術」の分野で事業展開をしていくことを方針としています。

奮い立つ!小米(Xiaomi)董事長 雷軍の台湾での新年の挨拶(前編)
奮い立つ!小米(Xiaomi)董事長 雷軍の台湾での新年の挨拶(後編)

小米の雷軍CEO
小米の雷軍CEO

ここで雷軍CEOは、「小米は今後スマートフォン、フラットパネルディスプレイ、インターネットテレビ、ルーターに特化して、その他の分野では積極的に他社とパートナーシップを行っていく」と語っています。その流れの一貫と考えれば分かりやすいとも言える今回の動きの中で、話を複雑にしているのは、この小米空気清浄機を開発した責任者が、かつてバルミューダ社に製品開発部長として在籍し、2014年5月に退職した日本人であるということです。

小米(シャオミ)のスマート空気清浄機のデザインは日本企業が販売している空気清浄機のコピーだった!?

こちらの記事によると、以前、バルミューダに所属していた開発部長をA氏として、「A氏がバルミューダ社を退職する際に、両者の間で取り決めた合意事項で競業禁止・特許使用条項および秘密保持条項を結んでいて、A氏は「小米空気浄化器」を開発・設計したところでバルミューダ社との合意事項に違反している為、バルミューダ社では今後A氏に対する法的措置に踏み切るようです」とのことですで、「中国労働契約法の第23, 24条」の中に、競業禁止や機密保持に関する項目が根拠となるのではないかとの見解をしめしています。

さて、中国ではどのような扱いをされているかというと、実際に大きな話題になっており、ニュースサイト、個人のブログ記事、更には動画記事も含めて、「抄袭(著作権侵害)」という見出しになっているものが多く見られ注目を集めています。中国サイトの内容を紹介します。

小米&バルミューダ空気清浄機徹底比較

左が小米、右側がバルミューダの空気清浄機を構成する部品群
左が小米、右側がバルミューダの空気清浄機を構成する部品群

このサイトでは非常に実践的ですが、2社の空気清浄機の部品を分解しており(左側が小米、右側がバルミューダ)、似ている部分と、異なる部分を紹介しています。

似ている部分:
・ファンモジュールの構造(2つのファンと4つの通風口)
・筒型360度フィルター構造
・内部の送風機構(風を下からスパイラルで上げていく)

異なる部分:
・ファンの構造(小米は9枚、バルミューダは外側9枚で内側5枚)
・後部の扉(小米は硬い、バルミューダは軟らかい素材、開き方も異なる)
・底面(小米は丸型、バルミューダは角形)
・上部通風口(形状が異なる)
・筐体フレーム(4つのフレームだが形状が異なる)
・底面金属板(形状が異なる)
・スマホ連携機能(小米には有るが、バルミューダには無い)

そして、結びでは小米、バルミューダ製品も含めて中国で販売されている空気清浄機の形状にそれほど大きな違いはないことを指摘し、「空気清浄機の世界でこのような議論がなされるのであれば、他の製品を開発した場合2番目以降に製品を開発したメーカーは全て著作権侵害と言えるのだろうか?」とまとめています。

様々なメーカーの空気清浄機(左から2番目がバルミューダ、3番目が小米製)
様々なメーカーの空気清浄機(左から2番目がバルミューダ、3番目が小米製)

 

さて、もうひとつ、2015年2月8日のもので、新浪(Sina)財政経済専門家の李光闘さんの記事を紹介します。先ほどはミクロ的な内容かつ軟らかい内容でしたが、これはマクロ的かつ硬い記事です。AppleやNokia、そして上記でも紹介した小米(シャオミ)への部品供給をしている中国系サプライヤーの倒産、生産停止が相次いでいることを紹介しつつ、マクロ的にはGDPの構成要素を需要と供給の側面から分解し、中国が今変曲点に来ていることを解説した上で、中国のいわゆる「コピー製品、模倣主義」について警鐘を鳴らしています。

中国製造業の危機が本当にやってきた


 いつの時でも「Maid In China」は中国人にとっての誇りでした。海外の街を歩くときに、適当に手にとってみたものには、「Made In China」の文字が書かれていることでしょう。大量の労働力、低廉な価格は中国に最大の強みで、中国メーカーに対する多くの外商投資を中国企業にもたらしました。「人口ボーナス」は中国の経済発展を支えてきました。時代は移り変わり、今では「Made In China」は史上空前の危機を迎えています

Made In China

年の瀬になって、いくつかのメーカーの工場閉鎖のニュースが注目されました

製造業の都として、メガネや靴、ライターの世界の中心であった(浙江省の)温州市は、現在は製造業空洞化に直面しています。かつて、温州市の靴工場は旧正月期間中、1周間しか休みをとりませんでしたが、2014年多くの靴工場では旧正月の1ヶ月前から休暇に入りました。小さな靴工場は全て生産停止、大きな工場でもライン1本のみを動かしている状況です。

ライター工場の状況は非常に良くありません。金属製のライターは消費者のニーズに合わなくなり、経済の影響を受け、海外からの注文が減少、中国の従業員、材料、土地のコストが値上がりし続ける中、企業利益はますます薄くなり、ライター製造のビジネスはよりよりいっそう難しくなってきています。

2014年12月5日、有名なスマホ部品メーカーの蘇州連建科技が倒産、更に同じく蘇州でノキア向けに部品を供給していた闳晖科技も生産停止を宣言しました。この2社は蘇州では大型といえる企業で、闳晖は1,2万人の従業員を抱えていました。連建科技はAppleのiPhone向けにスクリーンを供給、その後、小米(シャオミ)とも数年パートナーシップを持っていました。闳晖科技はスマホ向けのボタンキーやマグネシウム製のケース、自動車向けのオーディオから、更には樹脂部品まで製造していました。

製造業の危機は、同様に企業が密集する広東省にも及んでいます。東莞を例に挙げると、2014年10月の統計によると、10数の大型工場が倒産し、その内の殆どが生産委託工場(OEM, ODM)でした。業界専門家によると、旧正月前までに、少なくとも100を超える大型工場が東莞で生産停止状態となっているそうです。

長江デルタ、珠海デルタではメーカーが集まり、生産レベルや、規模の面で至らないところは、市場経済の論理にもとづいて、毎年数十の企業が倒産することは別に目新しくはありません。しかし、今回の連鎖的企業倒産は以前のものとは異なり、熟考するに値します。

市場(GDP)は、需要と供給の循環の中で発展するものですが、もちろん製造業も例外となりません。供給の側面から見ると、労働投入、資本ストック増加、そして全要素生産性の3要素に分けることができます。供給の角度から見ると、製造業は、投資、消費、純輸出の3要素によって説明することが可能です。現在の製造業の危機は、この需要と供給の中に巨大な変化が起こってもたらされたものです。

供給から見ると、労働投入が不足しています。現在の中国労働人口は前年比で減少する段階に入りました。2011年から2011年で15〜59歳の人口は66万人減少し、合計で9.5億人となりました。生産年齢人口は2011年を頂点として、2014年までに560万人減少しました。

中国国家統計局の馬建堂局長によると、2012年に生産年齢人口が初めて減少に転じ、政府は極めて厳しい認識を示しました。2012年は、中国の「人口ボーナス」の変曲点となり、その後の生産年齢人口は減少し続けることとなりました(「人口オーナス」のこと)。2012年の中国GDP成長率が、10年来で初めて8%を下回ったことは偶然ではないのです。

生産年齢人口の減少は、労働投入量の不足と、労務費の上昇をもたらします。前述した、企業倒産のケースは、労務費の上昇による影響が非常に大きな原因となっています。

需要の側面から見ると、中国は以前、政策的に貨幣供給量を増やし、過剰な設備投資を行ってきました。統計によると、2012年の中国のGDPに占める固定資産投資は46.1%となっており、世界の平均水準である23.8%を大きく上回っています。投資自体は需要を刺激し、また製造業の発展を刺激します。しかし、野放図な投資は、生産量、規模のみに注目し、品質は技術、更にはイノベーションを置き去りにした結果、企業が結果的に需要を満たすことができないという状況が発生します。

前述した2社についてです。連建科技はAppleより販売量の拡大に応じて、将来生産設備の拡大を打診されていました。それまでの、彼らの設備はiPhone4S以前の製品に対応したものでした。しかし、Appleは更に薄型のスクリーンを搭載するiPhone5,6を推進していましたが、連建科技の部品では対応ができず、技術力が低いこと、良品率が低い過ぎること、価格が高いことを理由にAppleのサプライヤーから外されることになりました

闳晖科技の主力製品はノキアの携帯電話のボタンキーでした。タッチスクリーン型のスマホの修験に伴い、ボタンキーは市場のニーズに見合わなくなりました。ノキアがニーズに応えられず市場シェアを失っていく中で、闳晖科技も退場を余儀なくされました。

中国の製造業が発展を始めてから10数年。大部分は依然としてサプライチェーンの最下層におり利益も薄く、製品の技術は市場の発展について行けません。このような状況下、市場に一度問題が起こると企業の継続が困難になるのです。供給方面の要素が変わることはありません。もし、需要方面の要素を変えることができなければ、中国のメーカーは数年で消えることになるでしょう。中国のメーカーは、正に今、レベルを上げるタイミングに入ったのです。

レベルを上げるための「ブランド確立」

中国は、「製造大国であり、ブランド小国」であると言われてきました。製造で名を馳せ、ブランド力を手に入れることができるのであれば、長期的な中国製造業の発展にとってこれ以上に良いことはありません。海外の100年企業を見れば、みなブランドを確立しています。製品の生産、技術的イノベーション、マネジメントの高度化を極めています。

イギリスのキャサリン妃が結婚式場で身にまとっていたレースのウェディングドレスを覚えているでしょうか?ドレスに素材を提供していた企業は、レース制作における技術・技能を絶え間なく突き詰め、顧客に非常に精緻で美しいレース製品を提供しています(1インチのレースを生産するために、1人の工場スタッフが半日かかるということです)。この企業は既に100年間続いており、現在もなお、高品質なレースブランドとして認められています。

モバイルインターネット時代が到来し、人々の消費概念には既に変化が現れています。粗雑な製品は既に市場ニーズに答えることはできなくなりました。製造業は更に発展し、ブランドを築き、ものづくりを極めなければなりません。では、ものづくりを極めるとはどういうことでしょうか?これこそが「全要素生産性(TFP)」なのです。

全要素生産性には、技術進歩、資源最適化、生産性の向上、更には組織やマネジメントの高度化などが含まれ、企業における量的な側面ではなく質的な側面に目を向けたものです。全要素生産性を向上するためには、上記のレベルアップが必要であると同時に、ブランド構築が必要です。中国製造業にとって、目前の危機を乗り越えるための唯一の手段は全要素生産性の向上です。更に、中国の製造業は、ブランドの確立とイノベーションが必須であり、模倣やコピー製品づくりから脱却する必要があるのです。


寺村は2002年から2013年まで戦略コンサルタントとして中国関係のプロジェクトに携わり、2008年から北京に3年、上海に2年間駐在して仕事をした経験があります。2008, 9年頃に中国企業や政府に対してこの話を盛んにしていたことを思い出します。国の経済力を示すGDPは上述されているように、

・労働投入量の増加
・資本ストックの増加
・「残差」としての全要素生産性(TFP)

に分解することができます。中国は既に2012年から生産年齢人口が減少局面に入ったことを示し、労働投入量の増加によるGDPの増加は今のままでは望めないことが示されています。資本ストックについては、海外からの直接投資などが望めることから、増えていくことが予想されますが、高齢化の進展で老人の預貯金などが取り崩されることを考えると、具体的な数値は分かりませんが、余談を許さないと思われます。そうなると、「残差」としての全要素生産性を引き上げることが必要です。

全要素生産性は、労働投入、資本ストックで説明できない全ての要素を含んでいます。イノベーション、効率化、ブランド価値向上などです。中国経済はこの全要素生産性の寄与度が少なく、労働投入量と資本ストックに経済成長を委ねてきました。簡単にいえば、「地方から無尽蔵に溢れ出てくる労働力をテコに、国内や海外からの投資を呼び込んで、世界の工場」として成長してきたのです。しかし、ブランド力、生産性、イノベーションなどを置き去りにしてきたため、労務費の上昇や、品質問題、そして低いブランド力などの影響を吸収できない企業が倒産や生産停止に追い込まれているという状況です。

自分は、中国人の友人と話すと必ず出てくる言葉として、「Appleは中国製だが、利益は中国に落ちない」、「ユニクロは中国で生産しているにも関わらず、中国国内では高くて買うことができない」など。結局、労働力の提供は行っているものの、低い労務費の提供、すなわち低い付加価値の提供の部分のみに留まっていて「美味しい部分」は全て米国や日本に流出しているということです。このモデルを突き詰めてしまった結果がユニクロのNGO/NPOから訴えられた問題に凝縮されていると考えます。

ユニクロ問題の背景?フォックスコンと中国政府当局との違法労働をめぐる激しい応酬

小米(シャオミ)はAppleのiPhoneを模倣したと言われていますが、中国国内、そして世界では「ブランド」を築きつつあります。良い悪いは別としておきますが、この「ブランド化」は中国人が、そして中国が最も強く望んでいるものなのです。この認識、想いがこの大国にはあるということを日本人もしっかりとまっすぐに見つめ、理解する必要があります。zakzakの記事では、バルミューダの寺田社長の言葉を紹介し、かつてトヨタ自動車が米メーカーの車を分解して部品を研究したことを引き合いに出し、「技術はまねの繰り返しだ」と指摘、「われわれが技術革新で先陣を切れば、他社は背中を見て追うことになる」と結んでいます。本当にその通りです。そして、技術革新だけでなく、「ブランド化」をしっかりと進めなければ、隣の大国に足をすくわれるどころか、先を越されてしまうことになるでしょう。