中国の”消費者の日”に国営放送による暴露報道のやり玉に挙げられた日産、ワーゲン、ベンツ

中国の3月15日は「消費者権益保護デー」です。自分も知りませんでしたが、今年2015年は中国中央テレビ(CCTV)において、大手ブランドホルダーの販売セールスの現場でとんでもないことが起きていると暴露的な報道がなされ、消費者は大混乱、更にやり玉に挙げられた企業は即座にコメントを発表するという状況に陥っています。 やり玉に挙がったのは一流企業ばかりで日産やフォルクスワーゲン、更には中央系国有企業までとインパクトは絶大です。その状況をテンセント財経から紹介します。


2015年3月15日の夜、 中央電視台(CCTV)の「3月15日晩会(夜会)」という番組にて、東風日産、上海VW(フォルクスワーゲン)、ベンツの4S店(中国における自動車ディーラーの呼称)が故障、修理の大きさに関わらず暴利を貪っていることや、レンジローバーの「オーロラ」の変速機で故障が頻発していることなど、自動車消費・安全に関わる事例が紹介された。この他にも、中国移動(チャイナモバイル)、中国联通通(チャイナユニコム)、中国鉄通などの中央系国有企業が業界の各種規定を守らずに、犯罪分子の「幇助」となっていると暴露した。暴露された一部の企業はこの報道に対して慌てて反応を寄せている。

カーディーラーが過剰診断・過剰請求で暴利を貪っている

報道で暴露されたカーディーラーは、東風日産、上海VW、ベンツの3ブランド。その内、杭州市天目山路にある東風日産系ディーラーである元通港昌専門店にて、1台約8万元(約160万円)するリヴィナの点火プラグが外れやすいという問題が発生し、本来はしっかりと差し込んでエンジンを再起動すれば解決するにも関わらず、検査をした結果3つの項目について修理が必要であるとされたのこと。また、1台20万元(約400万円)するティアナでは、同じくスパークブラグが緩む故障が発生した後に再び来店したところ、事実以上に重大なトラブルであることを告げられたと言う。東風日産ではその他の地区でも取材されたディーラーにおいて同様の問題が見受けられたそうだ。スパークプラグをしっかり差し込めば解決する問題だったはずが、400〜3,000元程度の修理費用を請求されたと言う。

4S店修理

問題は東風日産ディーラーだけではない。上海VWディーラーにも似たような問題が見受けられた。同じようにスパークプラグが緩む故障について、多くの事実とは異なる故障名目で数百から数千元の修理費用を請求された例が挙がった。

更に、ベンツディーラーで起こったスパークプラグの故障に起因する故障の修理費用は驚くべきもので、スパークプラグを取り替えるところで1,075元、更に一連の部品修理と交換を行った結果、合計で1万元(約20万円)を超えたと言う。

取材ではカーディーラーのスタッフとオーナーの会話の中で、「風邪が治らなければ肺炎を併発しますよ」、「今手術して大きな病巣を取り除きましょう。小さな病巣はなかなか大きくなりませんから」と言う、オーナーにプレッシャーをかける会話が頻発していた。CCTV記者が北京、天津、河北、河南、安徽、上海、浙江の7地区にて、合計22回、東風日産と上海VW、更にはベンツのディーラーの修理体験取材を行った結果、上述したような過剰診断による過大請求が16件とその比率は73%に上った。車のランクを問わず、普遍的に見られたと言う。更にスパークプラグ関連以外にも、ブレーキパッドについても同様の過剰請求が見られた。

これに対して、やり玉に挙げられた3つのブランドホルダー(カーメーカー)は公式コメントを即時に発表した。

東風日産:

CCTVの”315晩会”で報道された、東風日産の一部のディーラーにおける過剰診断についての問題は、経営への信頼を揺るがしかねない情報であったため、東風日産はこの問題を重要視しており、緊急調査チームを組織した。この問題について、カーオーナー各位、メディア、社会の各方面に伝えたいことは、東風日産は「顧客第一主義」の原則を貫いており、法律に則り、誠心誠意経営を行っていると同時に、末端のサービスについての管理監督を強化することにより、二度と同じような問題が発生しないようにする。調査の結果については、社会の各方面、そしてカーオーナーの皆様に進捗があり次第伝えていく。

上海VW(報道の直後にいち早く発表された):

CCTVの”315晩会”が暴露した天津地区の3つのディーラーについての修理問題について上海VWは非常に重要視している。今後この問題についての調査を実施する。オーナーの権益の保護、顧客満足度の工場は我々が最も追求してきた任務であり、今後カーディーラーの修理サービスに対する管理監督をより一掃強化していく。天津のディーラー3店舗が消費者の皆様に与えたことについては深くお詫びする。

メルセデス・ベンツ

我々はCCTVの”315晩会”でメルセデス・ベンツディーラーが過剰修理を行っているとの報道を見た。ディーラーは消費者の権益を侵害すること、ブランドに対して責任を取らないということは決して行ってはならない。メルセデス・ベンツは顧客満足度を最重要と考えてきた。速やかに調査体制を整えて実施する。この他に、我々は、アフターサービスにおけるマネジメントをより一層強化し、このような事件が二度と発生しないように努める。公共メディアにおいてこのような問題提起をしたCCTVに感謝を表明したい。


編集後記

日本で言えば、NHKが、トヨタや日産のディーラーに覆面調査に入り、いきなり実名でその内容に問題があると告発をするようなものですから、相当にインパクトがあります。この報道の余波はかなり大きく、かつ関係する粗悪品や粗悪品製造工場などのリストが出回ることにより、自分のwechatの中でも今まで取り扱っていた商品が安全であることや、自らのサービスに問題が無いことを一生懸命に説明する内容が一時的に多く流れてきました。やり玉に挙げられた方はたまったものじゃありません。中国で100%完璧なサービスを大陸全土で一気に実施することは物理的に不可能で、どんなに優良なブランドでも探せばアラが出ます。それを突かれた方としては寝耳に水であり、政治的な意図が後ろにあると考えても不思議ではありません。

CCTVの番組から

CCTVの番組から「交換しなければ、今日は走ることはできません、走りたいのなら・・・」

恐ろしいのは、日産、フォルクスワーゲン、メルセデス・ベンツ、ローバーなどの外資だけでなく、チャイナモバイルやチャイナユニコムが架空の電話番号で売上を形状していたことや、中国農業銀行、中国工商銀行、中国銀行などの国有スーパーメガバンクも情報漏洩を起こしていたことなどが列挙されていることです。昨今の中央系国有企業のトップに対する一連の取り調べから、これら消費者目線を借りた大手企業に対する告発の動きなど、全人代開催期間中の思惑を感じざるを得ません。

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