中国の若い女性たちがそれでも日本に技能実習生として来る理由

北京青年報の記事です(一部要約しています)。

女工

中国ではネット上で発表された”纺织女工在日打工三年赚一套房(日本へ行ったアパレル工場の女工が3年の仕事で家を買った)”という名前の記事で、日本へ出稼ぎへ行く人々が再び話題を集めています。しかし、実際にそれほどまでにお金を稼ぐことができるのでしょうか?北京青年報の理解では、日本円の価値が下がり中国国内の賃金が上がる中で、日本への出稼ぎの魅力は下降しており、仲介会社が集めることができる候補者のレベルも下がっています。日本へ実習生を派遣している企業のあるスタッフ曰く、現在日本への実習生についてのトレーニングでは、それが中国国内であったとしても日本社会文化方面に関するものが強調されているとのことです。

3年の仕事で20万元(400万円)を持ち帰る

北京青年報の理解では、日本は中国の出稼ぎを受け入れる主要な国家の一つです。中国全国で、特に東部地区で日本への実習生仲介企業が比較的多く見られます。北京にも多くの”老舗”仲介企業があります。

ある仲介会社の話をしましょう。この会社は1987年に日本への技能実習生の派遣を開始、20年あまりの時間で合計5,000人を派遣し、その内60%が女性だったそうです。いわゆる技能実習生は日本ではローエンドの仕事に携わることが多く、機械加工、水産加工、電子部品組立、縫製、溶接、石材加工、プラスチック成形、食品加工業などに従事することが一般的です。

2014年、この会社が日本へ派遣した技能実習生は300人あまり。彼らの話では、3年で家を買うことができるという話題について、日本ん為替が下がり国内の物価が上がる中で、この目標を実現することは極めて困難であると言います。現在、彼・彼女たちの日本での月収は12万円以上は保証されており、平均的には16〜18万円程度は稼ぐことができます。当然、残業の状況や仕事の内容に左右されるため一概に言うことはできませんが、「一般的に言えば、3年で持ち帰ることができる金額は400万円程度でしょう」、とのこと。

日本へで稼ぎへ行く”技能実習生”、日本の国際研究協力機構の統計によると、技能実習生に占める中国人の割合は最多ですが数は大幅に減っていると言います。2011年には38万人以上いた中国人技能実習生ですが、2014年には26万人前後です。また、東南アジアからの実習生が大幅に増加しています。「以前は95%以上は中国人の実習生でしたが、今は70%程度になっています」。

日本へ出稼ぎに行くモチベーションの定価は、日本円の価値が下がっていることと、中国国内での労働賃金が上昇していることと関係があります。日本への実習生仲介企業の張さん曰く、日本での仕事の時間が長くなると家族との関係や、個人の心理に多大なプレッシャーがかかります。中国の労働賃金と比較して2.5〜3倍程度の差があれば納得はできるでしょうが、中国国内の仕事でも5,000元(10万円)以上を稼ぐことはできるでしょうし、もっと稼ぐことも可能です。日本の労働賃金は上昇することはなく、日本円の価値がこれ程まで下がっている中で、魅力が下がっていることは間違いありません。

張さんの話では、日本への出稼ぎ希望者が減っていることで、その質も下がっているそうです。「日本に来てから多くの事件が起こっています。途中で逃げ出したり、悪質な詐欺を行ったり」と言う張さんは、これまで以上に訪日前の教育・訓練が重要であると考えています。「多くの人は海外に行けば社長の支持の下色々と教えて貰えると考えていますが、日本でそのような考え方は受け入れられません。ですから、中国国内で日本社会文化の教育・訓練を行うことに力を入れています」。

4種類もあるお辞儀の仕方

張さんの会社と江蘇省如皋市にある学校は提携関係にあります。この学校には現在50名近い日本への出稼ぎ候補者が”集合訓練”を行っており、その大部分が女性です。3月初めに入学し、3ヶ月間日本語と日本文化を勉強した後に、日本各地に直接赴任し、海外での生活を始めます。彼女たちの大部分はリネン系、アパレル系の工場で働き、一部は電子部品組立工場で働きます。

この学校での生活は中国社会文化から完全に隔離されており、全て日本の社会習慣の中で生活することになります。学生たちは通学後、靴を上履きに履き替えます。寮、教室、食堂には燃えるゴミと燃えないごみを分別して収集するためのゴミ箱があります。学生たちはお互いに顔を合わせれば、お辞儀をして「こんにちは」と大きな声で挨拶を交わします。

今年41歳になる張さんも学生の一人です。20年以上、学習生活から離れていた彼女は再び学生としての生活を始め、毎日日本語、日本の社会文化、特に礼儀に関する部分を学んでいます。クラスの最初の授業内容は”お辞儀の仕方”でした。

  • すれ違った時は15〜25度
  • 通常は30度
  • 誤るときには45度
  • 非常に厳重な問題を起こした際には90度

「両腕両手を前に出し、右手を上にして重ね、頭を下に・・・、全クラスメイトが一斉にお辞儀をします。先生がそれを正し、上手くできていない場合にはやり直しをさせられます」。この授業の後からお辞儀は日常行うことが求められ、知り合いであろうがなかろうが人に会った際にはお辞儀をし、大きな声で「こんにちは」を言います。

張さんのクラス担任である李先生もかつては日本にで稼ぎに行った女工でした。「日本人は態度をとても重視します。誰に会うかに関わらず学生たちには挨拶をさせるようにしています。彼女たちに日本の習慣に慣れてもらいたいのです。全ては彼女たちのためです」、李先生の話では、日本では技能がそれほどでなかったとしても、態度や礼儀がしっかりしていれば社長に好かれることになり、優しく接してくれるそうです。彼女たちは中国の実習生の代表であるからこそしっかりと教育をするという考え方です。

「習慣づけることで自然になります」、ここでは先生も学生も同じことを言います。1ヶ月が経ち、彼女は自然に他の人に対してお辞儀(会釈)をするようになっていました。「1日でだいたい20〜30回くらいはやりますね」

しかし、彼女も学び始めた頃はこの新しい人との関係のモデルに慣れることは非常に難しかったと言います。中国では相手に会釈をするという習慣がありません。外で見知らぬ人に対して会釈をすれば、その人は頭がおかしい人だと思われるのです。しかし、最初のクラスの後に、先生から今後必ず他の生徒と会った時には会釈、挨拶をすることを決められます。「少し恥ずくて、声が出てきませんでした。他の生徒も皆そのような感じでした。しかし、先生が繰り返し繰り返し強調する内に習慣化され、自然にできるようになりました。国を出る訳ですから、当然その国の礼儀を覚える必要がありますよね。その国の人々と私たちは違うのですから」

ノート一面に書かれた単語

張さん曰く、礼儀を習慣化することについてはある程度の胆力が必要ですが、勉強についてはそれほど困難ではないとのことです。実際、彼女は中卒程度の教育レベルであり外国語の勉強をしたこともありません。しかし、毎日早起きして教科書を予習し、授業に出て、その後復讐を行った結果、テストでは常に95点以上をとっているそうです。「始めた頃は自分に本当にできるのか不安に思いましたが、勉強ができなければ食べていくことはできないのです」

張さんの成績は、彼女よりも10歳程度若い泰さんには羨ましく見えています。泰さんも、その他の18, 19歳のクラスメイトからしてみれば言わば「おばさん」です。「記憶力もあまり良くなくて、勉強はそれほど上手く行っていません。復習した次の日は起きることができなくて、単語を覚えるにも非常に時間がかかっています」クラスには20名以上が在籍していますがその内の大多数がテストで90点以上を取る中で彼女はもう少しで合格ラインというレベルです。「もっとしっかり勉強します・・・」一般的に18時以降は多くの若い学生たちはリラックスする時間です。しかし泰あんは21時まで教室に残り勉強を続け、寮に戻っても教科書を読みます。若いクラスメイトたちからは「年齢がいっていて、努力するタイプ」という分類をされているそうです。

前述した日本への実習生仲介会社の張さんが学校を参観する際には、生徒がノート一面に単語を書き連ねているのを良く目にするそうです。それでも覚えられないのを見ていると落ち着かない気持ちになるそうです。皆、今まで勉強をあまりしてこなかったということと、良い学習方法がないということもあるそうです。「それでも単語を覚えることで彼女たちは結構喋ることができるんです」

貧困を知って、日本への出稼ぎを知る

日本へ出稼ぎに行く実習生候補の生徒たち、先ほどの張さんと泰さんなど中卒の学歴を持つ生徒以外には大学生もいます。25歳の张雯佳さんは江蘇省の師範大学系の学校を卒業した後にコンピューター関連の日系企業で働いていましたが、結婚・妊娠後に対峙に先天的な心臓系の疾患があることが分かりました。彼女は子供の病気と当時の仕事とが関係していると考え、会社を辞めました。その後再び妊娠した時には健康な子供が生まれました。それを見た義母は、子供の面倒を見るから彼女に対して日本へ出稼ぎに行くことを勧めたのです。彼女は元々農村の生まれで、留学したくてもそれは不可能です。そこで、義母の言うように実習生として3年間日本で出稼ぎをしようと考えました。「若いということは貴重なことです。お金を稼いで、見識を広げることができるだけでなく、日本語も覚えることができれば、帰国後に競争力がつきますから」。

貧困な家庭で育った女性にとって、短時間にお金を稼いで海外旅行をすることは現実的ではありません。実習生仲介会社の張さんは、多くの中国人が「なぜ、日本にわざわざ苦労しに行くのか」ということを理解できません。しかし、一度彼らを彼女たちの家に連れて行き、その貧困の状態を見せればすぐにその理由を理解します。

张雯佳のクラスメイトの芳さんは、”出稼ぎをして、空いている時間はゴルフをしたり、お酒を呑んで遊んだり、観光をしたり、その上で20万元(400万円)が貯まると人から聞きました」と言います。しかし、彼女は自分で計算をして、現在の為替レートから考えれば、そんな贅沢はできないということも分かりました。旦那さんの稼ぎと合わせての1ヶ月での収入は1万元(20万円)程度にしかならないということも分かりました。「30歳になる前に、外に出て、見識を広め、色々なことを学び、そして帰国して家を購入する頭金を作りたい、そして最終的には小さな商売をやりたいんです」

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